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沖縄・台湾侵攻2025 Hard Mode --Continue  作者: しののめ八雲
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方針転換

(あーあ。何が悪かったんだろ?私そんなに悪いことしたかなあ?)

那覇から羽田に向かう飛行機の中で、19歳の八木花は思った。

先日、彼女はあっけなく大学生活を、中退という形で終えたばかりだ。


もっとも彼女は学業そっちのけで、サークル活動と、NPOでの活動を掛け持ちして、のめり込みつつあったのだが。


彼女がそれほど熱心に取り組んでいた、サークルとは「SON」、正式にはセーブ・オキナワ・ネイチャーという。

その活動目的は、沖縄の自然保護活動とされていた。表向きは。


実態は「SON」は中国人民解放軍の事実上下部組織だったのだ。


彼女はその事実に気付くことは無かった。サークル活動は当たり触りの無い清掃活動から、段階的に反政府活動と親中派としての活動に、シフトしていくのが中国側の計画だった。

その中にあって、高校で挫折を経験していた花は、誰かに認められることに飢えていたから、サークルの中心メンバーや、関係のあるNPOの人間、それに彼等に肯定的なSNSアカウント群におだて上げられ、良い気になってのめりこみつつあったのだ。

あと半年も活動を継続していたなら、危険な行動を躊躇しないまでに「洗脳」されていただろう。

花の場合、おだてられるままに、久米和子という女が主催するNPOの活動も掛け持ちしていたから、なおさらだ。

ちなみに久米が運営するNPOは、SONでも先鋭的だったOBの「就職先」であり、もちろんのこと実態は親中・反政府組織で、環境保護活動はカバーでしかない。


花はそうとも知らずに、前期の試験をいい加減に済まし、夏休みに予定されている「合宿」を楽しみにしていた。

「合宿」の実態もまた、環境保護活動を名目に、先島諸島や沖縄本島、奄美の自衛隊や米軍施設の地形に学生達を慣熟させ、一種の野営訓練をさせるのが目的だったのだが。


その状況が変化したのは夏休み前に、東京からとある人物が花達の大学に編入してきた時だ。


機内の花はその時のことを振り返る。


前期試験が終わりつつある日、花たちはサークル代表の澤崎拓哉に召集されて、臨時ミーティングに参加した。

「皆お疲れ様!試験はどう?サークルの活動に入れ込みすぎて、勉強がいい加減にならないでね!」

それを聞いた花はギクリとする。だが途端に、

「留年しまくってる先輩がそれ言います?」と突っ込みが入り、サークルメンバー達は爆笑した。


場の空気を確認した澤崎は本題に入る。

「今日、皆に集まってもらったのは、新メンバーを紹介するためなんだ。・・・久米さん、皆に自己紹介してくれる?」


「久米未来です。東京の大学に在学していましたが、急遽編入してきました。友人達もついて来てくれました。」

そう名乗った若い女は、一目で久米和子の娘と分かる外見をしていた。母親に似て、運動嫌いだのだろう。不健康そうで老けて見える。度のきつそうな眼鏡のせいもあって、母親の和子の娘ではなくて、妹と言われても納得しそうだった。

むやみやたらと痩せたがる女子の中では、体形もなかなかに立派だ。

その割に、妙に人を巻き込む力があるらしい。本人だけでなく、数人の友人が同時に編入しているのだ。


「私が大学を変えたのは、母の活動と連携することで、沖縄の自然保護活動に貢献し易い環境だと思ったからです。それに・・。」

後を澤崎が受ける

「ここからが本題。皆、「合宿」に向けて準備をしていると思うけど、予定が大きく変更になるかもしれないんだ。」

場が少しざわつく。

「というのも、もうすぐ国政選挙が始まるよね?僕らは普段お世話になっているNPOさんや、一般社団法人さん達の選挙活動に協力しようと思う。政治を変えることが出来れば、沖縄の自然を守るための流れを、大きく変えることが出来るはずなんだ。だけど、僕らにはそのテのノウハウが無い。そこで、久米さんに相談したら、娘さんが詳しいということで、わざわざ彼女達を編入させることになったというわけさ。彼女にはさっそく僕の右腕として、選挙活動を仕切ってもらおうと思う。皆異論は無い?合宿を楽しみにしてたとは思うけど、大事なことだから、ここは我慢して欲しいんだ。」

ちなみにNPOが政治活動を行うことは法律違反だが、沖縄県は告発も是正もせずに放置している。


澤崎の説明が終わり解散になると、花は仲の良い、中村加奈子と連れ立って、久米の娘に挨拶をしに行った。彼女は明るい笑顔で答える。

「あ、八木花さんですね!母から聞いてます!中々の行動力だって!元気キャラなんですね!」

「いえいえ、久米さんこそ、すごいお母さんをお持ちですし、東京から大学を変えるなんて、しかも前期試験の真っ最中に。そっちの方がすごいですよ。」

「うちの母は、大学関係者にもコネがあるの。数人くらいなら、正式な手続きを省略して編入させるなんて、簡単なのよ」

彼女はさらっと、とんでも無い話をした。


中村はふわふわとした話し方で、二人の会話に入る。

「花ちゃんは行動力がありすぎて、すぐ暴走しちゃうのー。危ないんだから、目が離せないんだよー。」

「じゃあ、中村さんが八木さんのブレーキ役?いい関係なんですね!」

そういうと3人は笑いあった。


第一印象こそアレだったものの、久米とは仲良くやれそうだと花は思った。この時は。


その後、また花は久米と二人で会話する機会があった。

中村は男子数人と喋っている。


久米はボソっと呟いた。

「中村さん。男子に人気なんですね・・。」

「ああ、彼女。美人ってわけじゃないけど。ゆるふわでしょ。いつもニコニコしてるし、誰にも優しいし。男子連中に言わせれば、庇護欲をかきたてられるんだって。」

その時の花は、久米の暗い目つきに気付いていなかったのだ。


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