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沖縄・台湾侵攻2025 Hard Mode --Continue  作者: しののめ八雲
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プロローグ

※ご注意

本作品は、前作「沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode」の世界観や設定を継承した、「平行世界」を描いた作品になります。

単体でもお楽しみいただけますが、一部説明不足な部分が出てくることがあります。



「なんてこった、ヤバイヤバイ、マジでヤバイ。こんなの無理ゲー!死体蹴りだ!勘弁してくれよ!」

サービス付き高齢者向け住宅に勤務する、介護職員の勝部は職場のTVを見て、そう口走っていた。TVの中で、日本列島の半分の沿岸が、真っ赤に染まっている。


(あんなこと言わなきゃ良かった。)

論理的な方の彼にしては珍しく、理屈に合わないことを思っている。別に、彼が数か月前に「あんなこと」を言ったからといって、今起きている現象の原因になるわけがないというのに。



その半年前、2025年1月10日 13:33 東京



勝部は上司の八木真紀子と昼休憩が一緒だった。最近は元気の無かった彼女だったが、今日は随分と活気がある。

何でも、怪しげなサークル活動に入れ込んでいた、娘の花が急に大学を辞めて、沖縄から東京の実家に帰ってきたらしいのだ。


「それは、良かった・・・んでしょうか?」

「そりゃあ、まあ大学の費用が無駄になったのは痛いけど。あのまま一人で好きにさせるのは心配だったらねー。勝部君もいろいろ調べてくれてありがとうね。」

「八木さんがそうお考えなら。それにしても、娘さん急にどうしたんです?」

「うーん、あの子のことだから、言ってることが、どこまで本当かは分からないけどね。」

そう前置きした真紀子が語ったところによると、花のサークルSONに、夏休み前になってから、東京の大学から転入してきた新規メンバーが、大量に加入してきたらしい。


その中心はSONと関係のあった、NPO組織の代表の久米とかいう女の娘らしかった。彼女は立場を利用して、新規メンバーであるにもかかわらず、サークル内で好き勝手したらしい。

サークルの代表も、NPO側に遠慮して野放しにしたということだ。


そうこうしている内に、久米の娘は男子メンバーに人気のあった、女子メンバーが「気に入らなくなり」嫌がらせを始め、追い出しにかかったのだ。

うち一人は中村という花の友人で、彼女をかばった花も標的にされた。

花は思い切って、久米本人に現状を訴えたが、久米はそれまで花に優しかった態度を豹変させると、逆に澤崎に働きかけて、花と中村をSONから追い出してしまったのだ。

信じて慕っていた者達に裏切られた格好で、花としては相当にショックだったらしい。


そして花は中村共々、大学を辞めて実家に帰ってきたのだった。

その話を聞いた真紀子は、

「アンタがイジメに抵抗ねえ。やるじゃないの。」

と、珍しく娘を褒めた。それに対して花は不機嫌そうに

「馬鹿にしないでよお母さん。私はSNSや学校で、トラブルを起こすようなヤツかもしれないけど、虐めをしたり、肩入れするようなことは、したことが無いんだからね!」

と言ったらしい。


顛末を聞いた勝部は

「それは・・。昔で言う「内ゲバ」ってヤツですか?まあ、娘さんには、いい薬になったんじゃないですか?」

「本当にそうよねえ、これで少しは反省してくれるといいんだけど。」

「娘さんは今?」

「しばらくはそっとしとくわ。落ち着いたら、バイトでもさせた方がいいかも。大学に行くより先に、社会勉強させた方がいいかもしれないわ。」

「それがいいかもしれませんね。別に今時、大学に無理に行くこともないと思いますし、大学なんて一杯あるから少し勉強すれば、いつでも入り直せますよ。」

「コラっ!いい大学出てるアナタがそれ言う?嫌味に聞こえちゃうわよ!」

「すみません。すみません。でも良かったですね。あ、いっそ介護のバイトさせてみたらどうです?お母さんをリスペクトしてくれるかも?」

「あ、それはいいかもね。でもあの子やりたがるかなあ?初任者研修だって、受けさせないといけないし。でも、早めに手に職つけておくのも、悪くないわねえ。介護職出来たら、とりあえず食いっぱぐれることは無いわけだしね!」

そう言うと真紀子は明るく笑った。


真紀子の笑顔を見て、勝部は安心した。(本当はこういう笑い方をする人だったんだな・・。)ふとTVを見るとワイドショーを流していた。最近は「政権交代」で話題が持ち切りだ。

長く政権を保ってきていた前与党は、相次ぐスキャンダルと国民の実質所得の伸び悩みどころか、低下いう逆風にさらされていた。そんな時に、首相が病に倒れ、それをきっかけに、解散総選挙が行われたのだ。

選挙の結果、野党連合が勝利し、新たに連立政権が成立したのだった。


ワイドショーの識者達は、選挙の結果を気持ち悪いくらいに賞賛し「これで、今度こそ失われた30年は解決され、連立与党の政策により国民の所得は向上する」と、太鼓判を押していた。

(そんな訳ないだろ・・・。)

心の中で勝部は毒づく。連立与党の経済政策とやらは「思い付き」の域を出ていないし、外交・安全保障政策については、一体何を考えているのか分からない。おまけに、大多数の人間が望んでもいない、怪しげな公約を山のようにこっそり抱えていた。

それでも今回の選挙では、多数の人間がTVや、ネットの浅い情報を鵜呑みにし、最大の公約である、「この30年の間、本来実現しているはずだった実質所得の線に、3年で一挙に到達させる」に期待をかけたのだ。


望み通りに、連立政権を誕生させた、有権者達はまったく気づいていなかった。

自分自身の首を絞め、最悪の場合、自身と親しい人間の処刑執行命令に、サインをしてしまったということを。そして彼等の投票行動、その判断材料となった情報の出所に。


真紀子はTVの識者に懐疑的だった。

「そんなに簡単にいくなら、総理も病気になったりしないわよねえ。前の政権交代の時も、なんだかんだで上手くいかなかったじゃないの。」

そして、勝部はその言葉を口にしたのだ。


「そういえば、日本って、不思議と政権交代が起きると大地震が起きますよね?2度あることは3度ある。今回も南海トラフが起きたりして?」

「うーん。ごめん。勝部君。その冗談笑えない・・・。」


それから、半年。


わずか半年。


日米関係は最悪になりつつある。連立与党は、米国と前政権が契約した兵器購入を、キャンセルすると言い出した。さらに前政権が行ってきた、防衛政策を根本的に見直すと宣言したのだ。

アメリカから見れば、アジア・太平洋地域における集団的安全保障への、責任放棄に等しい。

日本だけでなく、アメリカでも韓国でも相次いで政権交代が起きていたから、情勢は余計にややこしかった。


その混乱をつくように、中国は台湾周辺での活動を急速に活発化させている。ドサクサに紛れて戦争になるのでは?と言われる程だ。


新政権の最大公約である、「実質所得の向上」は連立内閣らしく、内部の意見対立で未だに具体策を殆ど出せていない。

唯一の成果は、福島の処理水放出を中止して、中国から「ご褒美」としての、海産物の大量買い付けを実現したことくらいだ。



一方で、新政権にありがちな、「求められている」ことより、「やりたいこと」を優先する傾向が著しい。

公約の隅にひっそりと書かれていた、怪しげな組織や法を次々成立させようとしているし(安全保障政策の反転が最たるものだ)、不足する予算は、防衛費の削減で賄うと主張していた。

おかげで防衛省の人間が次々と辞任する騒ぎになっている。


参院はまだ野党に転落した前与党が多数だったから、新政権の法案や予算案に猛反発しているが、結局は衆議院で再可決されてしまう。

欧米の海外メディアからは、酷評されている連立政権の田中学総理だったが、国内のマスコミからは英雄のように持てはやされていた。


今も、演習名目で中国軍が台湾どころか、沖縄周辺に展開しているが、連立政権は米軍への協力を事実上拒否しており、一方で沖縄県知事の要望を次々と丸飲みしていた。

ネット界隈では「これで戦争になったら、マジでやばいんじゃないか?」と話題になっている。


だが、現実はもっと酷かった。


2025年8月10日、午前10時25分。東海地方を中心に、本当に南海トラフの超巨大地震が発生したのだ。


その時も施設にいた勝部は、関東でも強かった地震に襲われた。

揺れが収まると真紀子の指示の下、入居者の安否を確認してから食堂に駆け込んでTVを付ける。

マグニチュード9.1という信じがたい数値が目に飛び込む。

だが、それ以上に勝部の目を奪ったのは、大津波警報で真っ赤に染まった太平洋沿岸だった。


(これじゃ、東海や関西、四国沿岸はひどいことになるんじゃないか?)


そして気付く、

(国際情勢がこんな時に、自衛隊が大規模に災害出動してしまったらマズイんじゃ?中国が何か企んでるのが本当だったら?日米関係は今、最悪なのに。。。おまけに現政権は史上最悪レベルの無能と来ている。)

そこまで思い至って、勝部は思わず口に出したのだ。


「なんてこった、ヤバイヤバイ、マジでヤバイ。こんなの無理ゲー!死体蹴りだ!勘弁してくれよ!」

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