表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死霊の黒騎士と黒猫のルル  作者: 鮭雑炊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/151

49

前話、間違いの修正ついでに、ちょこっとだけ文章改変。

六対の羽じゃ12枚になっちゃう。



 馬を走らせる。

 まばらに生える木々の間を縫うようにして進んでいく馬の足取りは軽い。

 春の訪れを祝い、花が咲くような季節が来ているのに、天上にある太陽の奴はどうにも陰鬱で、地上には愛想程度の日差ししか振りまかないでいる。

 ジェルマンが故郷の作付けをしきりに心配していたが、土地にも農業にも無知な俺ですら、今年は良いものにはならないのだろうと思う。

 今年はそれどころではない騒ぎが起きてしまっている。

 聖女ジャンヌ・ダルクの処刑と、それに応じたかのようにして出現した不吉な骨の騎士と喋る黒猫……俺たちの登場によって、人々は終末の世界に生きる事を余儀なくされた。

 世界は地獄に落ちたのだと嘆く者、逃げる者、神の罰を恐れて自滅した町、あちらこちらで生まれる自称聖女たちと争乱、悪魔の王の出現を語る者、自分たちに救いをもたらす都合の良い聖女を勝手に求め、神秘の戦いを目撃し、それが叶えられたなどと勘違いをして騙されてしまった愚かな民衆たち……

 ……最後のやつの直接の原因も、俺と黒猫の仕業だが、というか、ほとんどすべて黒猫……おのれ黒猫、諸悪の根源め。

 俺には、世界そのものが狂い、全てを巻き込んで滅びに向かっていくような大騒乱が始まったのだと思ってしまうが、黒猫の奴によれば、これでも狭い世界での話でしかないらしい。

 奴にとっての世界とはどれほど広いのか……

 前方を見据える。

 目的地は北。

 カレーの港町の南に集結しているというイングランドの軍。

 おそらくはそこにイングランド軍を総括するベッドフォード公がいる。イングランドの兵士ゴウベルが向かった先でもある。

 俺は今、勝手に死にに行った奴の顔を見て、わざわざ嗤ってやるやるために、奴の足取りを追っている。





 午前の会議で為された話を思い出す。

 集合するイングランドの兵の目的はルーアンの町の再占領と聖女の捕縛および処刑。ジャンヌを異端審問にかけ、魔女として処刑したイングランドの奴らが正当性を叫ぶには、どうしたってジャンヌの後継者の聖女と呼ばれる者が存在するのは邪魔でしかないからだ。これは、ほぼ確実な予想であり当然の流れ。この戦力にまともに対抗する手段は今のルーアンの町には無い。近隣の町や村から援助を乞いつつ、町の防壁を使い籠城して時間を稼ぐ。聖女本人と家族をシャルル王の居るランスの町に逃しつつ、対抗するための戦力と物資を各地から集めて編成し、再びルーアンの地に戻ってきてイングランドの軍を打ち破る、というのが、アンドレやトムスらが示した作戦だ。ランスに着いた聖女の動向は王と会ってから決めるのだという。

 作戦の大筋は決まっていたらしく、そのための準備も進んでいた。

 異論は無いし、問題もない。シャルル王に用事のあった俺は、リュミエラたちに勝手に付いて行くだけだ。

 連中は、いちいち、こちらの顔色を伺いながら話を進めていたが、俺に何かをやれとも言われなかったし、何かを聞かれたりもしなかった。ありがたい話だ。こちらから指図をすることも無いので俺は終始無言。

 黒い兜に覆われて表情の読めない俺は、奴らにはどう見えたのか。

 兜などなくとも、元々、骨の顔に表情など無いが、骨の顔に表情とは何なんだ、アリセン少年。骨から感情を読み取るなんぞ、それが出来るのなら相当なものだが。


 全員で食事を摂ることになって兜を脱ぐと、周囲からはため息が漏れた。

 アリセンからは「そっちの方が見慣れているから、なんだかホッとするなあ」なんて言葉をかけられたが、本当に何なんだ一体、見慣れるほど一緒に居たわけでも無し、そもそも髑髏の顔の方が恐ろしかろうに……人の考えはわからんものだ。

 肉の挟まったパンを出されたが、それは美味くないと感じた。ジェルマン自慢の出来の良いワインとやらも出されたが、それも美味いとは感じなかった。飲みたいとは思っていたし、ようやくありつけたワインだが、普通だ。賞賛の言葉を期待していたジェルマンの満面の笑みを見たので素直な感想を口にはしなかったが。代わりにお世辞を言うはめになった。おのれ、俺に気を遣わせおって。

 ついでに出された生ぬるい水は、ひょっとして聖水か? トムスが真剣な表情で見ていたし、可能性は高い。これには正直に「生ぬるくて不味い」と言ってやったが。

 ……どうしたことだろう、どれもこれも味気ないと感じた。

 もともと食事に大した情熱は持っていない俺だが、人並みに美味いものは美味いと感じていたはずだ。俺が物を食べる姿を、何かの珍獣の見世物を見るようにしていた周囲の視線が気になったからか? そんな神経も持ち合わせていない。

 ……美味すぎたのだ、黒猫によって供された食べ物が。

 しっかりと味付けの為された肉が、フワフワの白パンが、シュワシュワする酒が、それに、奴が作った人参のポタージュスープも、どれもこれも美味かったからだ。

 それと比べてしまっている。以前の俺なら、普通に喰って普通に美味いと感じていた普通のものが、味気ないと感じてしまうほどに……


 出発の準備に各人が追われる中、準備も何もない俺だけ取り残される。薄暗い部屋に戻って考え事をしていた所にユーザス少年が訪ねてくる。そこでの会話……


「……どうした?」

「ルルさんのことで……」

「何かあったか?」

「その……彼女の声が……黒猫だったルルさんの声が、あの魔女の人の声に似ていた気がして……」

「…………」


 声、か。

 似ているも何も、それは本人だからな。声で正体が知られてしまうなど、ふん、黒猫の奴め、不甲斐無いやつだ。

 そうか、そこに気がついたか。


「ね、猫のルルさんの声は、弾むような、いたずら好きな女の子のような声であって、その、魔女の方は、もっと暗くて落ち着いた感じだったんですけど……ええと……」

「……少年」

「はい……」

「そのことを誰かに言ったか?」

「ひ……」


 金髪の愛らしい少年。ユーザス少年は聡い子だ。普段から落ち着いた子だが、いつも慎重に物事を見て、よく考えて判断しようとしている。見習え、アリセン。

 どうやら今回はその聡明な頭で、魔女が黒猫であることに気がついてしまったらしい。……気がついて、しまったか。

 今は俺の事を恐れている。白い頬を紅潮させて、ただ部屋に佇むだけの俺を前にして動きを止めている。

 何もしない。俺は何もしない。恐れる必要は無い。

 兜越しに普通に見ているだけで、睨んでもいないし、威圧などもかけていないのだがな。だがいくらか不機嫌でもある。それを勘違いして怒っているとでも思っているのだろうか。違う。俺の今の俺を支配する感情は。


 ――この身が不甲斐ない。


 あの場の全てを理解するのは誰であっても不可能だろう。もし理解できるのなら、それは全知の神だけだ。

 だが、しかし、こんな年若い子供でも、隠された事実の何かには気がつくのだ。

 ただただ混乱したあの場で、謎しかない、何が何かもわからない状況に置かれても、見る者によっては一応の真実の切れ端には辿り着けるのだ。

 黒猫という謎の存在があまりに巨大な謎だとしても、大人である俺が何を右往左往して迷ってしまっているのか、いや、いたのか。これが過去形であることが、何より悔しい。不甲斐ない、ああ不甲斐ない。


「誰かに言っても構わないが、まぁ言わない方が良いこともあるだろう……ユーザスよ、どうやらこの世には知らない方が良いこともあるらしいぞ?」

「じゃあ……」

「じゃあも、何もない、俺からは何も言わない、答えは言わない。正解も不正解もない。自分の信じたものを信じるがいい、少年、お前の好きにしろ」

「…………はい」


 はっきりと否定をしないことは肯定と同意だろうか?

 その幼くとも賢い頭で何を思い、考えたのか、幼い少年の創り上げる自分だけの世界に何が生まれたのか。まだ何かを言いたげであった少年を追い払うようにして部屋から追い出す。

 俺の性能の良い耳が廊下での少年らの小声での内緒話を捕らえる。


『お、おい、なんだよユーザス、しばらくしても部屋から出て来なかったら、とにかくお嬢様を連れて逃げろって』『ああ、うん』『結局、骨の人と何の話してたんだよ?』『まぁ、それは』『お前の言い方じゃ骨の人が悪い奴みたいじゃねーか』『ごめんごめん、なんか誤解させちゃったかも、あの人は、人じゃないけど、まぁ味方、だし……』『おかしーの、とにかく説明しろよな』『そうだね、まぁ、それは、おいおい?』『なんだよ、おいおいって……』


 少年は少年なりに考えて、俺の事は敵ではないと判断したか。

 骨、喋る猫、魔女、悪魔、それに怪しげな行動の数々……俺たちを弾劾すべき材料には、こと欠かないはずなのにな。

 敵か味方か、良い奴か悪い奴か、単純な子供だけに許される特権だなどとは笑えない。立場や常識、物事に囚われない柔軟な考えだと言えるだろう。その素直さが単純に羨ましい。


 化粧を落とし、装飾品も全て外したリュミエラが屋敷の外に出る。

 民衆が出迎え、祈る。

 祈りは波のように折り重なって、広がっていく。

 汚れの無い白いドレスを纏い、民衆の前に立つ少女の顔には、いくらかの威厳らしきものが備わっていた。何やら姿勢まで良くなっているのではないか?

 背筋を伸ばして前を向く少女の、おそらく彼女だけの世界にあるであろう”聖女らしさ”というものが、彼女を見る皆のそれぞれの世界の中だけにある”聖女らしさ”と共通し、共有され、繋がり、広がっていく様子を見た。

 それぞれが持つ虚構の世界の、重なりあう認識。

 どうも、その”らしさ”があるだけで、聖女というのは生まれてしまうらしいな。

 いい加減なものだと呆れはするが、笑いはしない。皆が思えば、それが生まれる。神や悪魔とて、そうなのだろう。


「聖女様ー、猫さん、猫さんはー?」

「こっ、こらっ!」


 女の幼児が一人、リュミエラに近づき話しかける。母親らしき人物が慌ててそれを止める。


「すみません、すみません、お許しください、今すぐ離れて叱って……」

「いいのです。いいのですよ。許します。猫というのは黒猫様の事でしょうか?」


 リュミエラの立ち居振る舞いには余裕が伺える。近づいた市民を警戒して追い払おうとする護衛を手で制し幼児らと会話を続ける。彼女の中の聖女らしさというものに従い行動しているのだろうか。

 まるで自分が立派な聖女であるかのように、演技している。


「黒猫さんなのー、金色お目目の猫さん」

「ああ、あの、お気になさらずに、そ、その、この子の言っているのは、別の猫だと、猫様だと思います、その喋る黒猫様とは……」

「ちがうよー、よく知ってるもん、よく知ってる黒猫さんが喋っていたんだもん」

「詳しい話を聞かせてくださいな、まし、ませ……」

「ああ聖女様、違うのです、そんなわけは無いのです。この子が知っている猫は、近くに棲んでいた野良猫であって、その猫は兵士に斬られて捨てられたらしいのです、私どもは見ていませんが……そ、そちらの天使様が連れられていた立派な黒猫様とは別の……」


 しどろもどろに説明する母親が、怯えた瞳で俺を見る。


「……そうか」


 黒猫が、ルルが言っていた事、そのままだ。

 ただ道を横切って歩いたただけで殺された猫の体を依り代にした、猫の負の感情を、この世界への干渉を始めるための足掛かりにした、だったか。

 理屈も何も詳しいことはわからないままだが、話としては矛盾も無い。ただ俺が素直に受け取ればいいだけの話だったのだ。殺された復讐のため世界への報復云々などと思ったのは俺だ。ひねくれた考えしかできない俺だけだ。


「黒騎士様、その、黒猫様は、ルル様は……」


 リュミエラが俺に助けを求めているが、さて、どう答えたものか。言葉は慎重に。


「その黒猫で、間違いは無い、奴は斬られようが、蛇に喰われようが、その程度で死ぬことは無い。だが、あいつが戻ってくることは、もう無い」


 ここは完全に関係を否定すべきだったろうか? 奴は死んだままにしておくべきだったか? 迷いもあるし、正解の答え方もわからない。

 俺の言葉を受けて、幼児は泣きそうになる。

 その程度で死ぬことは無いの部分ではリュミエラが顔を明るくしたが、戻ってくることは無いの部分ですぐに表情を暗くする。短い付き合いなのに、好かれたものだ。

 黒猫、ルルは、俺に対して怒っている。

 怒られてしかるべきことを、俺はした。有耶無耶になって別れることになったが、それで許されたとは言い難い。本来ならば俺は消されていてもおかしくない程の罪を犯したのだ。この怒りを収めるのに相当な時間が必要だとも言っていた。十年、何十年、あるいは何百年、神のごとき力を持った存在にとっての”相当な時間”とはどれほどか検討もつかないが、少なくともリュミエラたちが生きている間に姿を見せることはないだろう。それに奴が再びこの世界に姿を見せる時は黒猫の体を使ってもいないだろう。

 その時、俺はまだこの世界に存在しているのか?

 何度も言われた言葉、満足すれば、俺は消える。

 いつ満足する?

 わからない、なにも。超越した存在にとって、俺たちは等しく儚い存在だ。


「黒猫様は、彼女は、役目を終えたのです……」


 リュミエラがそっと幼児に抱き着き、涙を流す。その流れる涙を受けて、幼児もまた涙を流す。


「こら、止めなさい、リュミエラ、平民に抱き着くなど……」


 リュミエラの母親が娘の行動を咎める。そんなリュミエラの母に対して自然に言葉が出てくる。


「リュミエラ母よ、平民も貴族も、聖職者であれ王であれ奴隷であれ、骨になってしまえば皆同じ……心せよ、この世の身分など虚構の世界に創られた幻だ……」

「……う……あ……はい」


 何が大切なのか、大切にすべきだったのかを考える。

 身分どころか、神も悪魔も考えずに、ただただ事実を受け止めれば、黒猫の奴は、俺に対して優しかった。時にからかわれ、雑に扱われもしたが、その態度は変わることは無かった。

 ……それだけに、俺の記憶の隅に、落ちない汚れのようになってこびりついてしまった映像が気になってしまうのだが。

 悍ましい死を連れた、恐ろしい魔女、血に濡れた地面に倒れる俺、その記憶。

 黒猫ルルよ、貴様は何故、俺の前に現れたのだ。それを問い質す機会は永遠に失われた。


「リュミエラよ、お前は聖女になって、何がしたい?」


 俺の口から出た疑問に、俺自身で驚く。

 聖女になって何がしたい、だと?

 以前の俺ならば、こう考え、聞いたはずだ。「聖女よ、お前が受けた使命は何だ」と。

 だが出てきた言葉は、まるで聖女には意思があり、自分でそれを決めることが出来るかのような、そんな聞き方。

 聞かれたリュミエラの方は、それを疑問にも思わずに答える。


「黒騎士様、私は平和な世界を望みます。人同士で争うのは、嫌です。好きじゃないです。その為に私の祈りが必要ならば、私は祈ります」

「……そう神から言われたのか?」

「いえ、神は何もおっしゃいません。私には、ただ祈れとしか言われませんでしたから。だから、これは私が望むこと、もしこの望みが間違いであるなら、きっと神様が現れて間違いを正してくださるでしょう、それまでは、私は私の望みの為に祈ります」


 少女の瞳には強い光が宿り、俺は圧倒される。

 リュミエラの心に語りかけた存在、他人には聞こえぬ声で言葉をかけた存在、神、この場合では黒猫。やりたいことをやれ、好きな事をやれ、それは奴が一番に言いそうなことだ。

 巻き込まれ、流されて、何一つ事実を理解してなどいないだろうに、少女は念話の主の意図を完全にくみ取り、受け取っている。

 誤解していた。

 聖女らしくあれと演技しているのではない、彼女は自分が聖女であること望み、動いているだけだ。皆から望まれる聖女に成ろうとしているのだ。


 俺の心に渦巻く感情は、何だ。


 裏を知る俺から見たら、どれもこれもが滑稽で笑える話のはずだ。馬鹿かお前たち、いいように騙されているぞと、そういう立場にいるはずだ。だが渦巻く感情は、嫉妬にも似た、激情。

 言葉にできそうにないが、しいていうならば、憧れ。あるいは尊敬。

 かつてパリの町で一人で弔いを続ける盲目の僧侶プリュエルに対して抱いた感情と、それは同じ。自分に出来ない事が出来る他者に嫉妬し、焦がれ、自分もそういう存在になりたいという、願い。

 原始の人が、力を持つ獣に対して抱いた心。

 俺は、何に、なりたい?


 アンドレが口を開く。


「書状があります、今回の、あの魔女との戦い、その顛末を書いたものです。今は我々人同士で争っている場合ではないと書かれた、和平を望む書状。時間稼ぎの作戦でもあります。ですが彼らもこちらを悪魔の側にできるかどうかの瀬戸際、この提案を受け入れられる可能性はとても低い。これを今のイングランドに届けることは死を覚悟せねばならないでしょう。書状を作るのが間に合えばゴウベル殿に持って行ってもらえたのですが……」


 丸められた羊皮紙を手に、こちらを見てくる生前の知り合いに対して、溜息を吐く。


「アンドレ、言いたいことがあるなら言え」


 こいつは昔からそうだ。俺に言いたいことがあっても遠回り。思わせぶりで、そのくせ、大した用事もないと来ている。


「空を飛ぶ馬があったら、安全で速いなぁ、とか」

「あの馬、空はもう飛べないぞ。俺もだが」

「え゛っ!? そうなんですか!?」

「ああ、俺に期待するな」


 ローブを翼に変えて使えば滑空くらいなら出来る、はず。だがそのためにはあのイカれたモードになる必要がある。あれの出番は生涯無いことだろう。

 というかアンドレ、俺を小間使いに使おうとしていたな? 雑に使いおって。許さんぞ。だがアンドレの心の底から焦る声を聞いて溜飲を下げる。


「呪い……魔女の呪い……」

「違うぞトムス」

「あなたなら、もののついでとばかりに軽く引き受けてくれるだろうなって……」

「おい、貴様に俺の何がわかる、アンドレ」


 計画が狂ったとばかりに焦り出すアンドレ。最初から計画に俺を組み込むんじゃない。得体の知れない骨だぞ、いい加減にしろ。アンドレも抜けているところでは抜けている。


「だが、そうだな、リュミエラの護衛であれば、貴様らがゾロゾロとついて行けば事足りるだろう。俺は特にやるべきことも無し、どれ、暇つぶしにゴウベルの阿呆が磔にあっている姿を見て笑ってやることにするか。何、もののついでだ、その書状も届けてやる」


 俺が兜の奥で笑ったのを察したのか、アンドレの奴も安心したかのように笑顔で応じる。

 何故だ。何故俺が笑ったのを察したのだ。

 表情の無い骨どころか、今は兜まで被っているのだぞ?

 もしや俺は感情を読まれやすい奴なのか? いや、考えすぎだ。すべては勘違いなのだ。勘違いだけで人と人は繋がっている。

 そういうことだ。






素直じゃないホネごついに会いに行く話。どこに需要があるのか……

なんだか物語終盤の感じが出てきましたが、もうちょっとだけ続くんじゃよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=565701435&size=300
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ