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宇奈月探偵シリーズ

宇奈月探偵と空が泣いた夜。

作者: 隧道坂 燈

大雨の降る夜だった。

雷も激しく鳴り、大荒れの天気だった。

山の中を一台の車が走り去った。

その下では、ひとりの男性が月が泣いた夜を歌いながら大きな荷物を抱えて穴を掘っていた。



宇奈月啓太は事務所で作業をしていた。

妻であり、秘書でもある宇奈月益海と一緒に。

空を見て、宇奈月啓太は言う。「そろそろ来るな…」

すると、ポツポツと雨が降り出して、次第に本降りになっていた。

そんな中、事務所の戸が開いた。

益海は言う。「いらっしゃいませ。どうされました?」

事務所に入ってきた女性は「失踪した妹を捜してもらいたいんです」と言い写真を見せた。

その女性は「優花っていうんです。お願いします。捜してください」すごく必死だった。

探偵の宇奈月啓太はその必死さに負けて言う。「最善は尽くします、しかし見つからない場合もあります。事情が色々あったりするので…」

その女性は「骨でも良いから、見つけて欲しいのです。私にとって唯一の血縁なので…」と言った。

依頼主は篠原那奈というらしい。

探偵の宇奈月啓太はとりあえず依頼を受けて交友関係を当たることにした。


交友関係から分かったのは馴染みの店があるという事だった。


宇奈月啓太と益海はその馴染みの店に行くことにした。


宇奈月啓太は益海はお店に入ると、まず店員と思わしき男性が声を掛けてきた。

「当店は写真好きの人のためのカフェとなっております。普段は写真とか撮られるのですか?」

啓太は「スマホで風景写真を少々」と答える。

益海は啓太に促されて答える。「パソコンの写真を映えるカタチで撮ってネットにあげる程度ですが、嫌いではないです」

そして、席について宇奈月啓太は紅茶を頼み、益海はコーヒーを頼んだ。

新しい客が来ることが珍しいのか、二人は注目の的だった。

色々話したところで、宇奈月啓太は本題を切り出す。「この写真の女性を見たことないですか?」

常連の一人は「ここ4-5日は見ていないね…。前は毎日と言って良いほど来ていたが…」と言った。

宇奈月啓太は近くに来た店主にも聞く。「この写真の女性。見たことないですか?」

店主の女性は「あれほど来ていたのに、そういえば最近全く見ないね…ちょっと心配だわ」と答えた。

宇奈月はそのカフェの常連から、篠原優花のアパートを聞いた。

ポストには郵便物や新聞、雑誌が溜まっていた。

しばらく、帰ってきていない様子だった。

宇奈月啓太は最悪の事態を考えるようになった。


依頼主が渡した笑顔で写真に写る女性。

それを見て宇奈月啓太は呟く。「まさかね…」


それから、宇奈月啓太は最後に目撃されたのが山の方であることまでは突き止めた。


そして、事務所に帰って。

そのままキーボードに突っ伏して寝てしまった。


朝だった。

新聞配達の音で目が覚めた。

それ同時に事務所の裏口が開いた。

宇奈月啓太は身構える。

入ってきたのは妻で秘書の宇奈月益海だった。

啓太は言う。「なんだ…益海か…。びっくりした…」

益海は「正面玄関のポストに入っていた新聞です。置いておきますね」と言った。

啓太は「ありがとう」と言って、新聞を広げて読んだ。

啓太は驚いた。

篠原優花が最後に目撃された山の近くで、女性の遺体が見つかったのだ。

身元はまだ不明だったが、宇奈月はピンと来た。

おそらく、篠原優花だと。


しばらくて、宇奈月啓太の事務所に刑事がやってきた。

宇奈月啓太は言う。「なんの用ですか?」

知り合いの刑事である吾妻は言う。「久しぶりだな。あの爆弾女に振り回されたとき以来だっけ?」

宇奈月啓太は「それで本題は?」と急かすように言う。

吾妻は言う。「あの山の付近で聞き込みをしていたみたいだけど、何かあったのか?」

宇奈月啓太は「守秘義務があるので、答えれらません」と言う。

吾妻は「身分証が無くて、データベースにも何も無いから親族にも連絡が出来なくてすごく困っているんだよ。教えてくれないか…」と言った。

宇奈月啓太は携帯電話を取りだして、電話を掛けた。

「朝早く、すみません。探偵の宇奈月です。ちょっと大変なことになったのでこっちまで来てもらえませんか…」と言った。

吾妻は「まさか、お前の祖父。俊藏を呼んだわけじゃ…」と言った。


しばらくして来たのは、依頼主の篠原那奈だった。

宇奈月啓太は言う。「中間報告って形になってしまって、申し訳ないのですが…」

「まず、最後に目撃されたのは八○○町にある国道の旧道なんですか、ここで途絶えています」

吾妻は依頼主に許可を得た上で、この中間報告に同席をすることにした。

啓太は「ちなみにこのときの車の所有者は割り出せていないですが、運転席には男性が乗って運転をしていた。との証言が出ています」と言った。

啓太は続けて「この運転手の男性に心当たりはありませんか?」篠原那奈に聞いた。

篠原那奈は言う。「優花の彼氏か元彼氏かもしれません」

その後、篠原那奈は発見された遺体が篠原優花だったときの為に口の粘膜のDNAを刑事の吾妻に提供した。


その後、吾妻から宇奈月啓太に連絡があった。

「遺体は篠原那奈と血縁関係にある可能性が高く、篠原優花である可能性も高い」との連絡をしてきた。

宇奈月啓太は「想定はしていたが、最悪の事態になってしまったな」と言った。


宇奈月啓太はようやく、車の所有者を割り出して。

車の在処へと向かった。

そして、車も何度も尾行して仕事場を割り出した。


宇奈月啓太は「すみません。このシルバーの車を乗ってきた方ってどなたですか?」と言う。

すると、ひとりの男性が手を上げて、「なんの用ですか?」とぶっきらぼうな感じで言った。

宇奈月啓太は「僕は個人探偵の宇奈月と言います」と言い名刺を渡した。

その男性は「探偵さんがなんの用だい」とさらにぶっきらぼうな感じになった。

宇奈月啓太は依頼主から渡された写真を見せて言う。「この女性に心当たりはないですかね?」

明らかにその男性は動揺していた。

宇奈月啓太は「写真の女性について知っていることを全て話してもらいたい」と言う。

その男性は慌てた様子で「おっ俺は断じて殺してなんてしてない。神に誓ってもだ」と言う。

その男性は続ける。「あの日、俺は付き合っていた彼女をである優花を連れて、山の中で肝試しをしに行ったんだ。その途中で喧嘩になって優花は勝手に車から降りたんだ。信じてくれよ探偵さん…」

その男性の声は震えていて、何故か涙目だった。

宇奈月啓太は言う。「証拠はあるのですか?」

その男性はしばらく黙り込んでから、「そうだ!車のドライブレコーダーを見てくれ!!車内も撮れるモノなんだ。これで俺の主張が間違いでは無い事が分かる筈だから」と言って、車へと向かう。

そして、マイクロSDカードを持ってきた。

そのマイクロSDカードには自ら車を降りる女性の姿が録画されていた。

宇奈月啓太は「ドライブレコーダーの詳細を教えて頂けないでしょうか?」と言う。

男は再びぶっきらぼうになって「なんで、教えなきゃならないんだ」と言った。

宇奈月啓太はデータのコピーUSBメモリに入れてもらった。


宇奈月啓太は手帳に書いた目撃証言があった日と動画の撮影された日付を比べた。

すると、一週間のズレがあった上、動画に記録された日付と目撃証言があった日も激しい雨が降っていたことが分かった。


宇奈月啓太は「困った…」と呟いた。

すると、益海がコーヒーを飲みながらやってきた。

益海は言う。「依頼が入る一週間前の雨は雷もひどかったけど…、依頼が入った日の雨は大雨なだけで雷は鳴っていなかった。地理的に離れた八○○町の天気がどうだったか分からないけど、調べてみたら?」

宇奈月啓太は「ありがとう。益海。調べてみる!!」と言ってPCを開いて動画に記録された日付と目撃証言のあった日付の雷の記録や落雷の記録を調べた。

動画の撮影された日付は雷がほとんど鳴っていた無かった。

ウェブサイトにはそういう事実が記録されていた。

しかし、動画の中では稲光が何度も車の中を照らした上に雷鳴も音声として記録されていた。


宇奈月啓太は再び、あの優花の彼氏であった男の元へ行く。

そして、宇奈月啓太は事実を突きつけた。「動画の撮影された日付を偽装しましたね?」

優花の元彼は悪びれる様子も無く「それがどうしたって言うんですか?」と言う。

宇奈月啓太は決め手の一言を言う。

「僕が来た日には、この録画は既に上書きされて消えていないと辻褄が合わないんですよ。ドライブレコーダーの保存容量の関係でね。殺される事が分かっていたから、犯人にならないように動画を残したが、日付がそのままだと都合が悪いから改竄した。間違いないですよね?」

優花の元彼の男性は慌てた様子で「全部、話すから許して欲しい」と言い事の経緯を話し出した。

「優花にはストーカー気質の元彼が居たんだ。俺は優花の浪費癖にうんざりしていた。だから、俺に元彼が連絡をしてきた時、好機だと思ったんだ…。そして計画の日。その日はあいにくの雨だった。俺の目的は元彼に会わせてビビらせるのが目的だったんだけど…。あいつ優花を殺したあげくに俺のことも共犯だと脅してきたんだよ…」と全てを話してくれた。

「何とかしてくれよ。探偵さん…」優花の元彼は最初と違い弱々しく宇奈月啓太を頼る。

宇奈月啓太は言う。「依頼するなら、有料ですがいいですか?」

優花の元彼は「出せる範囲で出すから頼む」と言った。

そして、宇奈月啓太は「その元々彼の男性はどこに居ますか?」と聞いた。

優花の元彼は具体的な地名を言ってアパート名まで言ったが、そこは既にもぬけの空だった。

吾妻達と一緒に宇奈月啓太は何か手掛かりがないか探す。

机の上を見ると、書き置きがあった。

「福井に行きます」とだけ書かれていた。

吾妻はピンと来ていない様子だったが、宇奈月啓太は言う。「急がないと容疑者が死ぬぞ!!!」

吾妻は宇奈月啓太と篠原那奈を乗せてパトカーを飛ばし、関係各所へ連絡を入れた。


そこには崖に立つ元々彼の男性がいた。

吾妻は言う。「そこまでだ!!!」

元々彼の男性は言う。「あの世で優花と幸せに暮らします」

優花の姉、篠原那奈は言う。「バカ言うんじゃ無いわよ。優花はあんたのこと本気で気持ち悪がって居たわ。あの世でも一緒とか優花が可哀想過ぎる」

応援に来たパトカーから大勢の警察官が降りてくる。

元々彼の男性は篠原那奈の発言でやけになって大暴れしながら飛び降りようとしたが、警察官に先に腕を捕まれて引き上げられてそのままパトカーに乗せられた。


宇奈月啓太は篠原那奈に「僕がもっと早く気づいていれば…」と言う。

篠原那奈は「あなたは最善を尽くしてくれたわ。だから代金は払うわ。骨でも良いから見つけて欲しいって言ったのは私の方だし」と言った。

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