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貧乏男爵家の次女に転生した私は魔法の天才と一族から期待を寄せられていますが、その才能は、いつになったら開花するのでしょうか? ~略称(貧そい)~  作者: アカホシマルオ
アリソン六歳編

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開花その43 包囲 後編

 


 無数の小さなクレーターのような爆発の痕跡と、その上を流れて固まった溶岩。更に火山活動でできたと思われる、もっと大きな本物の火山の火口。


 魔力探査により明らかになった、幾重にも重なった混沌とした地形が当時の激戦を物語る。



「そして今頃になって、何らかの地殻変動で何かが外に出たと? いや、火山は安定しているか。なら海流の浸食により、弱い火山灰層が削られたとか……」


「魔力が枯渇したまま地中に閉じ込められていた二体の魔獣は、少しでも先に多くの魔力を得て優位に立とうと競っているようにも見えますな」


「ええっ、こいつらまだ戦う気なの?」

「戦う理由が無くなったことも、まだ知らないのでしょう」


「それで、魔力を吸収しようと互いに魔物を呼び寄せているのか?」

「恐らくは、無意識下で……」

 この広範囲にわたる異変の原因が、そんな無意味な争いだとは。



「パンダがいれば、両方の魔力を吸い上げて終わりに出来たのに。肝心な時に役に立たない奴だ」


「パンダを連れて、出直しますか?」

「いや、その気になれば強制召喚もできるけど……」


「では、お願いします」

「でもその前に、こいつらと話ができないかなぁ?」


「まだ本能的に魔力を集めようとしているだけなので、今の覚醒状態だと会話は難しいのではないかと」


「でも、このまま何も知らずに葬り去るのも可哀そうだよね」


「おお、精霊には冷淡な姫様が、魔物にこんな慈愛に満ちた言葉を吐くとは……私は今、猛烈に感動しております!」


「こらっ」



「ではもう少しだけ魔獣に魔力を授けて、覚醒を促してみてはどうでしょうか?」


「話ができるまで、魔力を回復してやるのか。それで無意味な戦いを終わらせることができるのなら、やってみる価値はあるよね」


「はい。万が一言うことを聞かなければ、姫様が消し飛ばすぞ、と脅せば効果は抜群でしょう」

「脅迫なら、してもいいんだ……」



「どうせ消し飛ばすのなら、それからでも遅くないかな、と」

「ルアンナは最初から、葬り去る前提だよね?」


「はい。魔獣というのは普通、人の言うことなど聞きませんから」

「なんだ、精霊と同じじゃないか。いいのか、それで?」


「今回は、姫様の説得に命運を委ねましょう」

「なんか、いいことを言いたかっただけだろ!」


「はは、また使い魔が増えてしまうかも、ですね」

「陸海空制覇か……そんなのいらないよ!」


 さて、では接近して、魔力を与えてみるか。

 私はパンダのように魔力を吸い取ることはできないから、慎重にね。


 ……ところで、これは毎度お馴染みの、失敗フラグなのでは?

 私は船の中から、割れ目の奥で眠る二体の魔獣へ魔力を送ろうとした。


 いきなり元気になって暴れ出さぬよう、先ずは島の守護神らしい、空の魔獣から。

「姫様、加減が大事ですぞ」


「そんな事、嫌ってほどわかるけどさぁ、魔法と違って魔力だけを収納するのはできないんだよね……」


「それなら、魔導石を使ってはどうでしょう。あれなら、元々僅かな魔力しか蓄えられませんから」

 ルアンナも必死だね。


「僅かな魔力、ねえ。それは私にとっては、という意味でしょ?」


「大丈夫です。あのスプ石の二、三個程度であれば」

「なるほど。じゃ、やってみる」



 海の魔獣は亀裂の奥に、空の魔獣は手前側に眠っている。

 海の魔獣は巨大なウミヘビで、空の魔獣は巨大な猛禽類に似ている。


 その空の魔獣の元へ、収納から出した程々の魔導石を、一つだけ送り込んだ。

 魔力を間近に感じた魔獣が、ゆっくりと覚醒する。


「空の魔獣よ、目覚めたか?」

 ルアンナが声を掛ける。


 私のように、魔力を感知できる人間は他に見たことがない。それは人族も動物も共通で、エルフもドワーフも、魔法は使っても、魔力を感知できない。


 だから、あの面倒な水晶を使ったりするのだ。

 しかし上位の魔物、魔獣と呼ばれる存在と精霊は、魔力を感じ取れる。


 だから私は人間ではなく、魔獣に近いのかもしれない。

「いえ、ハイエルフは精霊をも統べる存在ですから」

 そして魔力を感知できる者同士は、魔力による会話が可能だ。双方にその気があれば、ね。



「ここは、どこだ。私は島を守れなかったのか?」

 ルアンナの声が聞こえたのか、空の魔獣が答えた。


 姫様の説得が、とか言いながら結局ルアンナが会話の主導権を握る。

 本当に、気まぐれなんだから。


「あんたは、海の魔獣と共に火山の噴火に巻き込まれ、恐らく千年以上海底で眠っていたのさ」

「では島は?」


「あんたの上にある」

「おお、こんな小さな島となり、しかも魔物に満ちておる。だが、人も多少は暮らしているのか?」


「あの人間は、難破した船が漂着しただけだよ」

「そうか。私は大空と大地の獣、あなたは?」


「我は光と闇の精霊ルアンナ。今はハイエルフの姫君、アリソン様の守護精霊をしておる」

「では、島の国は滅びたのですね」


「ああ。今残っているのは、神殿に封印された魔獣と、あんたが戦っていた海の魔獣だけだ」

「そうか。ハイネス様はまだ眠っておられると。それは良かった」


 やはりこいつは、神殿に眠る魔獣を知っているようだ。



「詳しい話はあとで聞くわ。私がアリソンよ。あんたの下に、その海の魔獣がいるんだけど……これから目覚めさせるから、喧嘩はしないでよ」

 私はそこで、二人の間に割って入る。


「ハイエルフの姫様、あなた様の魔力により私は覚醒しました。私と同様、海の魔獣もあなたの魔力で覚醒すれば忠誠を誓い、しもべとなるでしょう。問題ありません」


 そんなことを言われると、もうここで止めたくなるな。

 ま、仕方がない、乗り掛かった舟だ。私は同様に、魔導石を海の魔獣の元へ送った。



「海の魔獣よ、目覚めたか?」

「ここはどこだ、邪魔な大鳥は、死んだのか?」


「私は生きているぞ」

「何!」


「落ち着け。我らは共に力尽き、噴火した島と共に海底で長い時間眠っていたようだ」


「島はどうなったのだ?」

「上を見てみろ」


 というやり取りが繰り返され、戦う理由も忘れかけた二体の魔獣は打ち解けて、亀裂から外へ出た。


「あんたたち、こっちへ来なさい」

 私が船の中から呼んだ。


「もっと魔力を分けてあげるから、じっとしてなさいよ」

 私はこれでもかとばかりに、二体の魔獣に魔力を与えた。



「おお、力が満ちる」


「体が一回り太くなった。今なら誰にも負ける気がせんぞ」

「ワシも同じ。どこまでも飛んで行けそうじゃ」


「それなら、あんたたちに一仕事頼むわ」

「は。何でしょう、アリソン様」


「あんたたち強大な魔物が復活するために魔力を求めたお陰で、多くの魔物をこの海域へ呼び集めていたようなの。しかも大興奮のカーニバル状態でね。それを落ち着かせて、元に戻して!」


「承知しました」

 二体の魔獣が何やら念じると、魔物の動きに変化が出た。


「これでこの海域の魔物は、おとなしく自分の居場所へ戻るでしょう」

「島の魔物も落ち着いて、自分の巣へ戻ります」

 良かった。


「ありがとうね。これで私たちも、北の大陸へ戻れるよ」

「我らも、姫様と一緒に参りましょう」

「いや、その前に、島の神殿の事を教えてよ」



「島が、南と北の大地の中継点として栄え始めた頃の話です。どちらの大地の住民も、この島を我が物にして有利に立とうと、戦が始まる寸前まで緊張が高まりました。その時、島に暮らす高位の術師が、火山の精霊の力を借りて強大な魔獣を生み出しました。それがハイネス様です」


 島の守護者たる空の魔獣が、語り始める。


「島を守るその魔獣のあまりの恐ろしさに南北の大陸は和睦を結び、その強大過ぎる力故、魔獣は次なる島の危機に備えて永い眠りにつきました」


「代わりに島の守護を任されたのが、このワシです。だがその平和な時代も、長くは続かなかった」


「海の大魔獣たる俺は南の大陸の王と取引をして、島の守護者を葬るべくやって来た。しかし島の危機に、ハイネスは目覚めなかった。その結果は、ご覧の通りだ」


「ではそのハイネス様の復活条件が判らぬまま、今も眠りについているのか」

 いやぁ、今も起きないで良かったよ。



「では、神殿については今後もなるべく刺激しないようにね」

 ルアンナが、私たちに釘を刺した。


「それから、海の大魔獣よ。お前は姫様に忠誠を誓うのなら使い魔となり、南の大陸へ赴き現状をつぶさに見て参れ」

 ルアンナ、余計な事を言うなよぅ……


「空の魔獣は、今まで通り島の守護に勤めよ」


「ワシは、姫様の使い魔にしてもらえんのか?」

 でっかい体で、哀れな声を出すなよ。そもそも空の魔獣のくせに、平気で海の中にいるのは変だろ。


「わかったよ。海の大魔獣、お前の名は今日からイラブーだ。我らがこの島を出るまでは、この海域を守護せよ。その後は南の大陸の調査、任せたぞ」

「はっ!」


「次に空の魔獣。お前の名は、オスプレイ。我が使い魔として人間のキャンプ地を守り、その後はこの島に残り周辺海域の守護を任せる」

「はっ!」


「では、私は島に戻るぞ。島にいる人間たちを守り、無事北の大陸へ戻れるよう、他の使い魔たちとも協力してほしい。ただし、怖がるから人間たちの前には姿を見せるな。うっかり人里へ墜落するんじゃないぞ」

「承知しました」


「イラブーは、時々報告をしろ。忘れるなよ。どんな事情があったかは知らぬが、結果的に島を沈めたのは、お前を送り出した南の大陸の人間だ……」



 南の大陸にその子孫が生きていたとしても、今更その責任を問う意味はない。


 しかし人間が魔獣を使って孤島を攻めるような戦い方は、私たちが直面している邪宗と似た、危険な思想だ。


 その末裔が、今現在どんな暮らしをしているのか。いつか接触する機会が来る時のためにも、慎重にならざるを得ないだろう。


 やれやれ。ルアンナの無茶振りで、また使い魔が増えてしまった。でも、当面は何とか振り切ったかな。


 とにかくキャンプへ帰ろう。周囲の魔物は、確かに減りつつあるようだし。



 メタルゲートを海面に浮かべ、私は普通に海上を航行して入り江に戻った。


 その夜、師匠とプリスカには、今日の出来事を詳細に説明した。しかし、船長と頭には黙っていようと思う。


 南の大陸のことなど、王宮は知っているのだろうか?


 海の魔物が減って緊張感が解けるのも困るし、もう十日もすれば雨期が終わり、荒れた海も穏やかになっていくだろう。


 自然に魔物がいなくなったように見えるのなら、それが一番いい。


 これで、全員で生還する望みが実現可能なミッションになったと思う。やれやれ。



 終




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