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貧乏男爵家の次女に転生した私は魔法の天才と一族から期待を寄せられていますが、その才能は、いつになったら開花するのでしょうか? ~略称(貧そい)~  作者: アカホシマルオ
アリソン六歳編

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開花その43 包囲 前編

 


「シオネの妹は、その後どう?」

 夜の船内で、私は師匠とプリちゃんに聞いてみる。


 朝の浜辺でプリスカがセルカの剣の稽古相手をするようになって、数日経つ。


「魔法は島にいる冒険者の中では、抜き出た力を持っています。放っておいても自分で考えて稽古をするから、こちらは聞かれた時に助言を与えるだけ」


 師匠は、ニコニコ顔で目を細める。


「セルカは剣の筋もいいし魔法の扱いが上手だから、いい魔法剣士になるだろう」

 プリスカが手放しで褒めるのも珍しい。


「お姉さま~って懐かれているしね」

 何故かプリちゃんが、顔を赤く染める。ん、ついに目覚めてしまったか? そうなのかぁっっ!


 いかん。私が興奮してどうする。


 だが私は知っている。夢見がちの少女が本物のイケメン剣士を目の前にすれば、いとも簡単に心変りする。淡い憧れは、甘酸っぱい思い出の中に消える運命だ。

 何を言っているのだ、私は。でも島には娯楽がないから、もう少し楽しませてほしい。



 私は明日、船長と冒険者の頭を乗せて、メタルゲートで外海へ出る予定になっている。


 あくまでも戦闘は避け、逃げ回りながらその実態を体験してもらうのが目的だ。


 本来は師匠とプリちゃんにも同行して欲しかったが、二人も多忙なので諦めた。

 代わりにルアンナとドゥンク、パンダとシロには船に残って貰う。


 危険を承知で私の船に乗ってくれる二人の信頼に応えるためにも、間違っても船長とかしらを失わないような戦力を、私は保持していなければならないのだ。



 翌日、変わりなく荒れる外海へ、私たちはメタルゲートに乗り高速で飛び出した。


 あれだけ大量に捕獲した魔物たちも、数を減らすどころか更に密度が増している。


 そこを結界で守られた船を操りギリギリで躱しながら、魔物の海を切り裂いて島を一周した。


 二人の乗客は恐怖と絶望の声を必死で呑み込み、驚愕に目を見開いたまま硬直した。


 入り江に入り速度を落とすと、冒険者の小船が寄って来る。

 彼らも、入り江に強力な魔物が入った場合に備えて警戒を強化している。


「外は、どうでしたか?」

 船室から甲板に出た船長と頭は青ざめた顔を隠そうともせず、絶望的な口調で見て来たばかりの地獄絵巻を説明した。


「日に日に、魔物の密度が濃くなっているように感じますねぇ」

 続いて私が、正直な感想を述べる。


「今年、大陸南岸の海に魔物が押し寄せているのも、ここの異変がそもそもの元凶なのかもしれない……」

 船長はそう分析した。


「それがこの島とどんな関係があるのかないのか、どちらにしても、今のような魔物の包囲から逃れるのは容易な事ではない」

 冒険者の頭も、この島が置かれている異常性に着目している。


 海の専門家二人がそう言うのだから、もう少し積極的にこの島の探索を進めるべきなのだろう。



 だが私は、山の神殿とそこに封印されているらしい魔獣の件を彼らに伏せている。それを説明したところで、どうにもならないと知っているから。


「このままだと、雨期が終わってもこの島を出られるかの保証はできない」

 海の冒険者の頭の拳が、自分たちの不甲斐なさに震えていた。


「このままでは、連日必死に汗を流している船員たちの士気にも大きく関わるだろう」

 船長も、今の絶望的な状況に危機感を強く感じている。


 要するに、外海の現状を船員たちには隠したまま、別ルートで密かに島の探索を進め、何らかの打開策を探る必要がありそうだ。


 だが、そんな調査に裂ける人材はどこにもいないぞ。


 動ける人間は精一杯働いているし、輪番制で強制的に休暇を取らせないと、体力的な限界が来ている。


 そんな状況なので、病気や怪我で動けない人間が常に数人はいる。それに加えて毎日数人が限界まで働いた後、大半は死んだように強制休暇の一日を過ごしている。


 稼働可能な人員は通常で全体の約七割、三十人少々しかいない。


 冒険者たちの使う魔法はかなり戦闘系に特化しているため、船の修繕に必要な資材調達やキャンプ生活の維持に必要不可欠な魔法は、不足しがちだ。


 船長直轄班の何人かだけではどうにも手に負えず、私と師匠が魔道具を使って手伝ったり、こっそりと見えないところで大きな魔法を使い一気に仕上げたりと、無茶をしながらどうにか日々を回していた。



 私はシロと出会った、ローゼンス子爵領での出来事を思い出す。

 あの時、私は自分をこの世界の異物で、トラブルメイカーだとはっきりと認識した。


 いつか私の周囲に集まる厄災が、取り返しのつかない悲劇を生むのではないかと怯えた。


 しかし、この無人島で展開されている群像劇に於いては、私は単なる脇役に過ぎないようだ。


 大陸の海岸まで影響が及ぶような魔物の活性化の原因が、陸から遥か遠いこの離島にあるとは考えにくい。だが仮にそう考えれば中心にあるのは山の神殿であり、そこに眠る魔獣なのだろうと言えなくもない。


 だとすれば、それこそが厄災を呼び集める異物だ。

 もう一度あの神殿へ行って確認せねばならないが、それには大きな危険が伴う。


 私は船長と頭と別れ、船を元の海岸へと戻した。



 静かな船室の中で、私は精神を集中する。

 魔力による、アクティブサーチを試みた。


 私の魔力により神殿の何かが反応したのだとすれば、探知用の微弱な魔力放出にも、何か反応があるかもしれない。


「ルアンナも、何か感じる?」


「地下ですね」

「やはりそうか」


「神殿自体は、大きな島の中腹辺りにあったものでしょう。それが噴火による沈下で、今は海底にある」

 なんかヤバそうで、ぞくりとした。だって、ルアンナが真面目なのですよ。


「神殿の結界は、火山の噴火で吹き飛ぶような軟弱な造りではなかったようね」

「おかげで、魔獣の封印は今も生きている」

 だが、それだけではない。


「ルアンナ、判るでしょ。別の場所で、海底の一部から魔力が強く吸収されている」

「そうですね。そこに封印の綻びが生じて、魔物を活性化させている可能性があります」



「だけどそれ以上は、私の魔力探査では判らない」


「それは、近くへ行ってみるしかないのでは?」

 事も無げに、ルアンナが言う。


「げっ、本当に海底旅行をするの?」


「私と姫様の結界があれば、水中でも行動可能でしょう」

 それは、何となく嫌だな。


「せっかくだから、潜水艇で行こうかな」

「なんですか、それは」


「我がメタルゲート号は、海にも潜れるのよ」

「まさか」


「いや、たぶん」

「姫様の棺桶にならぬことを祈ります」


「大丈夫だって。いざとなったら船を捨てて外へ出られるわけだし」


「それ、船を使う意味、ありますか?」

「水中探査艇って、カッコいいじゃない」

「……」

「こら、黙るな」



 ドゥンクとシロは、船が戻るとすぐに島内の探索と警戒に当たってくれている。


 パンダの姿も見えないと思ったら、採集班の護衛をしているプリちゃんの影に潜み、ストーカー行為の最中だった。


 私に船の留守番を頼まれる前に、逃げやがったな。

 まぁ、それでも何かの時には、採集班の役に立つだろう。


 それならば、私は一人で行動するのみ。

 呆れかえったまま黙っているルアンナは、一応一緒だけど。



 先ずはいつものように、船を波打ち際へ移動させる。

 必要なものは全て各種収納や巾着袋に入っているので、特に準備もない。


 当初、船室部分は取り外し金属の船体だけにして、フロートに水を入れてから潜るつもりで造っていた。


 しかしいざ潜ろうと思うと面倒なので、このまま行く事にした。結界で船全部を覆ってしまえば船室ごと潜れるし、多少の浮力は重力魔法で相殺できる。


「ルアンナ、このまま水中へ潜るから、船室ごと全部障壁結界で覆っておいてね」


「それは簡単ですが、全部覆うと魔力感知や攻撃魔法が、外へ向けて使えないのでは?」


 ふふふ、過去の戦いでは、それで苦労した記憶がある。

 しかし。


「いや、私なら平気だよ。今までだって結界の中から魔力感知とか使っていたでしょ?」


「姫様、いつからそのようなことができるように?」

「うーん、六歳になってからかな? だから、私一人ならば何の問題も無ーい」


「はいはい」

 また一歩、無敵モードに近付いた。



 波打ち際から入水自殺のように、ずるずると船は波の下へ沈んだ。誰かが見ていたら、大騒ぎになっただろう。


 すり鉢状になった湾の中央は、それなりに深い。


 その中心で魔力を放出してアクティブサーチを行ったが、湾の中には神殿に繋がる部分はないようだ。私は魔力感知で地形を確認しながら、先へ進む。


 湾の出入り口付近は外輪山に珊瑚が連なり、大型船がやっと通過できるほどの深さになる。


 そこから外へ出ると、いきなり強い海流に流された。

 海上では風と波の影響が大きいが、海中にはまた別の流れがある。


 島は海底から突き出した高い独立峰の先端なので、島から離れればどこへ流されようと座礁の心配だけはない。私は一旦流れに乗って、そのまま島から離れるに任せた。


 ある程度流された後、離れた場所から島を魔力探査する。


 山頂付近の祠から地下へ続く縦穴が延びていて、その先に封印された魔獣のいるらしい空間がある。そこは、私たちのいたキャンプの反対側の斜面に沿っていた。



 私は潜水艇となったメタルゲート号を転回させて、右回りで島の反対側へ向かう。


 島の反対側も噴火により大きく形を変化させたのだろう。しかし巨大な噴火口から離れていたために吹き飛ばされず、流れ出た溶岩により元の地形が覆われたようだった。


「元の神殿の入口は山の麓にあって、それは火山の噴火後も溶岩に埋もれただけでそのまま残っているみたい」


「そのようですね。今は島の沈下により海中深く沈み、しかも固まった溶岩と積もった火山灰に覆われていますが」

 ルアンナと意見が一致した。珍しい。


「でもおかしい。神殿の結界は、今でも十分に機能しているでしょ?」

「確かに、元の封印には劣化が感じられません」


「では、この異常は封印された古代魔獣が原因ではないことになる」

「そうですね」



「もう少し島に近付いて、ゆっくり周回しながら、精密探査を続けるよ」

「海底に近付き過ぎないように、注意してください」


 この辺りでは、島にぶつかった海流が複雑に渦を巻いている。慎重に、螺旋状に海底火山の周囲を周回しつつ、深度を下げて行った。


「これだ!」

「ですね」


 山の中腹に、別の古い噴火口の跡が見つかった。冷えて固まった溶岩に覆われた小さな火口が、幾つか集まっている。


 そこには大きな亀裂が入っていて、中から魔力が漏れ出していた。


「姫様、これは……」

「魔獣の気配?」


「しかも二体。これは海からやって来た大魔獣と、島を守護する空の魔獣が戦い、互いに力尽きて、火口の溶岩の中に長い年月閉じ込められていたようです」


「普通の火口というより、外からの魔法攻撃で出来たクレーターのようにも見えるけど。まるで二体の魔獣が暴れた戦場のような……」


「確かに、姫様がデタラメな魔法を使って暴れた跡にも似ていますね。その衝撃が、本格的な大噴火を誘発したのかもしれません」


「こら、私がこんな酷い暴れ方をしたことはないだろう!」


 えっ、無いよね? まだ。



 後編へ続く

 


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