13 フライング美少女プレス、しかもダブル
13 フライング美少女プレス、しかもダブル
……ぼみゅぅぅぅぅ~~~~んっ!
その光景を目にした者は、きっとこんな擬音を耳にしていたに違いない。
それほどまでに、衝撃的な瞬間であった。
ユズリハの今日の下着は上下純白のお揃いで、星柄のレースがあしらえられていた。
ちょっと控えめなかわいらしさのデザインだったのだが、それとは裏腹に、内包しているものは遠慮がない。
彼女の手作りのオニギリのごとくボリューミーで、先端がツンと立った形の良い巨乳が、ケントの口に押し込まれていく。
ケントはとっさに口を閉じようとしたが、タイミングが悪く、むしゃぶりつくような形になってしまった。
ケントの口内にふっくらしたオニギリのような柔らかさと、その上に乗った大粒のイクラのようなプリプリした食感があふれる。
それは、男なら誰しもが一瞬にして恋の奴隷になってしまうほどの魅惑の感覚であった。
ケントは魅了に抵抗する訓練を幼少の頃より受けていたので、クノイチのボインアタックにも辛うじて正気を保てていた。
「ああっ!? ケントさん! 食べてはいけませぇん!
ケントさんが食べていいのはこっちのオニギリではなくて、そっちのオニギリなのですぅ!」
しかしユズリハは喘ぐように叫びながら、なぜかケントの頭を抱え込んでギュッと抱きしめて離さない。
おかげでケントはもうひとつのオニギリから口を離すことができず、空気を求めて口をモガモガさせる。
それが吸い付くような刺激をユズリハにもたらし、敏感な少女の身体は電気が流されているみたいにビクンビクンとなる。
そのせいで、ふたりはますます離れられなくなるという悪循環に陥っていた。
ケントは薄れゆく意識の中で、人の気配を感じる。
ユズリハに押し倒されたまま窪地の上を見上げると、そこにはケント以上に息が止まりそうな顔のシトロンが立っていた。
「な……なに、やってるのっ!?」
「し、シトロン、さん……?」
その声に、ユズリハはゆっくりと上体を起こす。
おかげで、ケントの口にあったオニギリがチュポンと音をたて、ひとすじの糸を引きながら離れた。
ユズリハはケントの腰に跨がったまま、とろけきった表情でぽややんとシトロンを見上げている。
ケントは空気を貪りつつ、シトロンに向かって手を上げた。
「あ……ああ、シトロン、助かった。キミがいなかったら、このまま(あの世に)イッてしまうところだった」
「さ……最低っ! まわりに誰もいないことをいいことに、女の子を襲って裸同然にして、エッチなことをするだなんて……!
それも、もう少しでイッちゃうところだったなんて……! へ、変態っ!」
「信じてほしい、これは事故なんだ。
ところで、キミはなぜこんな所にいるのだ?」
シトロンはムッとした表情で、手にしていたバスケットをかざす。
真下にいるケントに落としてしまいそうなほどに、持つ手をプルプルさせている。
「サンドイッチを持ってきてあげたのよ!
昨日のビーチでの授業で、あなたは授業そっちのけで魚を獲って食べてたでしょう!?」
「心配してくれていたのか、感謝する」
すると、シトロンは顔全体で抗議するように険しい表情をつくった。
「し……心配してたわけじゃないわよっ! 授業を真面目に受けない生徒がいるのが目障りだったのよ!
食べ物を恵んであげれば、授業の邪魔をしなくなると思っただけよ!」
シトロンは知らず知らずのうちに、ムキになって声を張り上げていた自分に気付く。
胸に手を当てて深呼吸をすると、いつもの自分を取り戻すように、声のトーンを数段落として続けた。
「そ、それと……ついでに、足のケガを治してくれたのがケントくんなのか、確かめたかったから……。
あの薬草みたいなの、あなたが貼ってくれたの?」
「気付いていたのか。そう、あの薬草は僕が貼ったものだ。
賢者小学校で作り方を学んでから、持ち歩くようにしているんだ」
それは一昨日の授業の『バトルマラソン』でのこと。
ケントは荒業『お宝ゲットでとんずら』の最中、抱っこしていたシトロンが足をケガしていたので、患部に密かに薬草を貼っておいたのだ。
今までシトロンに言い寄ってきた男は、自分のしたことだけではなく、他人の手柄まで横取りしてシトロンに誇ってきた。
もし『バトルマラソン』で彼女を一位にしてくれた男がいたとしたら、それをタテに結婚を迫ってきたことだろう。
しかしケントだけは違った。
シトロンになにをしても、見返りを求めることなど一切しなかったのだ。
ケントが自分を一位にしてくれただけでなく、足まで治してくれていたことを知り、シトロンは驚いていた。
世の中には、こんな男の人もいるのだと。
そのさりげないやさしさを思いだしたのか、シトロンはモジモジと太ももをこすりあわせ、スカートを揺らしながら言う。
「け……ケントくんの薬草のおかげで、わたしはゴールしてすぐに歩けるようになったの。
だからいちおう、お礼を言っておかなくちゃと思って……」
シトロンは素直に気持ちになっていた。
――うん。いま、このタイミングなら言えそう……。
ケントくんに、「ありがとう」って……。
意地っ張りな少女がその5文字をなかなか言い出せないことを、知る者は少ない。
しかし久々の5文字が紡ぎ出されようとした瞬間、「あ」とケントの一言が割り込んできた。
「なにやらモジモジしているようだが、今はやめておいたほうがいい」
「な……なんでよ?」
「ここからだとスカートがめくれて、パンツが見えてしまう」
瞬間、シトロンはボンッ! と爆発するように赤面し、スカートを押えた。
「え……エッチっ! エッチエッチエッチエッチエッチっ!
ケントくんなんか、もう知らないっ!」
プリプリと怒って帰ろうとするシトロン、しかし勢いよく背を向けた途端、窪地の淵が崩れ落ち、足を踏み外してしまった。
「きゃあっ!?」
ずざざざざっ! と滑り落ちてくるシトロン。
しかしケントは受け止めることも逃げることもできない。
なぜならば、いま少年の腰にはもうひとりの少女が跨がっていたから。
その少女はのぼせたようになっていて、動かすことは無理そうだった。
少年の頭上で、迫りくるスカートがパラシュートのように派手にめくれあがる。
今までなんとなく見えていたものが、少年の目にだけに白日の元の晒された。
それは目の覚めるような鮮やかなレモンイエローで、艶やかなふとももと相まって、とてもまぶしい。
少年の視点からはそれがどんどん大きくなって視界を占有していくので、まるで太陽が落ちてくるようなインパクトがあった。
シトロンはケントの顔面に、ヒップアタックをかますように着地する。
少年は朝っぱらから、美少女ふたりから熱烈すぎるアタックを受けていた。




