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1ー3ー2 夏の大会前に、最後の輝きを

自宅で自習。

 土曜日。宣言通り朝から勉強をしていた。自室でやっても良かったが、せっかくだからと三姉妹全員でリビングで勉強することになった。

 千紗姉はもちろん、美沙も七月に期末試験が、喜沙姉も大学の前期試験があるらしい。だから全員で机を囲んで勉強をしている。

 母さんも今日はお休みのようだが、久しぶりの休みということで爆睡している。本当にお疲れ様です。


「お姉が土曜日休みって珍しいね。学生なんだから土日って仕事入れられるものだと思ってたけど」


「千紗ちゃん、そんな毎日仕事してられないよ〜。平日だって結構仕事してるのに。過労死しちゃう」


「それもそっか。収録やら撮影やらで東京にいないこともあるもんね」


 売れっ子アイドルでも、ちゃんと休日があるようで安心した。一応週に二日は休みになるように母さんやマネージャーの緑川さんが調整しているのだとか。でもそれはあくまで目安でこの限りじゃない時もある。

 忙しい週もあれば、暇な週もある。会社員と違って芸能人は与えられた仕事次第で忙しさが全く変わってくる業種だからな。


 ちなみに忙しい理由のほとんどは、七月・八月のスケジュールを無理に空けるため。つまり俺の夏の大会に合わせているとのこと。真夏の水着の写真などは真夏に撮らないらしい。

 全国の喜沙姉のファンの皆様方、色々とごめんなさい。それと芸能界の関係者の皆様方も。


「そう言えば喜沙お姉ちゃん。お姉ちゃんってそんなにお仕事ばかりで大学の単位?って大丈夫なの?講義には最低限しか出てないってお母さんが言ってたけど」


「大丈夫大丈夫〜。ウチってFランク大学だし、出席数かテストの点数をしっかり取れば単位はくれるから。どっちもそこそこ頑張れば単位はひとまずくれるよ!評価は悪いけど!」


「それって大丈夫って言わなくない?」


「でも大学行ってる芸能人の先輩方は皆そんな感じだったって言ってたよ?それにお母さんが、現役女子大生アイドルは売れるから行けって」


「母さん、そんな理由でお姉を大学に行かせたの……?」


 そんな感じで話をしながらも、勉強は続く。俺は全然話してないけど。

 女子三人が集まれば姦しいって言うけど、この三人の声をBGMに勉強する分には邪魔とは一切思わない。むしろ心地いいくらいだ。


 三姉妹の声にはヒーリング効果でもあるんだろうか。この三人が歌うアイドルユニットとか作ったら凄い売れそうだな。実姉妹ユニットとか希少で需要ありそう。

 母さんがそれをやろうとしてたなあ、昔。頓挫したけど。

 今度自室で勉強する時は喜沙姉のCDを聴きながら勉強しようか。それも良いかもしれない。


「私は勉強全然だけど、千紗ちゃんは平均程度にはできるのよねー。真面目に学生やってるからかしら?」


「まあ、授業はちゃんと聞いてるから。お姉みたいに授業もまともに受けなかった人とは違うし。それにお姉は高校受験の時だってアイドルになるって決めたから偏差値低いところ受験するってなって、あまり勉強しなくなったじゃん?やっぱりその辺りは差が出て当たり前だと思うよ?」


 喜沙姉は早々に勉強を捨てたからな。アイドルになるために普通であることをやめた。だから家族の中では一番勉強ができなかったりする。

 それでもこうやって試験前に勉強したり、クイズ番組の前に雑学を勉強したりしている。そういう真面目なところは普通に尊敬できる。

 アイドルと学生の二足の草鞋って凄く大変だと思うし、そんな中でもスタイルを維持して人気も維持して。一番バイタリティに溢れてるのもきっと喜沙姉だ。


「トモちゃんもそこそこよね?」


「得意不得意で結構差はあるけど、帝王ならやっぱり真ん中くらいの順位は取れたよ」


 中間テストではそんな感じだった。帝王は偏差値も五十くらいだからそこまでテストが難しいって訳でもなかった。

 それでも理数系はズタボロだったけど。数学はまだ計算ばっかだったからなんとかなったけど、それも前回と今回だけだろう。理数系はどうも肌に合わないと言うか。来年は絶対に文系に進もう。


 俺は推薦で入ったから学力的な意味ではちょっと不安だったけど、どうにかついていけそうで安心した。文系は授業を聞いていればなんとなくわかるから、自習では理数系に力を入れる。

 最大の敵は睡魔だけど。休み時間にいくら寝ても足りない。


「美沙ちゃんは、この前のテストは?」


「総合学年一番」


「……ん?美沙、聞き間違いか?何番だって?」


「一番だよ。兄さん褒めて?」


 いや、凄いな。美沙がテストの結果について自慢しなかったから一切知らなかったけど、まさか学年一番だったとは。

 俺の通ってた学校ってこの近辺じゃ結構大きな学校だから一学年百人は超えてるのに、それでも一番だなんて。


 俺には絶対できないことを達成した美沙の頭を撫でる。ノーヒットノーランやるよりも俺には不可能なことをしてみせた美沙に対して凄く安い報酬だけど、学生の俺にはこの報酬が限度だ。

 お金ないし、家事を手伝うこともできない。ナデナデが報酬とかしょっぱすぎる。


「「あーーーーー⁉︎」」


「うわっ!ビックリした。喜沙姉も千紗姉もいきなり叫んでどうしたんだよ」


「そうだよお姉ちゃんたち。どうしたの?」


(とかなんとか言って、すっごくニヤついてるわよ美沙ちゃん!羨ましいー!私お姉ちゃんだからトモちゃんに撫でてもらったことないのに!)


(智紀のことだからこれくらいしかご褒美あげられないって思ってるんだろうけど、あたしらにとってそれって最上級のご褒美だから!ほっぺにチュー事件といい、美沙に甘すぎない⁉︎唯一の妹だからって!)


 じょ、情緒不安定なのか?いきなり叫んだと思ったら鬼のような形相で俺のこと睨んでくるし。何か悪いことしただろうか。

 姉二人の叫びに驚いて美沙の頭から手を退けてしまった。いやホント、数秒のナデナデだけとか不甲斐ない兄でごめん。


 今度のテストも頑張ったらお小遣いからアイスとかケーキとか買ってあげようか。家事も頑張ってくれてるし、それくらいのご褒美をあげてもいいだろ。

 美沙を贔屓にしてるって思われないように、こっそりと美沙に食べたい物を聞いておかないと。俺の少ない小遣いじゃ三倍になったらすぐ貯蓄がなくなる。ただでさえ野球道具の消耗品でお小遣いがなくなっていくのに。


 母さんから野球に関しては必要な額を言いなさいって言われてるけどさ。俺だけたくさんもらうのは姉妹がいるから気が引ける。いくら喜沙姉がもう自分で稼いでるからって、まだお金のかかる子供が三人いるのは事実。

 それに俺の野球は本当にお金かかってるだろうからなぁ。遠征費とかユニフォーム代とか、諸々。


「み、美沙ちゃんはそんなに好成績なのに、帝王を受験するつもりなの?」


「うん、そうだよ」


「え、美沙も帝王に来るのか?それだけ成績良かったら勿体無いような……」


「そうそう。智紀の言うように勿体なくない?帝王って勉強的な意味じゃド普通よ?」


 ド普通って全く聞かない日本語だよな。しかし美沙も帝王に来るなんて。

 家から一番身近な学校だけど、それだけで選ぶとしたらちょっと理由が弱いというか。成績が悪くてそこしか目指せませんって言うならわかるけど、選択肢が多いのにわざわざランクの低い帝王を選ぶなんて。


「ううん。帝王に行く。わたし、将来は料理をして食べて生きたいから料理の専門学校に進むつもり。それならわざわざ勉強で忙しくなる進学校に行く意味はないもん。帝王なら専門学校に進学してる卒業生も多いし」


「ぐぬぬ」


「て、帝王は私立だからお母さんがなんて言うかしら?その理由だったら同じレベルの公立高校でも良いはずでしょ?」


「お母さんも良いって言ってるよ?いつも家事頑張ってくれてるから、お金なんて気にしないで行きたいところに進みなさいって」


 母さんも許可出してるのか。母さんは進学先にとやかく言わない放任系育児だから反対しないとは思ったけど。上の三人の進学先、すぐOK出してたし。

 成績の悪い上三人に許可出して、成績の良い美沙だけ反対するなんて道理に合わない。金銭面は問題ないって言ってるんだからそれも本当のことだろう。そうなると反対する理由がない。


「この家族は全員美沙に甘すぎる!末っ子だから可愛いのはわかるんだけど‼︎」


「美沙ちゃん頑張ってるもの!お母さんが反対するはずがなかったわ!」


「それに一番の理由は──兄さんを近くで応援したいからだよ。他の学校に行ったらその学校で全校応援とかしないといけないだろうし、そうなったら兄さんの試合見に行けないもん」


「ありゃりゃ。俺も進学の理由の一つになってるなら頑張らないと」


 自惚れじゃないけど、その理由もあるだろうなと思ってた。ウチの家族、俺の試合を見に来るのが好きすぎるからな。


「それにしても美沙ってウチの家族でもかなり不思議な出来の良さだよなあ。父さんも母さんも勉強はからっきしだったって言うし、料理は母さんより上手いし。俺とか姉二人は結構両親の影響強いと思うけど」


「「「ッ‼︎」」」


「美沙ちゃんは、ほらアレよ。隔世遺伝的な?」


「祖父母や親戚当たれば美沙そっくりなんているんじゃない?特に母さんの家系は皆綺麗で女傑が揃ってるし」


「四人も姉弟がいれば、そういうこともあるんじゃないかな?」


 まあ、そういうこともあるか。遺伝って不思議だよなあ。メンデルの法則だっけ。姉弟で血液型が違うなんてこと、起こり得るからな。

 なんか家族の話をしたら三人とも少しだけ顔を強張らせたけど、どうしたんだろうか。


 ……ああ、そうか。母さんの家系は母さんに芸能界だけはやめろって反対してきたのに、母さんはそれを振り切ってアイドルになったせいでほぼほぼ勘当されてるんだっけ。

 父さんの家系も、もう祖父母が亡くなってるから親戚筋もほぼいないんだよな。

 こんな雑談で、しかも試験勉強中にする暗い話じゃなかった。それを連想させるような話を振った俺が悪い。


 こういう機敏が悪くて口に出しちゃうから、モテないんだろうなあ。

 そこからは家族の話をしないで、勉強に集中した。やっぱり寮で勉強するよりよっぽど集中できる。

 せっかくベンチに入れたのに赤点だなんて恥ずかしいし、補習で練習時間が削られるのは嫌だからな。勉強頑張ろう。


次も三日後に投稿します。

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