彼の寝姿は雪だるま
『仕事終わった!今から帰るね!』
彼女からLINEが来た。
『寒いからうどん食べたい!』
続けざまにLINEが来る。彼女は僕の作るうどんが大好きだ。
『夕ご飯はうどんにしようか』と返信すると喜びのスタンプがたくさん返ってきた。
彼女の食べる姿は見ていてこっちが幸せになる。だからこそ作り甲斐があると言えるのだけど。
まだ帰ってくるまで時間もあるし、それまで少し寝よう…
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「ただいまー!」
帰ってきたのはいいんだけど、部屋が暗い。
いつもならおかえり、って言いながら彼が迎えてくれるんだけど。
よく聞いてみたら、規則的な寝息が…
彼、寝てる…
こたつで寝たら風邪引くよ?
風邪引く前に起こそうかなと思ったけど、彼の白いセーターに白い毛布が合わさって、モコモコした姿はなんだか雪だるまみたいでかわいい!
いつも見てるけど、寝顔もかわいいけどこれもかわいい、起こすのもったいなくなるくらい!
じっと寝顔を見つめていたら、私まで眠くなってきた。もうちょっとだけこの寝顔を楽しんじゃおうっかな。
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ふと気が付くと、左側に暖かい感覚。
鼻をくすぐるコロンの匂い、彼女がいつも付けている香り。
いつの間にか帰ってきた彼女がすうすう寝息を立てていた。
近くには帰ってきてそのままな荷物や上着が置かれている。
彼女を起こさないようそっとこたつを出る。
いつもクタクタになって帰ってくる彼女のために、僕ができることは限られてるけど。
大好きなうどんを作るために鍋に水を入れてお湯を沸かす。
冷蔵庫からネギや油揚げを取り出し、包丁で切っていく。
彼女が起きる前にできあがるといいけど…
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水が流れる音、沸騰する音、トントンをまな板を叩く乾いた音、
鼻をくすぐるだしの香り、口の中にイメージが広がる食べ慣れた味、
目を開けると部屋が明るくなっていた。
起き上がると湯気の向こうに見えてくる彼の背中、
私に気づいたのか振り向いて微笑みかけてくれる
「うどんできたよ、食べようか」