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約束に縛られても  作者: ジャック
第一章 なぎさ町編
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第一話 追放される者たち

--------

古代人は、大罪人だ。

神の子らよ、この過ちを二度と繰り返してはならない。

今の人間たちは古代人と同じ、悪魔の信者だ。

救いようがない。

でも、お前たちは違う。

敬虔で誠実だ。

だからこそ新しい預言を授けよう。

--------



町の中心にある広場に、町民全員が集められていた。

彼らは皆、一様に白いローブを纏い、質素な身なりをしていた。

広場の中央には7本の柱が立てられており、そこには7人の人間が縛りつけられていた。

6人をじっと見ながら、聴衆に演説している男が一人いた。その男は白いローブに赤い帯のついた服を纏っており、ほかの民衆よりは派手な服を着ていた。

その男は6人のうちの一人に近づき、頭の上に小さな冠を乗せた。

冠を乗せられた男は震え、ほかの5人もこれから起こることを想像してか、顔を青くしていた。黒い服の男はしばらく沈黙してからこう尋ねた。


「あなたは禁制に触れましたね?」

「違います!司教様信じてください!」


縛られた男は必死の形相で叫んだ。


司教と呼ばれた黒いローブの男は、慈悲のある微笑をたたえながら、表情とは真逆の冷酷な一言を言い放った。


「罪人二コラよ。言葉で弁明しようとも意味はありません。神はすべてを見抜いておられる。あなたは禁制に触れましたね?」

「司教様、どうか信じてください!私はただ、食料採取のために人が死んでいくのを見てられなかっただけなんです!」

「弁明はいりません。神は真実を見定められた。この者は禁制に触れました。」


二コラの頭上にある冠は青い光を放っていた。

広場からはどよめきが聞こえる。同情する者、嘆き悲しむ者、怒り狂う者、さまざまだったが、同情する者が一番多かった。

広場から一人の男が叫んだ。


「司教様、彼のおかげで皆は生き残ったのです、どうか寛大な処分を!」


司教は微笑みながらも冷たい声でこう言い放った。


「禁制に触れた者を庇うのなら、あなたは神の敵ですよ。神の子クラウスよ。」


クラウスはそういわれると黙ってしまった。


司教はほかの5名の罪人を一瞥してこう言った。


「罪人二コラは町から永久に追放します。ほかの5人は1週間の追放としましょう。」


「待ってください!」


クラウスは反射的に叫んでしまった。


「子供たちに罪はないのではないでしょうか?」


「クラウスよ、子供だからと言って容赦しては...」

「お待ちください司教様!」


民衆の中で、剣を持った人物が声を上げた。


「子供たちに罪はないと思われます。」


「レイチェル、あなたまでもそういうのですね,,,」


町の治安隊長である屈強な男。

かつて民衆が「人もどき」に襲われそうになった時、奴らをたった一人で追い払った。

そんなわけで民衆の信頼も厚く、司教も一目置いているレイチェルのこの意見に、司教も折れるしかなくなった。


「では、裁きの時を設けましょう。」


そう言うと司教は、5人のもとへ近づいて、順番に冠を乗せていった。


「あなたは二コラの妻、フラウですね?」

「はい,,,あの,,,」

「弁明はいりません。あなたは禁制に触れましたね?」


冠は青い光を放った。

広場からはどよめきが聞こえるが、司教は冠を次の者の頭に乗せた。


「あなたは倉庫番のカイルですね?」

「はい,,,」

「あなたは禁制に触れましたね?」


冠はまたしても青い光を放った。

司教は戸惑うこともなく、次の者へと冠を乗せていく。

カイルの妻のアキの時も、冠は青い光を放った。


司教はついに、子供2人の頭にも冠を乗せた。


「あなたは二コラとフラウの息子のエリヤですね?」

「は、はい,,,あの、その,,,」

「弁明はいりません。神は答えを示されました。」


冠は赤い光を放った。


「この子は無罪です。次、あなたはエリヤの妹、イリーナですね?」

「,,,」

「神は答えを示されました。この子も無罪です。」


冠はまたしても赤い光を放った。


司教は口を開いた。

「二コラとフラウ、カイルとアキは永久追放の刑、エリヤとイリーナは無罪とする!クラウス、あなたがこの二人を引き取りなさい。この二人は無罪です。今後も対等な町民として接するように。では解散!」


町民たちはその号令を聞き、解散していった。


「治安隊長、あとは頼みましたよ。」

司教はレイチェルの肩を叩いて言った。


二コラとフラウはエリヤとイリーナを抱きしめ、こう言った。

「幸せにね。」


エリヤとイリーナはただ泣いていた。

二コラとフラウも泣いていたが、クラウスが声をかけたので顔を上げた。


「おまえたち、絶対にあきらめるんじゃねぇぞ。」

「ああ、わかってるとも。二人のこと、よろしく頼むぞ。」


クラウスはカイルとアキにも声をかけた。

「お前らならきっと生き延びれるさ。あきらめずに頑張れよ。」

「あたぼうよ。」


「二コラ、フラウ、カイル、アキ、来い。追放刑を執行する。」


クラウスは4人とがっちりと握手を交わし、エリヤとイリーナを連れて自分の家まで帰った。この町では追放者の刑執行を見に行くことは禁じられている。クラウスは悔しさをかみしめながら、親友の子ども2人の手を引いて家に帰った。あの4人なら人類の変種がうごめく外でもきっと生き延びれるだろう。彼らはそれぐらい知恵者だと、クラウスは確信していた。


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