1 あの子の神様になれたのかな 過去編
「君は今から虹神という部署に言ってもらう」
赤桃紅……その頃はサラという名前だったが……は移動命令を出された。
ああ、これは惑星αでやられている『栄転』のようなものかな!?
ここは、下界の人間が『地球』と呼ぶ、太陽系のとある惑星を支配している部署だ。
惑星にはαやらβやら記号がつけられている。広大な宇宙を支配しているので、例えば惑星βの人々(?)とは話が通じない。話という概念があるのかも怪しい。
虹神もたぶん惑星αを取り締まる部署だよね、たぶん!
「ダーク、虹神とはどういう部署なのです!?」
私はわくわくして『上司』のダークに問いかけた。
「ああ……部署というか、ね。惑星αを一応……取り締まっている……のかな、うん」
ダークの答えは歯切れが悪い。
「あと、君には名前を授ける。赤桃紅だ」
赤桃紅。日本のキラキラネームみたいだ。
「とりあえず今から行ってこい!」
ワープみたいな感じで虹神の部署にたどり着いた。
がらんとした色素のない空間が無限に広がっているだけだった。
少し移動してみるが、誰もいない?
もしかしてこれ……。
うち一人!?
少し前方に移動してみると、穴があった。
下をのぞき込むと、下界が見える。
その横には、惑星αの人間が押したくなりそうな真っ赤なボタンがあった。
結局、我慢できずに押す。
下界の村に、パッと虹が広がった。
ああ、なるほどっ!
紅の顔に、パッとした笑顔が広がった。
これが、虹神!
その後、下界に見えるアメリカの村に、虹を出したり引っ込めたりを繰り返してみた。
うっわ、楽しい!虹神って良いところだなぁ。
そのうち紅は、よく空を見つめる少年を見つけた。
何しろこっちを向くもんだから、目が合ったようでドキドキする。
何日かするうちに、その少年は溜め息をついたり、浮かない顔をしていることが多くなった。
下界の音を拾ってみると、彼の言っている言葉が聞き取れた。
「……神様、助けて」
「ねぇ、どうしたの?」
紅はすぐさま、下界に『出張』して彼に話しかけた。
彼はぎょっとして振り向いた。
「……あなたは?」
「えっと……と、通りすがりの者だよ!サラっていうんだ!」
怪しそうな目を向けられる。
「き、君の名前は?」
あからさまに敵意がある視線が送られた。
に、にこーっ!怪しい者じゃないよ!
「……エリック。14歳」
はあ……本名かな?
「どうしたの、浮かない顔してるけど」
彼……エリックは唇を歪めた。
「母が……おれの母親が、もうすぐ死ぬんだ」
あれから紅は何もできなかった。
エリックは神に助けを求めた。……しかし紅には、何もできない。
できることは、虹を出すだけ。
うちって……神様失格だな。