表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たまねぎ  作者: 鈴本 案
1/3

地球侵略編

『たまねぎ』三部作の第一弾。SF。





 ピキューン。ピキューン。

 光線とその音の数だけ、人類が消える――




 二○XX年、彼らは世界中に現れた。

 突如として現れた恐怖の権化は、世の中に死と混乱を巻き起こした。

 大きい球根のような身体に、人間の手足を生やしただけの謎の生物。腕毛が生えたその手には未知の光線銃も握られている。

 ピキューン。ピキューン。

 光線銃が人にむけられ光を放つと、人間はたまねぎになった。

 人間が減って、たまねぎが増えた。

 ピキューン。ピキューン。

 彼らの問答無用で迅速な攻撃は、一切の反撃の隙を与えない。

 すね毛の生えた足がいくつもの街を悠々と練り歩けば、たまねぎの個数はどんどん増していった。

 理不尽で不可思議な暴力を前にして、なすすべのない無力な人々。ただただ逃げまどうしかない。

 哀れな子羊達は、もう神に祈るしかなかった。




 ――そんな中、勇気ある子羊がふと雄叫びをあげた。


「こいつら、食えるぞー!」


 つられて誰ともなく彼らに抱きつき始めた。

 子羊の皮を被っていた狼が追い詰められてその本性を現す。捨て身で獲物を捕らえていく。

 それだけでは飽きたらず、餓えた狼達は飽和しているたまねぎも食べだした。

 同胞やたまねぎが人間に食われているのを見て、彼らはとても怯んだ。

 こうして大阪から広がった一連のたまねぎ食い倒れブーム。

 神に祈りが通じたのか、狼達の反抗の狼煙は瞬く間に世界中に広がった。




 食べる。食べる。

 ある者はカレーに、ある者はスープ或いはシチューに。

 ある者はグラタンに、ある者はハンバーグにして食べた。

 中には和風として肉ジャガや味噌汁、戦場でわざわざ鍋料理に入れて食すグルメもいた。

 またある者はそのまま食らいついた。それはもう大粒の涙を流しながら。

 食べる。食べる。

 辛い。苦い。

 それでも彼らの攻撃は続き、両者共に犠牲者は増え続けた。

 人が減りたまねぎが増えて、残る人々はそのたまねぎもまた食べ続ける。

 異様な状況に耐えられなくなったのか、彼らはいつの間にかいずこかへと消え去っていった。




 こうして世界には真の平和が訪れた。

 そして、世界中の食料危機も全て解決した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ・未知の生物を食べてしまう日本人の業の深さよ [一言] Twitterで作品の紹介いただきありがとうございます。 相変わらず、素晴らしい作品でした。
2021/09/17 09:01 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ