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鋼鉄の雷電  作者: 兎鬼
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二つの暗黒

烏合の集が基地を手放し、武装トラックで荒野を走り、ある地点で止まる。


「よし、レクト! 行ってくれ!」


カラスが言うとトラックの扉が開きレクトが飛び出した。向かう先には木々が生い茂る森がある。あそこにはヘメロカリスやユートピアの兵士が占領しようと争っていることだろう。この戦いに我々も参戦することになったのだ。


『右前方で交戦中!』


トロンが遠くで使われる鉄腕甲やデンジロイドを探知してナビゲートする。道なき道をトロンはすぐれた身体能力で敵を避けて進む。


「なにもの──ぐあっ!」


何度かこちらに気づくデンジロイドやヘメロカリスを攻撃して駆け抜ける。


『うん、この方向に大きな反応があるよ!』


目的はその大きな反応だ。おそらく、ここのデンジロイドを束ねる"エト"の1人、ブラックタイガーだろう。


「うわっと!」


道無き道でバランスを崩すが、鉄腕甲により強化された体はすぐに体制を整える。途中、あちこちの木々に引っ掻いたような爪痕があり、敵が近いことを察したレクトの目つきが変わる。


『近い! すぐそこよ!』


森がひらけた。そこには黒い虎型のデンジロイドと基地を襲撃したハハコグサが睨み合っている。そこにレクトが滑り込み、三つ巴の睨み合いが始まった!


「ガルルル……また増えたか」


ブラックタイガーがレクトを煩わしいといった目で見る。


「おや、レクト。あなたも来ましたか」


丁重な言動のハハコグサは突如、ブラックタイガーに殴りかかる。ブラックタイガーはそれを飛び退いて回避。


「さ、役者も揃いましたし──」


ハハコグサの突き出した鉄腕甲が体を覆い始める。黒い鎧を身に纏い、ぎょろりとした眼球がブラックタイガーを見つめる。


「さっさと決着をつけようか!!」


荒々しい言動! その瞬間、レクトはハハコグサに飛びかかる。


「くらえっ!」


鉄腕甲を鈍器のように肥大化させて殴りつける。ハハコグサはそれを正面から受け止め足を大地にめり込ませた!


「効かんわッ!」


「グルルッ!!」


その背後からブラックタイガーがハハコグサを斬りつける! 鉄の鎧に切り傷が刻まれた。


「木偶が! 人間をナメるな!」


ハハコグサの腕が伸びると、巨大な棍棒と化する! そして、腕をブラックタイガーに叩きつける。


「グオッ!」


叩き潰されるブラックタイガー! すかさず空いた手をレクトに向け、エネルギー弾を放つ!


『避けて!』


トロンの声に反応して跳ぶ。エネルギー弾は後ろの木に着弾し、爆散!


「うおおおっ!」


レクトは落下しながら腕を槍のように尖らせ、はハハコグサの伸びた腕を貫く。どす黒いオイルのような血液が噴き出た!


「ぐあああ! 小娘がぁ!」


「ハハコグサ! お前はここで倒す!」


ハハコグサの腕がメキメキと変形! 鎌の形となり、レクト目掛けて大きく半円を描いて襲いかかる。


「チェイヤー!!」


鎌の根元をブラックタイガーの爪が切り裂く。制御を失った、勢いの乗った鎌はブーメランのように飛び、木々を切り裂きながら森へ消える!


「ぎゃあああっ!」


腕を失ったハハコグサは大きく仰け反る!


「テロリスト! 貴様も死ねぇ!」


ブラックタイガーは標的をレクトに変え、鋭い爪を向けて突撃!


『落ち着いて! 直線的で分かりやすい攻撃──いまっ!』


トロンはデンジロイドであるブラックタイガーの動きを計算。カウンターを狙いレクトに合図を出す。


「そこだ!」


剣先がブラックタイガーの爪先とぶつかり合う! そのまま剣は突き進みブラックタイガーの腕を引き裂いていく。


「ぐあああ!」


腕から配線が弾けオイルが噴き出てレクトの顔を汚す。ガクンと膝を付き、トドメに首を切断する!

吹き飛んだ頭部は爆発し、森の中を照らした。あとは片腕のハハコグサを残すのみとなった。


「くそっ! ここは撤退だ!」


ハハコグサが無様にも這うようにして逃げ出す。だがレクトはその背に大砲に変形した腕を向け、エネルギーを放った。


「ぎゃあああ……!」


ハハコグサは焦げ、制御を失った鉄腕甲はメキメキと形を変え始めた。


「なっ──」


レクトは思わず言葉を失った。鉄腕甲はハハコグサを覆い隠すように増幅すると、一気に押し潰された。


「うっ!」


一瞬にして人体が潰される音に思わず目を背けるレクト。恐らく技術の隠蔽のための機能だろう。跡には丸まった鉄腕甲が血の海を転がっていた。


『大丈夫かレクト!』


カラスから連絡が入る。どうやら指揮官が死亡したことで兵士たちは混乱に陥り、烏合の集が次々と制圧を成功させているようだ。


「はい、大丈夫です……。帰還します!」


そういい通信を切る。


『大丈夫レクト? 怪我してない?』


トロンは心配そうに声をかける。レクトは何ともないと──といい森を抜ける。烏合の集のトラックに乗り込むと席にどかっと座り込み、ため息をついた。




こうしてこの森は烏合の集のものとなった。狙い通り、デンシデンジは大量に生息しており、水質のいい湖も確認された。ここを拠点とすべくテントが作られ、新烏合の集が完成した。


『よかったねレクト』


トロンは焚き火を囲んでワイワイと騒ぐ烏合の集メンバーたちを見てホッとした様子だ。


「うん、この森はあいつらに渡さないよ」


レクトも始めて触れる自然に感動していた。かつてこの星にはこのような環境があったのだ。これをまた失うわけにはいかない。早くユートピアとヘメロカリスを倒さなければ。レクトの決意はより固まった。

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