『エピローグ』 Back Stage ②
夜の街を照らすネオンライトの下を歩いて、人気の少ない路地の方へと向かっていく。繁華街の裏に佇む占い館。
布のカーテンに手をかけ中に入ると、いかにもといった様相の若い女性が座っていた。
テーブルにはタロットカードや水晶、よくわからない木の棒の束、バリエーションは豊かである。
黒いレースを顔にかけた女性は私の顔を、ジッと見つめたあと、深々と一礼をして席に座るよう手で促した。
「ありがとう。行ってくるね!」
「いってらっしゃいませ、瀬沢紫音様」
水瓶座星団の団員の子に見送られて、私は地下へと向かう。私が座るイスを囲うように、床から強化ガラスが浮き上がってきた。そのままイスは地下へと降りていき数十秒程でこの街の地下へとたどり着いた。
地下はなにかのロボットでも扱っているかのような基地を彷彿とさせる内装で、これまた味の効いたアジトであった。
「やあ、玲川ちゃん。おひさ〜」
私を出迎えてくれたのはよく知る顔。フライハイト、水瓶座星団、団長の鬼船玲川である。私の元、同僚だ。
「久しぶりね、紫音」
「ダネダネ〜。ちょっと老けた? お仕事忙しいの?」
「失礼ね。私たち同い年でしょ。それに仕事が忙しいのはアンタが裏切り者だって組織にバレたからじゃない」
「え〜、でもバレたおかげで私いま、自由に動けてるんだけど」
「それと、これとは別の話よ。第一、自由に動けてるのも私のお陰でしょ!」
「そうでした。ごめんなさ〜い。いつも助かってま〜す」
プリプリとした童顔で怒りを撒き散らし、玲川は可愛さを見せてくれる。
「とりあえず移動しましょ。ディナーを用意してあるわ。食べてくでしょ」
「ホントッ⁉︎ ヤッた〜、玲川ダイスキ!」
玲川について行き、個室へと招かれた。そこにはかしこまったテーブルが設置されていて、今にもコース料理が運ばれてきそうな雰囲気があった。
「まあ、座りなさいよ。話はそこからよ」
「うんうん、座る座る」
そして向き合うように座った私たちは改めて今日の目的を果たすべく情報交換の時間を設ける。
「で、よく亜人から逃げてこれたわね」
「あんなの余裕だよ。大体、亜人くんってそんなに強くないし、あの部隊も戦闘が本領の部隊じゃないからね」
「人海戦術部隊を相手によく逃げれたわねって言ってるのよ」
「そこは玲川のおかげだよー。玲川の変身能力ってホントに便利だよね」
「そう、役に立ったのなら素直に嬉しいわね」
そう言った玲川は少し誇らしく笑っていた。
「で? 任務の方は?」
「うん、順調だよ。それに私たちの不安は杞憂に終わったようだしね。やっぱり、彼は自分でなんとかしてみせたよ」
「さすがね。やっぱり只ものじゃないわ」
玲川と話をしながら時を過ごしていると、部屋に一人の男性が入ってくる。そして、私たちの空のグラスに白ワインを注いだ。
「あ~いけないんだ! 未成年飲酒だー」
私がそんなことを口にしたら、思いのほか玲川にしっかりと睨まれた。
「何をいまさら。確かに今は未成年かもしれないけど、お互い立派な成人じゃない」
「でも、どうなんだろうね、そこのところ」
「じゃあアンタ、仮に牡牛座のおじ様が未成年になったとして、お酒を絶つと思うの?」
「思わないねェ~」
「でしょ、そういうことよ」
倫理観が少しずれている気がするけれど、まあこれ以上ツッコミを入れるのは無粋というものだ。
「ま、お互い頑張りましょうよ。私は内部から」
「じゃあ、私は外部から」
玲川の視線と私の視線が同じ意志のもとで交じり合う。同時にグラスを手に取り玲川は微笑んだ。その笑顔には思わず私も表情筋が緩んでしまう。
「「私たちの悲願のために」」
そして、地下の一部屋に耳心地のいいグラスの音が響き渡った。




