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救済とは人の人生に干渉する害である  作者: 早乙女・天座
一章 朽ちてなお這い上がる者
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2話 孤独の女王

 私は終夜が好きだ。好きで、好きで、たまらない。終夜の為なら何でもやる。私は中学三年の時、そう強く決めた。

 終夜は人と関わろうとしない。誰とも関わらず平和に生きたいと言っていた。有言実行、見事なまでに終夜は人と関わらなかった。

 そんな終夜が最近変だったのだ。何というか少し喜作になったというか。傍から見ると何も変わらない、その立ち振る舞いに、ずっと隣で見つ続けていた私は大きな違和感を感じていた。

 なぜ終夜に変化が起きたのか、その疑問が今日解決されようとしている。白鳥小雪、彼女と深く関りがあるようだ。 


 私は今、同じクラスで野球部副キャプテンの竹くんに告白されている。

 彼は人当たりがよくスポーツ万能で熱狂的な女子のファンも少なくない。

 だが、正直、竹くんが何を言っていたか覚えていない。いやちゃんと聞いていないの方が正解だろう。

 私はつくづく自分の事と終夜の事しか真意に考えていないのだ。

 『全ては平和な生活の為に』この思いだけは、まだ私が独りだった時からの終夜との共通点。

 「ごめんなさい今はそういうの考えてないの」

 瞬間、彼の顔は崩れ落ち絶望の色を見せた。

 「..................分かりました......じゃあ友達か――」

 竹くんが何か言おうとしているが、それどころではない大事件が私の目に飛び込んでくる。

 「ちょっ、どこに行くんですか宮園さん」

 遠目に見える終夜が前方に倒れ伏せたのだ。

 「終夜!」

 私はすぐに終夜のもとへと駆け寄り、声を掛けた。後ろから私を探して追いかけて来たと思われる竹くんの姿が見えたので利用させてもらう。

 「竹くん!お願い終夜を保健室に!」 

 「え!あ、はい!」

 竹くんはかなり動揺していたが、私のお願いを忠実に聞いてくれた。

 無事、終夜を保健室まで運ぶことに成功し私は竹君と共に教室へと戻って行った。

 

 午後の授業が終わり放課後、終夜はまだ教室に戻ってこない。終夜の目が覚めるまでベッドの隣でいてあげたいけれど放課後は行かなくてはならないところがある。白鳥小雪のところだ。

 白鳥のことは他のクラスの子たちに聞いて既に調べがついている。終夜に送られていたメッセージの『お母さんのお店』とは商店街にある、そこそこの弁当屋のことらしい。

 私はクラスの皆に笑顔で一礼して教室を後にした。

 そして、すぐさま早歩きで廊下を駆け抜け校門を出る。


 私にとって友人とは終夜だけ。

 終夜以外の全ての人間に興味は無い。

 私は私の為に笑顔を創る。美幸も曜子も生きるための糧にすぎない。言葉は悪いが捨て駒だ。

 私と終夜の為なら他人なんてどうなっても構わない。

 だって......他人は直ぐに裏切るのだから。

 

 商店街に着いた私は辺り一面を見渡し弁当屋を探す。

 程なくして、店の中に五人程が群がる飲食店のような弁当屋を見つけた。店の名前は『鳥の巣』お惣菜が入ったビニール袋を手に持つ主婦と思われる人たちが店から出てくる。

 まずは遠くから店の様子を窺ってみることにした。そしたらポニーテールでたれ目のちょっと抜けている顔をした、白鳥小雪の姿が見えた。

 店の中には50代後半くらいの小太りしたオバちゃんが三人集まってコーヒーを飲んでいる。なぜか白鳥も三人に混ざって椅子に座り水を飲んでくつろいでいる。

 さっきまで接客をしていたのに客が帰ると、すごくだらけた顔でオバちゃんたちと談笑している。接客業としてこれはいいのだろうか。そんなことを思いつつ、満を持して私は遂に鳥の巣の中へと入って行くことに決めた。

 鳥の巣の扉を叩くと店内に耳障りのいいベルの音が鳴り響く。

 「いらしゃいませ♪」

 白鳥が楽しそうに笑顔で出迎えてくれた。

 「あれ?宮ちゃん?」

 宮ちゃん?それは宮園の宮から来てるのだろうか。なぜか付けられている変な愛称に困惑しつつ私は平常を保つ。

 「こんにちは。私は宮園華希なんだけど、宮ちゃんって私の事かしら?」

 「そ~だよね!宮ちゃんだよね。私ずっと話してみたいなって思ってたの。皇くんから話よく聞いてるよ。わ~嬉しいなぁ~。どうして来てくれたの?」

 私の話は聞いてないらしい。美幸から低評価を聞いていたけれど既に体が疲れを訴えている。

 「私も貴方のこと気になってたの。だから会いに来たのよ」

 口ではそんな事を言うが、実のところ既に私の思考は本来と別の方向を向いていた。終夜は私のことを何と言っていたのだろうか。そういった思考。

 「何にする?お持ち帰り?軽く食べられるおやつもあるから良かったら食べてってよ」

 私は注文を聞かれたので、カウンターの上のメニューに目を落とす。

 『ミックス弁当』『和風弁当』『ハンバーグ弁当』『日替わり弁当』『スペシャル弁当』『横綱弁当』『ホワイト弁当』『スペシャル小雪弁当』『ティーセット※クッキー&コーヒーOr紅茶』他ショーケースの中にお惣菜多種。

 「ティーセット、紅茶でお願い」

 「は~いティーセット紅茶ですね。おか~あさ~んティーセット一つ紅茶で」

 「は~い」

 白鳥が後ろを向いてそう言った。

 姿は見えないが厨房には白鳥のお母様がいるらしい。

 「座って待っててね」 

 そう言って白鳥はオバちゃんたちの隣の席に水を置く。

 私が席に着くと隣のオバちゃんたちが私を会話に巻き込む形で話し始めた。

 「ねぇアナタ、小雪ちゃんの友達?」

 「はい、そんなところです」

 口角を上げ、笑顔を創り私は返す。話がスムーズに進めばなんだっていい。あとで修正することは容易である。

 「小雪ちゃん可愛いわよね。アナタも美人さんだけどね」

 「有難うございます」

 そう言ったオバちゃんは厨房にいる白鳥に暖かい目を向け、それは私にも向けられた。

 「あのねぇ私たち小雪ちゃんが大好きなのよ。小雪ちゃんいつもニコニコしてて私たちいつも元気貰ってるの。小雪ちゃんは太陽ね」

 「あ、そう言えばね。この間ね。小雪ちゃんが男の子と一緒に歩いてたのよ」

 「えぇ!遂に小雪ちゃんにも春が来たのね」

 「小雪ちゃんと同じ学校の制服着てたわよ。アナタどんな人か知ってるかしら?」

 考えたくはないが白鳥の隣を歩いていた男の子っていうのは終夜のことだろう。

 「さぁそんな話、私聞いてませんけど」

 「そうなの?」

 「はい......」

 「宮ちゃ~んお待たせ~ティーセットでございます」

 白鳥が厨房からティーセットを2つ持ってきて私の座る席に並べる。そしてあろうことか接客のはずの白鳥はつ椅子に座った。私の目の前ではなく隣に。私と白鳥の距離は僅か数センチ。

 「お母さんに友達が来てるって言ったら、休んでいいよって言ってくれたんだ~」

 白鳥は机の下で足をブラブラさせて喜びを笑顔で表す。その様子はまるで尻尾を振る犬のようだ。

 「そぉ良かったわねぇ小雪ちゃん。友達と水入らずで喋りたいだろうし私たちはお暇させてもらうわね」

 「え⁉いいですよ。そんな悪いです」

 「いいの、いいの。小雪ちゃんが友達と仲良くしてる方がオバちゃん嬉しい」

 オバちゃんたちはお会計を済ませ笑顔で店を出て行った。

 白鳥は急ぎ足でテーブルを片付けをし再び私の隣に座る。

 「アハハ!私、本当に宮ちゃんと話してみたかったの。嬉しいな、宮ちゃんも私のこと小雪って名前でよんでね」

 白鳥の話を聞きながらクッキーに手を付けてみる。クッキーに手をかけた瞬間、温もりが指を伝う。

 クッキーにしては来るのが遅いと思っていたけど奥で焼いていたようだ。

 味も良いし紅茶とよく合っていて普通に美味しい。

「美味しい?そのクッキー私が作ったんだよ」

「え⁉そうなの......美味しいわよ」

「本当!良かったぁ!」

生意気なことに、このクッキーは本当に美味しい。一つ口に入れ、紅茶を飲むと自然と次の手が出てしまう。

「あのね、宮ちゃんの事は皇くんから色々聞いてたんだよ」

「そう言えば、さっきもそんなこと言ってたわね。終夜は私のことなんて言ってたの?」

「え~とねぇ、皇くんが言ってたのはとにかく凄いってことかな?」

「凄い?」

「うん、何やらせても凄いって」

『凄い』というのがただの『凄い』なら何の問題もないのだが、終夜の言う『凄い』っていうのは悪い意味でとらえることが出来しまうのが怖い。

「そうなの」

「うん、料理もできるし、勉強もできるし、何でもできるって聞いてるよ。でも一番凄いのは性格なんだって」

これは絶対に悪い方の意味だ。

「宮ちゃんと皇くんは中学生の時から仲がいいんだよね。私、宮ちゃんに聞きたいんだけど皇くんって昔からああなの?何言っても辛口で帰ってくるし全然笑わないし」

これに関しては私も言いたい。本当に終夜のあの口調には何度も心を折られてきた。何言っても笑わないし、人間なのかと疑いそうになるくらい無関心なあの性格。もっと柔らかくならないかと日々思ってきた。

「あれはね昔からよ。私も終夜の笑ったとこ見たことないの」

「え!そうなの。なぁんだ私が嫌われてるのかと思ったよ。宮ちゃんも私と同じ扱いなんだね。良かったぁ」

 私の中で何科が切れる音がした。

 流石に今のは妬み関係なく怒っていいはずだ。

 確かに私は終夜に全く優遇されて無いかもしれない。それでも私の方がずっと付き合いが長いんだから......。

 白鳥小雪、白くて綺麗なスベ肌にサラサラの髪、ちょっと抜けた可愛いらしい顔、誰とでも仲良くなれる喜作さ、これは強敵になりそうな予感がする。

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