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握手会もセットで商品

作者: イマエサン

 よみうりテレビ系列で「AKBとxx」という番組が放映されていて、その中で今年の4月から、AKBだけでなく姉妹グループのSKEも登場するようになった。SKEは、名古屋の中区「栄」を本拠地としている。

 私は、当時SKEはあまり知らなかったが、以前踊るさんま御殿でメンバーの高柳明音が出演しているのを見てファンになった。「自分が可愛いことを自覚していることを悟られているがゆえに、無闇に張り切りすぎて周囲から浮いて孤立するに至った」高校時代のクラスメートのようで、見守っていきたいと感じたのである。この番組にもSKEチームの代表として参加していたことから、SKE自体にも関心を持つようになる。


 ちょうどその頃、SKEは「バンザイVenus」というシングルを発売しており、私はスカパーのスペースシャワーTVでプロモを録画していた。せっかくなら、高柳明音だけでなく、他のメンバーにも興味を持った方が楽しい。どうせ白い目で見られるのなら自分に正直になった方が楽だというプラス思考の下、プロモで気に入った女の子をSKEの公式サイトの写真で確認し、さらに動画サイトで言動をチェックした上で、上位5名(松井玲奈、高柳明音、小木曽汐莉、秦佐和子、木本花音)を選抜した。驚いたことに、3月10日に、シングルCDの宣伝で小木曽汐莉がカナート洛北でミニイベントをしていたらしい。このときにSKEの存在を知らなかったことが悔やまれてならない。


 7月に「パレオはエメラルド」という新曲が発売され、すっかり信者になった愚か者は、アマゾンで初回限定盤を購入した。CDを購入したはずだが、なぜかCDは一度も再生されず、付録のDVDばかり鑑賞している。その中に同梱されていた「握手券引換券」を有効活用すべく、10月にインテックス大阪で行われた握手会に参加することにした。


 始発に近い京阪電車に乗るべく、朝5時30分に自宅を出たのだが、それでもインテックス大阪に着いた頃には、握手券を引き換える列の最後尾まで2キロ以上歩かねばならなかった。無表情で列の流れに従い、二時間掛けて引き替えのブースに入った。

 残念なことに、松井玲奈と高柳明音の握手券はなくなっていた。ここで不安が胸をよぎる。小木曽と秦がなくなっていたらどうしよう。自分の年齢の半分しかない松井、高柳、小木曽と握手をすることを心待ちしているだけでもアレなのに、いくら自分が上位5名に絞ったとはいえ、13歳の木本花音を選んでしまっては真性のロリコンを宣言しているようなものだ。しかし、それは杞憂に終わった。顔の造形的には最も好みの小木曽汐莉と引き換えることができて、ほっと胸をなで下ろす。その後に引いたミニライブの抽選にも当たり、ひとまずトレードセンター内の珈琲館でモーニングセットを食べてから、ライブに参加した。

 ライブは、背の低い者は全く観ることができないという悲惨な状況だった。そんな状況でも熱狂的に盛り上がるファンの狂信ぶりに鼻白んだ。

 ライブが終わる前に、人をかき分け握手会の列の最後尾に並ぶ。ファンとしては信じられない行動だろうが、疲れがピークに達しており、とっとと握手をして帰りたかった。それから一時間並び、ようやく握手会が始まる。

 私の前の男性は、見るからにそういう系の人だった。案の定、握手した手を離さずにいたため、屈強なお兄さんが後ろから剥がしにかかっていた。自分もそんな風に剥がされるのは御免だったので、握手している間、「応援してます、頑張ってください」というメッセージだけ伝えて去ろうとしたのだが、「顔色悪そうですけど大丈夫ですか。」という問い掛けがあり狼狽えた。「だ、大丈夫ですよ。」「朝から並んでくださって本当にありがとうございます。」ほんの十秒程度であっても、いつもは画面の中にいる人と言葉を交わすことができて嬉しい。間近で見る小木曽汐莉は予想以上に顔が小さく全体的にシャープで芸能人オーラに満ち溢れていた。

 シングルCD1,500円程度で実際に触れることができるということを知ってしまったので、近い将来また、眠い目を擦りながら、行列に突っ立っている自分が容易に想像できるのが怖い。

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