存在の証明を、今
今回は少しシリアス回に
なります。
俺様教師×面白いこと好きのトラウマ持ち君第6話
「んまいぃ~・・・。」
口に入れた瞬間にとろけるプリン。
ひんやりとろ~り甘々ぁ・・・。
幸せだ。
「幸せだけどぉ、どうしようかな~。」
服は藤堂が言ってた通り洗濯機に投下されてたし、
見たところ乾燥機も本当に無さげ。
そうなるとここに泊まるしかないのは確実。
明日用事があるといったものの、それは嘘なので
べつに困りはしない・・・。
でも別の意味で困る。
アイツはどうやら俺の家庭事情について知りたいらしい。
担任としての義務故に知りたいのか
それとも、アイツの言葉を信じるとすれば
俺が好き、だから・・・?
いやぁぁぁぁぁぁぁ‼
なにこれ、はっず‼恥ずかしい‼
好きとか意味わからん‼
んんんんんんんんぅぅぅ~~~‼
「お前さっきから何唸ってんの?」
「びゃあぁぁぁ!!」
「奇声を上げるなよ。」
「びっくりするからいきなり声かけんな馬鹿‼」
「理不尽だなー。」
「うるさい!・・・って、ひぃぃぃ‼」
「今度はなんだよ?」
後ろを振り返ってビックリ仰天!!
このクソ教師、上に何も着てねぇ‼
「服着ろよ‼」
「なんで?部屋なんだからいいだろ?」
「よくない‼」
「なんだ充?お前まさか俺のこの格好いい身体を
見て照れてんのかぁ?」
「はぁ?ナルシストマジで勘弁なんですけど?
だいたい、格好いいじゃなくて暑苦しいが
正しいんじゃないですか?」
「お前の口は止まんねぇな・・・。」
お前が言うか?お前がっ!?
「まぁ、いい子で待ってただけでも
いい方か。」
果てしなく不愉快な事を
言われた気がするけど、まぁスルーしてやろう。
「で、泊まる覚悟はできたか?」
「できたもなにも、泊まるしか手はないでしょぉ。」
「てことは、明日用事があるってのは嘘だな。」
「はぁ!?お前が俺の服洗濯したから帰れないんだろ‼」
「お前の性格を考えれば、明日本当に用事があるなら
俺が風呂入ってる間にタンスを漁るかなんかして
勝手に出ていくだろ?」
な、なんと‼
その手があったのか!
くっ・・・、プリンちゃんに気をとられて
考え付かなかった‼
「ぷ、プリンに夢中だっただけだし・・・。
明日はちゃんと用事あるよ!」
「どんな?」
「え、・・・好きな本の新刊買いに・・・?」
「ほーう、そうか本を買いにいくだけなら
泊まっても問題ないな。」
「ぐっ‼」
結局そうなるじゃんかっ‼
どうせ本当に大事な用事があったとしても
なんだかんだ文句つけて俺を帰らせない
のは目に見えてんだよ‼
「じゃあ早く布団用意して‼もう寝るから‼」
「用意はしてやるけどソレは後でな。」
ヤバイ・・・。
この流れは絶対俺の思い通りにはいかないぞ。
かといって、話を反らす方法なんて浮かばないし!
ここは、最終奥義の『我が儘』で通そう‼
恥は捨てるんだ俺!充はやればできる子!!
「嫌だ寝る‼」
「ダメだ」
「じゃあ帰る‼」
「許さん」
「子供が眠いっていってるのに寝かせないなんて
それでも大人なの!?」
「話が終わったら寝かしてやるって」
ぬぉぉぉ、手強い‼
「話しなんて明日でいいじゃん!!
俺の事好きなら、好きなやつの我が儘くらい
聞いてくれたっていいじゃん‼」
これでどうだ!?
死ぬほど恥ずかしいが、あいつが俺の事好きなことを
逆手に取ってやったぜ‼
「・・・。前も言ったと思うが、
好きなやつのことだから全部知りたいと思うし、
好きなやつが一人で悩んでるのを見て、俺が支えてやりたいとも
思うんだよ。言っとくがなお前が思ってるより俺はお前に
惚れ込んでんだよ。」
「ひぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
「人が真面目な告白してんのにそれに
対しての返事が奇声って、そりゃないだろ?」
「うるさいうるさいうるさい!
お前はアレだ!羞恥心が欠落してんだ‼
そうじゃなきゃおかしい‼」
やーーー!!嫌だ嫌だ!!
誰かこいつに羞恥心と常識を与えてください!
至急お願いします!!
てか、ナチュラルに負けた!
俺の渾身の必殺技がものの数秒で防がれた!!
どうすればいいんだよ!?
「ほら、理由はしっかり説明してやったろ?
いい加減お前も話せ。」
「・・・。いやだ。」
「充。」
「・・・。」
「・・・はぁ。」
ビクッ
藤堂のため息を聞いて、途端に体が揺れた。
意識なんかしてなくても勝手に体が反応してしまう。
長年の経験故なのは理解している・・・、
けれど自分で抑えがきかないこの反応は俺にとってはまるで
呪いのようにも感じる。
お前はこの先一生、怯えて生きるんだ、と
あの人に言われている気がした。
「おい充?どうした?」
「な、んでもない。」
「なんでもないって・・・、体震えて・・・」
「もう、ほっといてよ!!」
「みつる・・・?」
「センセーがどれだけ俺の家庭のこと知りたいかなんて
俺にはわかんないけど、聞かれたって困るんだよ!
あんなヤツのことなんか思い出したくもないのに!!」
もう嫌なんだよ。せっかく薄れてきたのに
また俺はアイツに縛られるのか?
「やっぱり、何かあったんだな。
なぁ、お願いだ話してくれ。俺も、茶新や柚木崎
だってお前が無理に笑ってる時があることくらいわかってるんだよ。
わかってるのに、助けられないっていうのがどれだけ悲しいと思う?
聡いお前なら気づいてるだろ?茶新がいつも気にしてることくらい・・・。」
「多喜が優しいのなんか俺が一番わかってるよ!
俺が相談しないで勝手に自己完結する度に多喜は「よかったな」って
いってくれるけど本当はそう思ってないことも、俺のこと
心配してくれてるのも知ってる・・・。」
けど、そんな簡単なことじゃないんだよ。
他人に話すには俺の覚悟が足りなすぎるんだ・・・。
教えてって言われてサラッと言えるくらいなら俺だってこんなに
苦しい思いなんかしないですんでるのに。
俺はいつまでたってもあのころと変わらない。
ずっと、もう長いこと母さんとアイツの影に捕らわれてる。
忘れたくても完全に忘れられることなんてないのに、
忘れた気でいるだけなんだ。
それに気づいていて見ないふりをしているだけなんだ。
昔のことも、周りの人の心配してる顔も、そして
なにより、自分の気持ちも。
何重にも目隠しをしてまるで見えないかのように
振舞っているだけ。
「俺はあの時と何も変わらない・・・。
弱虫のままなんだよ。俺が弱いままだから周りの人たちを
傷つけてる。」
「・・・。」
「もう、見たくなかったんだ、誰かが傷つくのは。
でも、そう思ってたのに俺は弱いから一人でいるのが怖くて
多喜に話しかけちゃった・・・。多喜は強いから
大丈夫って思ったんだ。でも反対だった。
多喜は強いからこそ自分のことよりも人のことを
心配する。でも、今更また一人になるのは怖い・・・。
もう、独りになるのは嫌だっ・・・。」
独りは怖い。
真っ暗なのは怖い。
表情が見えないのは怖い。
そしてなにより、
自分が見えないのが一番怖い。
「俺は本当はこの世には存在しないのかも
しれない・・・。あの時から誰も、俺を
見てくれなくなったんだ!!」
自分が本当にここにいるのかわからなくなる。
誰か俺がここにいるって教えて。
俺は確かに存在してるって証明してみせてよ。
「充、落ち着け。俺を見ろ。」
「やだ・・・。」
「いいから俺の顔を見ろ!」
「!!」
突然体が温かくなった。
ふと気づくと体全体を力強く抱きしめられてた。
「俺の目には誰が映ってる?」
「・・・、目?」
この人の、藤堂の目には俺が映ってる。
いつもの俺とはかけ離れた、でも昔よく見た
情けない顔の俺が確かに映っている。
「お、俺が映ってる。」
「なら、お前はここにいるだろ!!」
「!!」
「お前は、充はちゃんとここにいる、俺の目の前にいるよ!!
だいたい、お前がこの世に存在しないだと?馬鹿言え!!
なら俺は一体誰に惚れたっていうんだよ!?
俺が惚れたのは正真正銘、新庄充 ただ一人だ!!」
「俺、一人・・・?」
「言っとくがお前は俺の初恋だ。」
「うそ・・・。」
「うそじゃねーよ。嘘じゃねーから、
お前がこの世にいないなんて言うな。
悲しくなんだろ。」
悲しい?この人が?
初恋とか悲しいとかいう感情から、もっとも遠そうな
藤堂からまさかこんな言葉が出るなんて思ってもみなかった・・・。
「充、お前はさっき自分は弱いといったよな?」
「・・・、いった。」
「それこそ嘘だろ。」
「嘘じゃない!!だって、おれは・・・。」
「いーや、嘘だね。
本当に弱いヤツはな、自分が辛い時に周りの人を
心配させないように無理して笑うことなんて
できやしないんだよ。お前は十分強いよ。」
俺が強い・・・?
そんなこと言われたの初めてだ。
面と向かって好きだといわれたのも、心配だといわれたのも
まして、強いなんて・・・。
「変なの。」
「あ?なにがだよ。」
「普通そんなこと恥ずかしくて本人前にして言えないでしょ。」
「恥ずかしくはない。俺はお前を惚れさせるために
必死だからな。」
「動機が不純すぎる・・・。」
「いいだろ別に、本心だよ。
なぁ、俺に話せないか?話せば楽になることだってあるだろ?」
なんだろ・・・、なんか昔のことを思い出したのに
こんなにすぐ落ち着いたのは初めてだ。
認めるのは嫌だけど、それはたぶん藤堂が
いたからなんだろう・・・。
「・・・、わかったよ。話せばいいんでしょ。」
「いいのか?」
「いまさら言う?アンタがずっと教えろって言ってたのに。」
「いや、思ったよりも根深そうだったもんでな。
お前がそんな風に言うとは思わなかった。」
「べつにもう、いいよ。」
俺もいい加減見ないふりは疲れた。
今回は特別。
センセーの言う、楽になるって言葉に賭けてみよう。
今までずっとタイミングを逃して、
自分が弱虫だと気づかれるのが怖くて
言いたくても言えなかった。
俺の過去の話・・・。
書ききれなかった!!
充の過去話まで行きたかったのに!!
充の過去は次回の話からになりそうです・・・。
そうしますと、次回もシリアスですね・・・。
というより、メイン二人の話に全然いけない!!
どうしましょう!みなさん、多喜と高氏のこと
忘れないであげてください(汗)




