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インフィニティ

作者: 緋寒桜檸檬

よくわからなかったら、ごめんなさい。


**

パソコンを開いた俺はおかしなフォルダがあることに気が付いた。

名前は「  」。「」の中に空白が二つ。俺は気になって「  」と書かれたフォルダをクリックしてみた。

パッと白い画面が現れ中心を青い円がくるくると回っている。


このパソコンは俺が小説家としデビューしたデビュー祝いとして自分で買ったものだ。

中古屋で並べられていたそれ。俺は中古と言われて、目を疑った。

まるで新品のようにぴかぴかで、人が一度も触ったことがないようだったのだ。

そして、とてつもなく安かった。俺はパソコンと値段を見た瞬間直ぐにレジへと直行した。


___あのころの俺は若かった。


昔の思い出に浸っていると青い円が消え文字がズラリと表れた。

フォルダの中は小説だったようだ。ああ、と俺は納得した。

小説を書くことを生業にしている俺にはよくあることだ。

昔書いたまま放置してあった小説を、今になってひょっこり見つけるとは、たまにある。

ふとパソコンを買ったときの店長の顔が浮かんだ。

あの時俺は、例のパソコンがほしいと店員を呼んだ。

すると青い顔の「店長」という名札を付けた男が出てきた。

店長は青い顔をしてパソコンを見て、そして俺を見ていった。


「お客様このパソコンでほんとうによろしいですか?」

「ああ」


俺が答えると店長は青い顔をさらに青くして言った。


「このパソコンはお客様が持っている限り保障いたします。少しでもおかしな所があったらこの00店へお電話ください。」


店長は真っ青な顔で「少しでも」の所を強調していった。

その後も店長は青い顔で会計をした。自分が持っている限りパソコンの保証をしてくれるなんて最高だ! とルンルンだった俺は少しも気にならなかった。


そこでハッと我に返る。また昔の思い出に浸っていた。

俺は気を取り直して小説を、読んでみることにした。「本の中」という題名だ。こんな話書いたかな? と思いながらページを下へとスクロールする。

昼だというのに薄暗い俺の部屋が静寂に包まれる。

読んでいるうちに俺はおかしなことに気が付いた。

本の中の主人公「僕」が俺にそっくりなのだ。

話の内容は「僕」がパソコンを立ち上げ奇妙なフォルダを見つける。

そして起動の遅いパソコンを待ちながらパソコンを買った時の思い出に浸る。

そして「本の中」を読んでいるというつい先ほどの俺と全く同じ行動をしているのだ。

___偶然だろ?


そう思いながらパソコンの画面を下へとスクロールすると


『___偶然だろ?』


背筋にすぅっと寒気が走った。俺と全く同じだ。この話は俺が書いたのか? 

このパソコンの前の持ち主か? 開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまうような気がして俺は読むのをやめようと思った。

でも頭では分かっているのに体が言うことを聞かない。

指が画面を下へとスクロールする。

話には作者の名前を確認しようと「僕」がページを最後まで飛ばした。

「僕」のペンネームは「陽炎」。俺と同じペンネームだ。

『私は怖くなりページを最後まで飛ばした。カタカタとマウスを持った右手の震えが止まらない。話にはこう書いてある。【ボクノウシロニ。ボクノウシロニ。アイツガ。アイツガ。アイツダ。アイツダ。アノ。アノ。ヒカン。ヒカン。ザク】話はここで終わっている。

『僕』は最近消えた推理小説家「緋寒桜檸檬」のことを言っているのだろうか。だとしたらこの話はごく最近の事となる。

〔天才推理小説作家。緋寒桜檸檬失踪!〕の記事は大きく新聞の一面を飾ったものだ。緋寒桜檸檬は「呪い」をモチーフにした話を書く作家で「00の呪い」シリーズは大ベストセラーとなった。

「ボクが死んでも私の掛けた呪いは消えないでほしい」が口癖でその意味は謎に包まれていた。

刹那、背筋に寒気が走った。

後ろに何かいる。 はそぉっと後ろを振り返ってみた。』


話はここで終わっている。ぞくりと背筋が寒くなった。

俺は怖くなりページを最後まで飛ばした。カタカタとマウスを持った右手の震えが止まらない。話にはこう書いてある。【ボクノウシロニ。ボクノウシロニ。アイツガ。アイツガ。アイツダ。アイツダ。アノ。アノ。ヒカン。ヒカン。ザク】話はここで終わっている。

『僕』は最近消えた推理小説家「緋寒桜檸檬」のことを言っているのだろうか。だとしたらこの話はごく最近の事となる。

〔天才推理小説作家。緋寒桜檸檬失踪!〕の記事は大きく新聞の一面を飾ったものだ。緋寒桜檸檬は「呪い」をモチーフにした話を書く作家で「00の呪い」シリーズは大ベストセラーとなった。

「ボクが死んでも私の掛けた呪いは消えないでほしい」が口癖でその意味は謎に包まれていた。

刹那、背筋に寒気が走った。

後ろに何かいる。 はそぉっと後ろを振り返ってみた。』


**

パソコンを見て私は首を傾げた。全く同じだ。

学校が終わり、宿題が終わり、学校で思いついたアイディアを小説に書こうと、パソコンを立ち上げた。するとパソコンに見慣れないフォルダがある。

不思議に思いながら開いて、読んでみる。題名は「本の中」。

半分まで読んで私は手を止める。学校で思いついたアイディアと全く同じだ。

このお話はもともと私の好きな某作家さんの話を土台にしている。

私がパソコンを買ったのはつい最近なのだ。無意識のうちに書いたとは思えない。


__いったい誰がこの話を書いたのだろう?


このパソコンはもともと中古。お年玉とお小遣いを頑張ってためて手に入れた大事なパソコンだ。

大好きな作家、緋寒桜檸檬の真似をして、椅子の上で足を組んだ。

緋寒桜檸檬曰く、アイデアに困った時はこうやって椅子の上で足を組んでコーヒーを飲むらしい。因みに、ブラックの濃い目。

そんなことをしていたら、とある考えに行き着いた。頬を冷たい汗が伝う。

私は怖くなりページを最後まで飛ばした。

カタカタとマウスを持った右手の震えが止まらない。話にはこう書いてある。【オレノウシロニ。オレノウシロニ。アイツガ。アイツガ。アイツダ。アイツダ。アノ。アノ。ヒカン。ヒカン。ザク】話はここで終わっている。

『俺』は最近消えた推理小説家「緋寒桜檸檬」のことを言っているのだろうか。だとしたらこの話はごく最近の事となる。

〔天才推理小説作家。緋寒桜檸檬失踪!〕の記事は大きく新聞の一面を飾ったものだ。緋寒桜檸檬は「呪い」をモチーフにした話を書く作家で「00の呪い」シリーズは大ベストセラーとなった。

「ボクが死んでも私の掛けた呪いは消えないでほしい」が口癖でその意味は謎に包まれていた。

刹那、背筋に寒気が走った。

後ろに何かいる。 はそぉっと後ろを振り返ってみた。


**

話はここで終わっている。

  は昔読んだ絵本を思い出した。

本の中に自分が読んでいる本と同じ本が出てくる。その本の中にも同じように話の中に出てきた本が出てくる。自分の読んでいる本を消さない限り本の連鎖は永久に続くのだ。  は目をつむり考える。自分はパソコンを持っていたか。「緋寒桜檸檬」という最近失踪した推理小説家はいなかったか。そしてこのお話を読んでいる  の後ろには誰もいないかを。

読んでくださり、ありがとうございました。

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