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俺はそれなりに中学高校という"人生の天国"、"青春"呼ばれた日を送ってきた。この5年間を振り返ってみても、充実したものといえるだろう。しかし世間では俺を"青春"には含まないらしい。世間は広辞苑をはるかに通り越し、新たな言葉をも作り始めた。リア充、ソロ充。まったく滑稽である。この年頃をいきる人達を彼氏彼女がいないで勝手な集合を作ってしまったのだ。僕はそんな世間にも、中学高校は"青春"だ、色恋沙汰だ。などという紋切り型には屈しないで生きてきた。なぜなら俺はただ楽しむことが好きな自由人だからだ。回りの目がどうであれ、オープンなヲタであり、所持金無視して遊ぶし、そもそも帰宅部の塾いかない勢だ。まあ、そんな俺でも勉学はしっかりやってきたがな。とにかく俺は今の生活に十分充実している。彼女を作る理由がない。そもそも俺の彼女は2次元にいるはずなんだ。4月。その時に春の始まりとともに"青春"が始まる。俺はおそらく世間で言えば"黒春"なのであろう。だが青春は必ず春から始まるとは限らないようだ。俺はこの夏、転校した。俺の名前は真北 淳だ。
俺は転校して1ヶ月が経っていた。俺は俺がこれまでの生き方を打ち砕く、三次元に恋をしていた。
「淳、僕はね。昨日彼女さんと手をつないだんだ。それはもう興奮したこと至上だよ。」
「へぇ。リア充さんはいいようで。」
「淳、僕は最初、君みたいな陰気なやつは彼女なんていないだろうと思っていたよ?」
なんて失礼なやつめ。こいつは転校して同じクラスになった辻田 和人。口の減らないやつだ。
「悪かったな。彼女いなくて。」
「ははっ。僕は何もそれで蔑もうって訳でもないのさ。なんてたってこの木滝高校の2年生といえば、木滝市の夢とも呼ばれている。今からでも遅くはないよ?」
和人は自信たっぷりにも言った。自分がリア充であることをいいように。
「お前、悠々としてるな。傲慢もいいところじゃないか?」
率直に言ったが、和人には無用。鼻で笑われ、
「僕はね。淳。今が最高に楽しいのさ。だから淳にもこの良さを味わってほしいのさ。」
「余計なお世話だ。せいぜい自分の恋が疲労困憊の中で過去形になっていかないことを請っておくことだな。」
「淳にそんなこと、言われる筋合いはないけど。僕らはラブラブのコーヒーとコーヒー砂糖だからね。離れたくても離れられないのさ。永遠の現在完了の継続だよ。」
「回りくどいやつだぜ。俺はコーヒーには砂糖をいれないがな。その比喩は人によっちゃ違いすぎる。」
「違いないね。」
木滝高校の帰宅部の二人の放課後。9月下旬で日もまだ長い中、俺たちは教室でひたすら談話をしてい。青き朱夏の話を。
「そういえば、淳。暇かい?」
「まあ、することもないしな。」
「ならこのクラスのかわいい子の話をしないかい?」
「はぁ。まじかよ。」
「嫌ならいいよ。淳にはある謎を解いてほしかったからね。」
「謎?」
「世にも奇妙な『6組のかわいい子、付き合ってない事件』だよ。」
なんだその謎。謎でも何でもないじゃないか。純はそんなことを考えながらも身を乗り出した。
「詳しく聞かせてくれ。」
「淳、まずだよ?このクラスのかわいい子は誰かというと。おそらく4人だろう。加藤 恵里菜。豊島 満里奈。堤 愛梨。瀬川 奈由。」
「かんいさのタイプが全然違う。」
和人は肩をすくめた。
「淳、気持ちはわかるが、今は関係ない。僕が言いたいのはね。『かわいい子は付き合っている』この法則がねこのクラスではまったく成り立っていないとこだよ。」
「普通だろ。謎でもなんでもない。」
「本当にそう思うかい?この四人には不気味な共通点がある。まず、一年の頃は皆、別々のクラスでほぼ接点はない。二年になって、急に四人は仲良くなり始めた。さらなる共通点は四人はそれぞれ違う運動部に入っていたのに、一気にやめたこと。そしてこれも奇妙でね。6組になった瞬間、全員、別れているよ。」
「んー、確かに偶然にしては、そろいすぎかもな。これは何かの暗号としたらどうだ?」
「というと?」
「元カレに対する叫びや嘆き。」
「淳、それは考えすぎだよ。」
和人の表情には微笑が浮かんでいた。
「僕の推論を聞くかい?」
「聞くだけはしてやる。」
「そうだね、僕はこの4人は連合を組んだと思うんだ。元彼氏に対する不満戦線さ。そんな大きなものでもないと思うけどね。おそらく最初はそれで仲良くなって普通に今は仲良くいるだけだと思うけど。」
「それは確定だな。ミステリアスを解くにはもっと深くだ。」
和人は身を乗り出した。
「どういうことだい!?これだけの情報で何がわかると言うんだい!?」
「そうそう向きになるな。どうせお前も暇だろ。ついてこい。答えを見してやる。」
すると、和人は突然、苦笑しては
「ええ、僕、週末課題やってるんだけどな…」
何だかんだで、和人は淳を追って芸術棟へと向かった。現在、芸術棟での部活は美術部しかなく、それもしてなかったので閑散としていた。
「どうしてこんなところに?」
和人はついていきながら、ずっときょとんとしていた。
「静かな場所ほど、闇風は吹く。」
「へぇ、淳。回りくどい言い方をするね。じゃあ見せてもらおうか。闇風を。」
「まあ、慌てるな。もう時期に着く。それより俺の推論をまとめさせろ。」
「へぇ、何か思い付いたんだね。淳。聞かせてよ。」
二人は芸術棟の廊下を歩きながら、推理を始めた。
「まず、第一の謎は4人に共通点が多すぎること。これはおそらく4人が結成したからだろう。第二の謎はなぜ結成したのか。これもおそらく元カレの問題から今は普通に仲がいいんだろう。そして第三の謎。なぜ部活をやめる必要があったのか。」
「それは僕も根拠に上げたけど、今回は関係ないんじゃないんかな。」
そこで淳はにやりとした。
「やっぱ、知らないみたいだな。今年1年生が入ったと同時に広まった噂を。」
「噂?」
相変わらず、きょとん顔の和人を前に淳は語った。
「都市伝説:21個目の部活。というよ。何らかの形で勧誘が出回ったらしい。そしてその勧誘は"元カレに不満がある人大募集"。つまり女子しか誘われなかった。さらにこの木滝高校は部活の兼用は不可能。」
ここにきて和人はやっと悟ったがごとくの顔で
「ま、まさか!!」
身を乗り出していた。
そして二人は普段、ほぼいく機会のない。地学実験室についた。そしてそこにいたのは
「あら、貴方は転校生の子よね?なんでこんなところに?」
言ったのは堤 愛梨だった。他3人もいて、それは う。加藤 恵里菜、豊島 満里奈、瀬川 奈由だった。予想通りのビンゴだった。
「いや、俺はただ転校したので学校探索してるだけですよ。放課後に女子4人が集まって勝手に使ってない教室を使って勝手に部活を作って活動してるのを見にきた訳ではありませんから。」
「あ、あなたは、私たちを!?」
堤には少なからずの焦燥感が滲み出ていた。
「悪いことにはしませんよ。僕も転校そうそう敵を作りたくはないですからね。それに現在、必修科目になくこの学校では取らなくなって使う必要がなくなった地学の部屋を僕がどうこう言う必要はないですからね。」
堤は肩をすくめたが、決心をしたかのように言った。
「すべて見透かされてるようね。」
「悪いことしましたね。すいませんでした。」
淳も和人も肩をすくめていた。
堤は自信があるような態度を相変わらずしていた。まったく冷酷な女だ。
「あなたたちは、すべてを知ってしまった。なら入ってもらいましょうか?ちょうどそういうことを解ける人を待っていたの。」
「入るってこれにですか?」
たしかに、クラスのベスト4かわいいが入る部活だ。三次元に興味が少しずつ持ち始めている俺としても悪い話ではない。それに
「もちろん!!入らせてもらいます!!」
これまで黙っていた和人が突然身を乗り出して、懇願を始めやがった。これは面倒だ。仮に俺が拒絶してもこいつの女好きの熱心さには勝てる気もしない。はぁ
「なら、俺もお言葉に甘えて。」
「決まりね。ようこそ、21個目の部活。未知の会へ。」
最後にこの場をもってったのも、この冷酷な女だった。