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幼馴染のち恋模様  作者: 琴乃葉つむぎ
突然の贈り物

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今日の葵はとても浮かれていた。


あれから2ヶ月が経ち、やっと梗介が帰国する。長かったような、あっという間だったような。

お昼の直行便で帰ってくるとのことなので、夜に会える。待ち遠しくて、一人浮き足立っていた。


「柚月さん、何かいいことでもあったの?」


部長が穏やかな笑みを浮かべ声をかけてきた。


「えっ、何か変でした・・・?」

「いいや。何だかいつもより楽しそうにパソコンと向き合ってるから」

「し、仕事!楽しいです!」


下手な嘘をついてしまい、自分で自分を殴りたくなった。


「それはいいことだね。そんな柚月さんにはこれをあげよう」


部長は後ろで組んでいた手を葵に差し出す。手に持っていたのはチョコレート。

そう言えば明日はバレンタインではないか。危うく何もせず終わってしまうところだった・・・。


「部長!ありがとうございます!」

「そんなに喜んでもらえるとは・・・チョコ好きなんだね〜」


そっちのお礼ではなかったが、わざわざ弁解するのも違うかと思い、素直にチョコレートを喜んだ。


梗介にも何か作りたいな・・・。

小学生の頃から梗介にはバレンタインのお菓子をあげていた。義理という体で。

だけど今は堂々と本命として渡せる。ならば気合いが入らないわけがない!


仕事の帰りに、お菓子の材料を買って帰宅した。ご飯も作らなければいけないので時間がない。


梗介は甘いものが好きだ。選択肢が多くて何を作ろうか迷ったが、食後に食べても重くないものがいいと思いトリュフを作ることにした。

夕飯は梗介の大好物、唐揚げ。


せっせと手を動かし、順調にできてくる。そこでスマホが震えた。


『空港着いた。今から家向かう』


要件だけが並べられた文字なのに、今はキラキラして見えてしまうのは浮かれすぎかな?

浸っている場合ではない!帰ってきちゃう!急がなきゃ!


バタバタと慌ただしく準備を進めていく。

揚げたてを食べてほしくて、帰る直前を狙って唐揚げを揚げ始めた。

カラカラ、パチパチと揚げ物特有の音が耳に心地いい。


すると、突然リビングの扉が開いた。

玄関の音は揚げ物の音に紛れて聞こえていなかったのだ。

驚いて固まっていると、そこに立っていたのは待ち焦がれた愛しい人の姿。


「ただいま、葵」

「梗介っ・・・」


会えた喜びで自然と頬が緩み、満面の笑みで駆け寄る葵。梗介は両手を広げ飛び込んでくる葵をぎゅっと抱き止めた。

これでもかというほど抱きしめ、存在を確かめる。


「会いたかった・・・」

「私も、すごく会いたかったっ」


大好きな梗介の香りを肺いっぱいに吸い込む。


「嗅ぐな。風呂入ってないんだから」

「いいの。梗介の匂い安心する・・・」

「じゃあ、俺も」


そう言って同じようにすごい吸引力でうなじの辺りを嗅がれる。


「あはは!くすぐったい!」

「葵の匂いと揚げ物の匂い」

「はっ!まずい!」


唐揚げの存在をすっかり忘れていた・・・!

梗介を押し除けキッチンに戻る。少し揚げすぎているが、食べられなくはなさそうなので、責任を持って自分で食べることにする。


「うまそっ」


いつの間にか後ろからハグをして一緒に唐揚げを覗き込む梗介。


「油飛ぶから危ないよ」

「葵が突き飛ばすから傷ついた。慰めて」

「うっ・・・」


致し方ない、と心を決め後ろを振り返る。

チュッと触れるだけのキスをして、また唐揚げに向き直った。

恥ずかしさで耳まで赤くなる葵の後ろでは、獲物を見つけたようにニヤッと笑う梗介。

真っ赤な葵の耳にキスをすると、葵の体はビクッと反応する。


「梗介・・・危ないから」

「耳、弱いもんな」


耳元で囁かれ、そのままペロッと舐められる。


「っ、待って!ご飯、食べてほしい・・・」

「食べないわけないだろ。でも、葵が目の前にいるのに触れないなんてこと出来ないんだよ」


垂れた耳と尻尾が見えるのは私だけでしょうか・・・。

どさくさに紛れて色んなところにキスしないでほしい。


「じゃあまず、お風呂に入ってきたら?」

「嫌だ」

「じゃあ、座って待ってて」

「嫌だ」


イヤイヤ期ですか?


梗介は抱きしめたまま離そうとせず、子どものように駄々をこねている。


「ご飯にする?お風呂にする?それとも、き・が・え?」


お決まりのセリフを言えたことに内心満足する葵。

言ってみたかったんだよね。


「言ってみたかったの?可愛い。けど選択肢が一個間違ってる」


言ってみたかったのなんでバレた!?


「間違ってないよ」

「葵がいい」

「葵は選択肢にはありません」


どちらも引かない攻防が続き、先に折れのは梗介だった。


「はぁ・・・分かった、風呂入ってくる。その代わり、食べ終わった後、覚悟しとけよ」


あれ?間違えた?

獲物を狩るオオカミのような鋭い目線を残し去っていく梗介に悪寒が走った。


「とっ取り敢えず、唐揚げを揚げよう!」


考えるのを放棄して唐揚げ作りに専念することにした。




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