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「プロポーズ!?葵ちゃんが!?」
「葵ちゃんついにか〜」
「相手はどんな男だ〜?連れてこい!おいちゃんが見極める!」
「あんた父親でもないのにでしゃばるんじゃないよ!」
常連さんもいることで店内は大盛り上がり。
「柚月さん、なんかすみません・・・」
苦笑いを浮かべ戸惑っている楓華。
「こちらこそ変な空気に付き合わせてごめんね」
「赤飯炊くか」
厨房からおじさんが顔を出して変なことを言う。
「おじさんいいから!あの、このことはまだお母さんたちには言わないでほしいの・・・」
「どうしてだい?一番に知らせないとじゃないの!」
「彼が海外にいるから、戻って来てから一緒に報告に行く予定なの。だから、あと2ヶ月くらいは黙っててほしいです!」
実を言うと、梗介がいない状態で知られて、両親の興奮を一人で抑えられる気がしないからだ。葵の両親は梗介信者なのである。
「じゃあ梗介くんが戻るまで黙っていればいいのね?」
「うん。お願いしま・・・ん?」
え?私、相手が梗介だって言ったっけ?頭の中でしか言ってないよね?何でバレてるの・・・?
「梗介・・・?」
「違うの?」
「違わないです・・・」
「うちにもまた二人で食べにいらっしゃい!」
「はい・・・」
脱力するように椅子に座り、魂が体から抜け出ているような感覚に陥る。
「柚月さん、食べましょう」
ニコッと微笑む楓華ちゃんに癒され、いつの間にか運ばれていた定食を食べることにした。
定食屋さんを出て駅まで楓華を送って行く。
「柚月さん、今日はありがとうございました。すごく温かいお店でしたね。私も常連になりそうです!」
「おじさんとおばさん喜ぶと思う。今度の記事のお店とは比較できそう?」
そう。今日の本来の目的はこっちだ。
「はい!すごく参考になりました!書けたらまた意見もらってもいいですか?」
「もちろん。頑張ろうね!」
「それから改めて、ご婚約おめでとうございます!お相手の方に伝えてください。次また柚月さんを泣かせたら、私の重い拳が飛んでいきます、って!」
私の周りにはこんなにも温かい人たちで溢れている。幸せ者だな、と噛み締めた。
「ありがとう。会社での事も、本当に楓華ちゃんには支えられてたんだよ。頼りない先輩だけど楓華ちゃんも何かあったら・・・ううん、何もなくても頼ってね。」
「私は今までもたくさん甘えちゃってますよ!だけど、そう言ってくださるなら、これからもとことん頼らせていただきます!」
霜月駅に着き、楓華と別れる。




