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梗介side
葵から別れの言葉が届いた一週間後、ホテルの一室。
精気を失ったように項垂れる梗介。
ブーッブーッブーッ
胸ポケットのスマホが震える。
葵かと慌ててスマホを取り出すが、相手は真緒だった。いや、真緒なら何か知っているはずだ。
「はい「あんたいい加減にしなさいよ!婚約ってどういうこと?葵は遊びだったとでも抜かすつもり?」
電話に出た瞬間から言葉の嵐で、頭が追いつかない。
婚約・・・?遊び・・・?何の話だ。
「見損なったわ。葵が許しても私が許さな「おいっ待ってくれ!何の話をしてる!婚約って誰が?葵か!?」
「惚けるんじゃないわよ!あんたとどっかの社長の娘が婚約したって、噂にもなってるし、週刊誌でも取り上げられてる!その女が葵に何したか分かってて婚約なんてしたわけ!?」
どっかの社長の娘・・・一人の人間が浮かぶ。
やられた・・・。
「はぁ・・・ここまでされるとは俺も予想外だよ、婚約なんてでっち上げだ。それに、葵に何かしたのか・・・?葵は無事なんだろうな!?」
「でっち上げ?あの女ナメた真似しやがって・・・チッ」
こいつ舌打ちしたぞ・・・。真緒は昔から葵のことになると人が変わる。
「それで、葵は無事なのか?」
「無事なわけないでしょ?」
「っ!?どう言うことだ!何があった!?」
無事ではないと言う言葉に一気に血の気が引いていく。
最悪の事態が脳裏を過り冷や汗が吹き出す。
「生きてはいるわよ・・・でも、心は無事じゃない。あんな顔、見たくなかった・・・」
真緒の重い言葉に葵の泣き顔が浮かぶ。
どうして俺は今、葵のそばにいないのか・・・?
何のために想いを通じ合わせたんだっ!自分自身の不甲斐なさに怒りが込み上げる。
「俺に聞く権利はないのかもしれない・・・だけど、このまま葵を失いたくないんだ。何があったのか教えてくれないか・・・?」
「聞いてどうするの?」
そんなの決まってる。
「葵を傷つけたんだ、然るべき罰は受けてもらう」
目を閉じると葵の笑顔が浮かぶ。待っていてくれ。葵を傷つけたこと、後悔させてやる。
「分かったわ」
そう言って真緒は瑠奈と葵の間で起こったことを説明し始めた。
「葵・・・!」
ガンッ!!
瑠奈のしたことや葵に放った意地汚い言葉の数々に怒りが募り、固く握った拳を壁に打ち付ける。
「あんな女狐と婚約するようなバカじゃなくて安心したわ」
「言っておくが、俺が将来を誓うのは葵だけだ」
「・・・言葉だけなら何とでも言えるわ。行動で証明して」
真緒の言葉に背筋が伸びる。前を見据え胸を張る。
「分かってる。真緒、ありがとう」
「気持ち悪いんだけど。私はまだあんたのこと許してないから。次、葵を泣かせたらその命はないと思いなさい」
「俺のせいで、たくさん泣いたんだな・・・」
罪悪感が身体中を支配して鳥肌が立つ。
「自惚れないで。あんたと別れられた喜びでに決まってるでしょ」
意地の悪いやつだ。その言葉が今の俺にどれだけ深い傷を負わせるのか分かってて言ってやがる・・・。
「勘弁してくれ・・・まじで立ち直れなくなる・・・」
「ふんっ、いい気味ね。葵のことは私が責任を持って守るから、あんたは好きにしたらいいわ」
こいつは俺を煽る天才か?
「真緒にも誰にも譲る気はない。さっさと片付けて迎えに行くよ」
「精々頑張んなさい」
通話を終えると、すぐにまた電話がかかってきた。母からだ。
もう母の耳にも入っているのかと、噂の恐ろしさを目の当たりにする。
「ちょっと梗介!婚約ってどういうこと!?何も聞いてないんですけど!私はてっきり葵ちゃんと・・・あっ・・・」
真緒も母さんも出た途端に話し始めるのは何なんだ。
「母さん落ち着いて。婚約の話はデマだから周りの人にも否定しといて。それから、葵が今どうしてるか分かる?」
真緒は絶対に教えてくれないが母さんなら、とダメ元で聞いてみる。
「やっぱり葵ちゃんとよね!うんうん。そうなると思ってたのよ〜」
「母さん、自分の世界に入るのは後にして。葵は?」
「ん〜最近見かけないのよね・・・」
嫌な予感がして背筋が凍る。
「葵を見かけたら、婚約の件は力強く否定しといて」
「任せて!梗介・・・危ないことはしないでね・・・?」
母にとってはいつまで経っても俺は子供なんだろうな。
「大丈夫だよ。正攻法で取り戻してみせる」
葵を早く、この腕で抱きしめたい。




