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幼馴染のち恋模様  作者: 琴乃葉つむぎ
ちらつく陰

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6月終わりの蒸し蒸しした帰り道。


これまでに何度か調整会議が行われた。ベンチ案は保留のまま、室内の滞留スペースも縮小という形で落ち着き、工事が始まった。

梗介も私も納得できてはいなかったが、この状況をひっくり返せる何かが見つからなかった。


電車に揺られながら頭の中はプロジェクトのことでいっぱいだ。

霜月駅に着き、工事中のテナントが目につく。

ちょっと聞き込みしていこうかな・・・。


「よしっ!」


メモ帳とペンを鞄から取り出し、気合いを入れる。

まずは駅前。仕事帰りの方や学生、子連れママさんなどに話を聞いて回る。聞き込みに集中していると商店街まで来ていた。

この前行った定食屋さんやいつも行くお肉屋さんにもお邪魔した。


お肉屋さんで店頭に立っているおばさんやお客さんも巻き込んで話をしていると、後ろから声がかけられた。


「葵ちゃん?」

「菫さん!」


菫さんは梗介のお母さんでとても綺麗な人だ。綺麗な容姿とは裏腹に快活で明るい方。菫さん夫婦には小さい頃から可愛がってもらっている。


「お仕事してるの?」

「うん。霜月駅前開発プロジェクトは知ってる?そのことで住民の方に話を聞いてて」

「梗介から少し聞いてるわ。葵ちゃんも携わっているのね。こんな時間までお仕事して、お肌に悪いわよ!」


確かに、美肌の菫さんの言葉には説得力がある・・・。


「気をつけます・・・」

「私たちも何か力になれる?」

「もちろん!今度霜月駅横にある空きテナントを改装して、駅直結の憩いの場所を作ろうとしています。」


奥様方から「へぇ〜」と反応が返ってくる。


「その場所にカフェも併設するのですが、注文しなくても利用できるフリースペースってあった方がいいと思いますか?外にベンチを置く案も出ているのですが・・・」


どんな反応が返ってくるのか不安になりながら聞いてみる。


「いいわね〜」

「注文しなくても利用できるのはありがたい!」

「私この間の雨の日に駅前で待ち合わせしたんだけど相手が遅れちゃって!でもあの辺って時間潰せる場所ないじゃない?だから雨の日なんかは特に嬉しいわね〜」

「ベンチも素敵な案じゃない!中に入るほどじゃないけどちょっと時間潰したりも出来るだろうし、赤ちゃん連れてたりすると外の方が気が楽だったりするわよね〜」


次々に意見が飛び出して、メモを取るのに必死になる。だけど、先ほどから聞いて回っていると、こんな風に肯定的な反応が返ってくることがほとんどで嬉しくなった。

梗介にも知らせたい!


「真剣に考えてくださってありがとうございます!貴重な意見ばかりでとても参考になりました。また聞いて回るかもしれないのでその時はよろしくお願いします!」


ガバッと頭を下げて笑顔を向ける。


「葵ちゃんの真剣さが伝わってきたからよ。仕事はもうこの辺にして、うちで一緒に夕飯食べない?」


菫さんが夕飯に誘ってくれた。


「ありがとう。お誘いは嬉しいんだけど、今日聞いたことまとめちゃいたくて」

「そう・・・残念だけど今日は諦めるわ。その代わり、今度梗介と一緒に遊びに来て。あの子日本に戻ってからも仕事ばかりで全然帰って来てくれないのよぉ。今度引きずってでも連れてきてくれる?」


梗介ってばこんな綺麗なお母さんがいるのに帰らないなんてなんて勿体無いことをしているんだ。


「任せて!」



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