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幼馴染のち恋模様  作者: 琴乃葉つむぎ
霜月の街

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テナントの中に入ると梗介が図案と壁を見つめ難しい顔をしていた。葵が入ってきたことにも気がついていないようだ。


「お疲れ様」


葵が声をかけると梗介の肩がビクッと震える。


「っ!葵か・・・ごめん集中してた」

「何見てたの?」


もう少しあの真剣な横顔を見ていたかったような気も、しなくもない・・・。


「あぁ、ここ。駅と直結させる予定なんだけど、結構基準ギリギリなんだよな・・・」

「でも、ここ以外だと結構遠回りになっちゃうよね?」

「そうなんだよ。だからどうこじ開けるか・・・」


また難しい顔で頭を悩ませる梗介。一旦保留にしたのか葵に向き直る。


「今日は雨の日のこの場所の様子を確認したくて来たんだ。葵もなんか思ったことあったら教えて」

「分かった」

「思ったより老朽化がひどいから残せるところ無駄にしないようにしないとな」


梗介はこのプロジェクトに誰よりも熱を注いでくれている。その想いをこの街の人に届けたい。


「ここ、待ち合わせに使われそうだよね」


なんとなく思ったことを口にしてみる。


「待ち合わせ・・・」

「うん。駅前で待ち合わせもできるけど、微妙に空いた時間を埋めるのに丁度いい場所だと思う」


どんどんイメージが湧いてきて専門的な知識はないので好きに言葉を並べていく。


「バス停も近いし、外にベンチ置くのとかどうかな?緊張せずに気軽に誰でも休めるように。駅前だと人の行き来が多いけど、少しズレたここならラッシュ時でも落ち着けると思うんだよね」

「ベンチいいな。室内を充実させるのもいいけど、本来のコンセプトは”注文しなくても居心地のいい空間”だからな。カフェ併設とはいえ、主役はオープンスペースだ。雨の日でも使えるようにベンチ置く分を考えて屋根は・・・」


私の想像を笑わずに真剣に考えてくれる梗介に心が温かくなる。



一通り確認し終えた頃には日が沈んでいた。


「やば、こんな時間になってた。俺これから事務所戻んなきゃなんだ」

「そうなの?ちゃんと寝てる?」


まだ働く気なのかと心配になる。


「葵がいないから眠れない」


冗談めかしていたずらに笑う。


「寝れてるなら問題ないね」

「寝れてないって言ったのに・・・この仕事落ち着いたらゆっくり時間取るから」


壊れ物を扱うように優しく葵の頬を撫でる。


「それは嬉しいけど、まずはちゃんと休んでね。倒れたりしたら洒落にならないから」

「うん、分かった。じゃあちょっと充電させて」


そう言って葵を抱きしめる。


「はぁ・・・葵が足りない」

「私の抱き枕でも作る?」


笑って冗談をこぼすと「それいいな」と閃いた、みたいな顔をする梗介。


「冗談です」

「ははっ、冗談にはさせないけど?」

「怖いこと言わないで・・・」


こいつまじか・・・と引いた顔を向ける。


「嘘。本物の葵じゃなきゃ意味ないから」


久しぶりに触れる唇。心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかというほど鼓動する。


「もっとしたいとこだけど、葵のこと送ってかなきゃな」


おでこにも口付けて手を繋ぐ。


「仕事あるんでしょ?一人で帰れるよ」

「だめ。雨降ってるし夜道を一人で歩かせるわけないだろ」

「過保護・・・」

「なんか言ったか?」

「ふふっ・・・ありがとう」

「どういたしまして。行くぞ」


梗介は葵を家まで送ると事務所へ戻って行った。



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