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幼馴染のち恋模様  作者: 琴乃葉つむぎ
変わる関係

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梗介side




「ふぅーーー」


ソファーに深く腰掛け息を吐き出す。


止められなかった・・・。

葵の体温や匂い、とろけるような表情に途中から理性が弾け飛んだ。

なんであんなに可愛いんだ・・・。葵が止めなかったら危なかった。


さっきのキスを思い出して悶える。


「ゴホンッ」


誰もいないが咳払いして姿勢を正す。

葵の家からずっと我慢していた。ゆっくり距離を縮めるはずだったのに・・・。車に乗り込むときも、乗ってからも葵はこっちの気も知らずに爆弾を落としていく。


「格好いいなんて、葵から初めて言われたな・・・」


葵が恥ずかしそうに告げる姿が思い出され口元が緩む。まさか告白がうまくいくとは思っていなかったのもあって気持ちが昂っていた。葵も俺のことが好きだったなんて・・・。


今日言うつもりはなかった。だけど、頑なに他人モードを解除しない葵にムキになった。連絡先も名前も思ったよりすんなり受け止められ、もっと困らせたくなって・・・。

あそこまで泣かれたのは応えたけど・・・。葵が泣く姿はこんなにも胸が締め付けられるのかと、泣かせたことを棚に上げて苦しくなった。

ただ、彼氏がいたことあるって言葉はできれば聞きたくなかった・・・。人から聞くより攻撃力が絶大で心が抉られた。自業自得か・・・。


指輪の件は焦ったな。事務所で再会する日は外していくつもりだったのに、前日の夜からトラブル対応に見舞われ外し損ねた。そのせいで出鼻をくじかれ案の定、葵は誤解して俺に冷たく当たった。あの軽蔑が滲む冷たい目線は二度と向けられたくないものだ・・・。誤解が解けて心底ほっとしている。

うんうんと頷いているとリビングの扉が遠慮がちに開かれた。


「梗介?お風呂ありがとう」


風呂上がりのほかほかした状態ですっぴん&部屋着。何年も一番近くで見てきたはずなのに、大人になった葵とでは破壊力が桁違いだ。抱きしめたい衝動に駆られるがグッと堪える。

さっき失敗したばかりだろう!落ち着け!

直視したら確実に襲う。背景に焦点をずらして葵の姿をぼかす。


「何か飲むか?・・・コーヒー、紅茶、水・・・くらいしかないけど」

「じゃあ、お言葉に甘えて紅茶もらおうかな」


キッチンに移動して貰い物の紅茶を出し、ケトルで湯を沸かせる。


「お湯沸いたら入れて飲んでて、俺も風呂入ってくる」

「うん。ありがとう」


リビングを出てそっと扉を閉めると風呂場へ駆け込んだ。

頭を冷やそう・・・。



風呂から上がり深呼吸してからリビングの扉を開ける。

ソファーに座る葵がこちらに振り返り笑顔を向ける。


「梗介!この紅茶すごく美味しいね!私紅茶にハマってるんだけど、これは今まで飲んだ中で一番美味しい!」


無邪気に紅茶の美味しさを語る葵が可愛くて自然と頭を撫でていた。


「へっ?」

「あ、悪い・・・つい・・・」

「ううん・・・嬉しいよ?」


葵は照れたようにはにかむ。

なんだこの尊い生き物は・・・?


キッチンに方向転換して水を喉に流し込む。もう一度深呼吸。

ソファーに戻り葵の隣に腰掛ける。不意に手が出ないよう拳は固く握りしめたまま。


「葵はさ・・・俺に触れられるの、嫌じゃない?」

「どうして?嫌じゃないよ?」


迷いなく返ってきた言葉に安堵する。


「幼馴染でも?」

「?・・・どう言う意味?」

「幼馴染だったカップルって、その・・・家族的な時間が長い分、触れられるのに違和感を覚える人もいるらしくて・・・」


ある雑誌の記事を目にしてから不安に思っていたことを打ち明ける。


「そうなの?私は全然ないよ?さっき頭撫でてくれたのも、手を繋いでくれるのも、その、キ、キス・・・も・・・。梗介だもん・・・梗介がしてくれることはなんだって嬉しいよ?」


顔を真っ赤に染めながらも一生懸命に伝えてくれる葵に愛しさが込み上げる。それならば、とそっと葵を抱きしめた。


「葵・・・好きだよ」


これからは、誤魔化さずにいくらでも伝えられる・・・。


「ふふっ、うん。私も好き」


葵の手も背中に回り、なんとも言えない幸福感に包まれる。

体を離すと葵の頬や額、鼻の先に口付ける。


「ふっ、くすぐったい」


最後に唇にも・・・。


「梗介ってキス魔だよね?」

「え?」

「今日だけで何回されたか分かんない」


クスクス笑いながら衝撃的なことを告げられる。

え?俺キス魔なの?知らなかった・・・。

葵と再会してから知らなかった自分がたくさん出てくる。


「じゃあ覚悟した方がいいな。容赦しないから」

「えっ!お、お手柔らかに・・・」

「ふっ、善処しよう」


今は、葵と思いが通じ合えたことだけで心が満たされる。


「明日も仕事だし、もう寝よう」

「私ソファーでいいよ」

「なんでそうなる」

「だって、今まで一人で寝てたのに私がいたら梗介休まらないでしょ?」


葵なりの気遣いなのだと理解はする。が、納得はしない。


「だからこそだろ。俺はもう一ミリも離れていたくないんだ」


そう言って葵を抱き上げた。所謂お姫様抱っこで。


「ううぇあっ!ちょっと!降ろしてっ」


寝室まで運んでベッドの上にそっと降ろす。布団をかけて自分も反対側に入り込む。


「眠れなくて明日の朝文句言っても聞かないからね」


ムスッと唇を尖らせている葵にキスをして抱きしめる。


「よく眠れそうだ」

「もうっ」


抱きしめたまま葵の丸みを帯びたおでこに口付ける。


「おやすみ、葵」

「うん、おやすみなさい」



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