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的外れな梗介の言葉にだんだんおかしくなってきて声が漏れる。
「ふふっ・・・あはは!」
「何がおかしいんだよ・・・」
突然笑い始めた葵に不満げに漏らす梗介。
「だっ、だって、ふふっ・・・そんなに必死にならなくてもっ・・・あはは!」
笑いすぎて目尻に涙がたまる。指先で拭いながら呼吸を整えていると、梗介の真剣な声が届いた。
「必死にもなる。誤解されたままじゃ進めないからな」
「・・・?」
なんの話だ?と首を傾げる。
「・・・今、付き合ってる人いる?」
唐突になんだと眉間に皺を寄せ訝しげな表情で返事をする。
「いないけど・・・」
梗介は下を向いて安堵のため息を吐き、葵に向き直る。
「じゃあまず連絡先。ないと不便なんだよ」
「それはいいけど、さっきの質問となんの関係があるの?」
「葵が言ったんだろ、相手の方はよく思わないと思います、って。」
あぁなるほど、と納得してスマホを手渡す。慣れたように操作して番号とIDを交換していた。
終わったのかスマホが手元に戻ってくる。
「次、名前呼んで」
「次?名前?」
この男は何がしたいんだとさらに?が浮かぶ。
「まずって言ったろ、してほしいことまだあるから」
「なんで私、してあげる前提なの?許可した覚えないんですけど?」
「別に難しいこと言ってないだろ」
それはそうだけど・・・と丸め込まれそうになる。
「そうじゃなくて!私だけ損してるじゃん」
「葵のしてほしいことも叶えるよ、いくらでも」
「いくらでも?随分太っ腹ですね・・・」
怪獣されそうになっている自分が情けない・・・。
「ほら、呼んで?」
優しく促されるが躊躇ってしまう。改めて名前を呼べと言われるとなんだか恥ずかしい・・・。
長い沈黙を開けた後、意を決して呼んでみる。
「・・・・・・・・・・梗介?」
恥ずかしくて俯いていた顔をあげると、あどけなさの残る笑顔。
「うん」
心の底から喜びを表現するような、そんな笑顔に胸が高鳴る。
名前呼んだだけなのに・・・。




