8
次の日は森には行かなかった。
ばあちゃんは何も言わない。
俺も何も言わなかった。
その次の日のことだった。
居間にいたばあちゃんが突然言った。
「来るぞ!」
その時、窓ガラスを破ってなにか飛び込んできた。
それはあの生きた人形だった。
俺は慌てて猟銃を取りに動き、ばあちゃんは近くの台所に逃げた。
猟銃を手に取り戻ると、ばあちゃんと人形の少女が向き合っていた。
ばあちゃんの手にはフライパンが握られていた。
俺は猟銃を構えようとした。
すると生きた人形がふらりと宙に浮かんだ。
そしてばあちゃんの顔の前に来た。
ばあちゃんがフライパンを思いっきり人形めがけて振り下ろした。
音とともにフライパンが人形に当たった。
しかし人形少女はぴくりともしなかった。
年老いた女性の力とはいえ、力任せに振り下ろされたフライパンが直撃しても、微動だにしないのだ。
そしてバキッ、という音が響いた。
人形少女が小さな手でフライパンに抱き着き、フライパンを二つに折ったのだ。
すごい力だ。
あの力で抱き着かれたら、生身の人間などひとたまりもないだろう。
ばあちゃんがフライパンを落とした。
人形の少女はばあちゃんの顔の前に浮いたままだ。
「撃てえっ!」
ばあちゃんが叫んだ。
しかし小さな人形の先にはばあちゃんの顔があるのだ。
撃てるわけがない。
「早く撃たんか!」
俺は撃てなかった。




