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貞操逆転世界で、俺だけが『抵抗』できる ~魔力ゼロの種馬扱いから始まる、最強神官長(ヤンデレ)との支配関係逆転生活~  作者: 秋葉原うさぎ


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20/23

第20話:白き処刑人と、魔王への『死刑宣告』

 お待たせしました!

 最強の刺客「異端審問官」の襲来。

 しかし、今回は真っ向勝負ではありません。

 圧倒的な兵力差、そして追い詰められるスリル。

 湊とアテナ、手錠で繋がれた(精神的に)二人の、命がけの逃避行が始まります!

 世界が、ざわついていた。

 あの日、学園の上空に現れた「魔王の紋章」。

 それは、長きにわたる「女神の支配」に終わりを告げる、不吉な狼煙のろしだった。


 そして、その中心にいる俺――みなとの生活もまた、劇変していた。


「……見ろよ、あいつだ」

「魔王の器……。目が合っただけで妊娠しちゃうって噂だぜ」

「キャーッ! ミナト様ー! 私を魔族にしてくださいー!」


 廊下を歩くだけで、モーセの海割りのように道ができる。

 以前のような「獲物を見る目」ではない。

 そこにあるのは、理解不能な存在に対する「畏怖」と、禁断の果実を求めるような「狂信」。


「……歩きにくい」


 俺はため息をついた。

 隣には、当然のようにアテナがぴったりと張り付いている。

 彼女は周囲に『絶対零度の結界(近づくと凍死します)』を展開しながら、上機嫌で俺の腕を抱きしめていた。


「気にすることないわ、ミナト。雑草たちが騒いでいるだけよ」


「いや、アテナ様。貴女のその『魔王の妻(自称)』オーラが一番の原因だと思うんだが」


「あら、妻じゃなくて『飼い主』よ? ……ふふ、でも『魔王の妻』も悪くない響きね。世界を敵に回して、二人だけの楽園を作る……燃えるわ」


 アテナの瞳がとろんと濁る。

 ダメだ、この神官長。魔王騒ぎを機に、独占欲がさらに悪化している。

 「世界中が敵になっても、私だけが味方」というシチュエーションに酔いしれているのだ。


 そんなカオスな登校風景の中、突如として空気が変わった。


 キィィィィィン……。


 耳鳴りのような高音が響く。

 空から、無数の白い花びらが舞い落ちてきた。

 そして、眩い光と共に、学園の中庭に巨大な魔法陣が出現する。


「……ッ、この魔力波長は……!」


 アテナの表情が、一瞬で険しいものに変わる。

 彼女は俺を背に庇い、臨戦態勢をとった。


「来なさい、『アイギスの盾』!」


 アテナの周囲に、光の障壁が展開される。

 それと同時に、光の中から一人の「女」が姿を現した。


 純白の修道服。

 背中まで伸びた、プラチナブロンドの髪。

 そして、宝石のように美しい、しかし冷酷な光を宿した金色の瞳。

 手には、身の丈を超える巨大な「戦鎌サイズ」が握られている。


 聖女。

 誰もがそう呼ぶであろう、神々しい美貌。

 だが、その口元には、嗜虐的サディスティックな笑みが浮かんでいた。


「ごきげんよう、汚らわしい豚ども」


 鈴を転がすような美声で、彼女は最悪の挨拶をした。


「……セラフィナ。どうして貴女がここに?」


 アテナが低い声で問う。

 セラフィナと呼ばれた少女は、鎌をくるりと回し、優雅に一礼した。


「あら、怖い顔。久しぶりの再会ですのに、アテナお姉様」


「姉と呼ぶな。……中央神殿の『異端審問官』が、何の用?」


 異端審問官。

 その言葉に、周囲の生徒たちが青ざめて後ずさる。

 女神の教えに背く者を「浄化(処刑)」する、神殿の裏の実行部隊。その筆頭が、彼女らしい。


「用件は決まっていますわ」


 セラフィナの金色の瞳が、アテナの背後にいる俺を捉えた。

 瞬間。

 背筋に冷たいものが走った。

 殺気ではない。「捕食」の目だ。


「そこにいる、魔王の種……ミナト・カザマの『回収』と『処分』。……女神イシュタル様の勅命ですわ」


「断るわ」


 アテナが即答する。

 彼女の全身から、蒼い炎が噴き出した。


「ミナトは私のものよ。指一本触れさせない」


「ふふ、相変わらず独占欲がお強いこと。……でも、今回は私の勝ちですわよ?」


 セラフィナが指を鳴らす。

 すると、中庭を取り囲むように、数百人の武装した神殿騎士(全員女性)が現れた。

 完全包囲。


「学園長も、理事会も承認済みです。……さあ、大人しくその『汚物』を渡しなさい。私が責任を持って、地下牢でたっぷりと……ひぃ、ふぅ……なぶり殺しに(・・・・・・)して差し上げますわ」


 セラフィナが頬を紅潮させ、荒い息を吐く。

 ヤバイ。

 こいつ、ドSとかいうレベルじゃない。「痛み」と「絶望」を愛する、真正のサディストだ。


(……俺の周り、まともな女がいねぇのかよ!)


 俺は頭を抱えたくなったが、状況は最悪だ。

 アテナ一人ならともかく、この数を相手にするのは分が悪い。しかも、俺を庇いながらでは、アテナの実力も出しきれないだろう。


 俺は覚悟を決め、アテナの背中から前に出た。


「ミナト!?」


「……俺に用があるんだろ、聖女様」


 俺はセラフィナを真っ直ぐに見据えた。

 彼女の巨大な鎌を見ても、不思議と恐怖はなかった。

 むしろ、腹の底で「王の力」が、敵を排除しろと疼いている。


「あら。飼い主の影に隠れているだけのチワワかと思いましたけど……意外といい目をしていますのね」


 セラフィナが興味深そうに俺を見る。


「でも、無駄ですわ。魔力のない男が、私に勝てる道理がありません」


「やってみなきゃわからねぇだろ」


「生意気な口……。いいでしょう。その舌、切り取って標本にしてあげますわ!」


 セラフィナが跳んだ。

 速い。

 純白の閃光となり、巨大な鎌が俺の首を薙ぎ払いにくる。


 キィィィンッ!!


 金属音が響く。

 俺の首が飛ぶ――その寸前で、鎌の刃が止まっていた。

 止めたのは、アテナの魔法ではない。

 俺の「左手」だ。


「……は?」


 セラフィナが目を見開く。

 俺は、彼女が振り下ろした鎌の柄を、素手でガシリと掴んでいた。

 魔力強化された鋼鉄の武器を、生身の片手で。


「……嘘、でしょう? 魔法無効化アンチ・マジックだけじゃなく……身体強化まで?」


「お前らが『か弱い』って決めつけてるだけだ」


 俺は掴んだ柄を、力任せに握り潰した。

 ミシミシッ! という音と共に、鋼鉄の柄がひしゃげる。


「なっ……私の『断罪のパニッシャー』が!?」


「悪いな。……俺は、誰かに『処分』されるつもりはない。俺の運命は、俺が決める」


 俺は柄を掴んだまま、セラフィナを自分の方へ引き寄せた。

 バランスを崩した彼女の顔が、目の前に来る。


「――っ!?」


 至近距離。

 俺の瞳に宿る金色の光(王の覇気)と、彼女の金色の瞳が交差する。


「お前が神の使いなら、伝えておけ。……『魔王』は、理不尽な神になんか従わないってな」


 ドクンッ。


 セラフィナの心臓が、大きく跳ねた。

 恐怖?

 いや、違う。

 彼女の頬が、みるみるうちに赤く染まっていく。

 加虐趣味サドの裏側に潜んでいた、強烈な被虐趣味マゾの本能が、俺の「反逆」に反応してしまったのだ。


「あ……ぁ……」


 セラフィナの手から力が抜ける。

 彼女はその場にへたり込み、濡れた瞳で俺を見上げた。


「素敵……。こんなに乱暴で、傲慢なオス……初めて……」


 彼女は身悶えし、自分の太ももを爪で掻きむしる。


「ゾクゾクしますわ……! ああ、いけません、私、聖職者ですのに……! こんな汚らわしい男に、踏まれたいと思ってしまうなんて……!」


 ……またか。

 この世界の強者は、どいつもこいつも「M」の素質があるのか?

 いや、俺の「王の力」が、彼女たちの本能をバグらせているのか。


「……セラフィナ。貴女、何発情してるの?」


 アテナが心底軽蔑したような(そして嫉妬に狂った)声で割り込む。


「ええい、うるさいですわ! これは……これは『聖なる試練』です!」


 セラフィナは真っ赤な顔で立ち上がり、壊れた鎌を構え直した。


「認めますわ、ミナト・カザマ。貴方はただのゴミではありません。……女神の敵にふさわしい、極上の『獲物』です!」


 彼女はスカートを翻し、騎士団に撤退を命じた。


「今日のところは引いてあげます。……ですが、逃げられると思わないでくださいね? トーナメント……私も参加させていただきますわ!」


「はあ!?」


「リングの上で、貴方を徹底的に屈服させ、その傲慢な瞳を涙で濡らしてあげるのが……私の新しい『使命』になりましたから!」


 セラフィナは恍惚とした表情で俺に投げキッス(殺気付き)を送ると、光の粒子となって消え失せた。


 後に残されたのは、静まり返った中庭と、頭を抱える俺。

 そして。


「……ミ・ナ・ト?」


 背後から、般若のような形相のアテナが迫ってくる。


「あの泥棒猫に、何を吹き込んだの? ……また『誘惑』したの?」


「してない! 襲われたから防いだだけだ!」


「言い訳無用よ。……敵対組織の女までたぶらかすなんて、魔王のフェロモンもいい加減にしなさい」


 アテナの手から、お仕置き用の拘束魔法が放たれる。


「今日は徹底的に『尋問』よ。……地下牢よりも怖い、私の部屋でね」


 こうして、魔王覚醒編の幕開けは、新たなライバル(ドM聖女)の出現と、アテナによる理不尽な監禁イベントでスタートしたのだった。

 ハラハラの逃走劇、いかがでしたでしょうか。

 最強のアテナ様でも、物量と「守る対象」がいる状況では分が悪かったようです。

 しかし、お姫様抱っこでの高速移動……湊くん、完全に人外の領域に入っています。


 次回、「第21話:魔王の器、初めての『夜の街』へ」。

 逃げ込んだ先は、男にとってさらに危険な(?)歓楽街でした。

 新たな出会いと、情報の鍵を握る「猫」が登場します!


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