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よくわかる日本の歴史 ~ただし、原始時代から日本にのみダンジョンがあったものとする~【第三部完】  作者: Mr.ティン
間章4 ~時代の間のこぼれ話~

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地下世界伝説

大遅刻ですが、何とか更新です。

【北米 後のイエローストーン国立公園付近 とある勇気ある猟師】


大地が揺れた。

それは、長老たちが語る昔の大きな揺れには及ばぬものであったが、それでも俺達トゥクデカの民を恐れさせるには十分なものだった。

トゥクデカとは、「羊を食べる者」を意味する。

俺達の部族は、山羊に似た動物を狩り、その肉を食べて生きてきた。この土地は厳しいが、俺達の祖先から受け継いだ大切な場所だ。


揺れが収まった後、長老たちは俺達若い猟師に命じた。

地滑りが起きていないか、狩場に異変はないか、確かめてこいと。

この地では地揺れは稀に起きる。

大きい揺れの際には、地が割れ、崖さえできる事さえある。

だから、長老たちが言うように、今の揺れで何が起きたのか、確かめねばならない。


俺は、仲間の猟師たちと共に、揺れが特に激しかったという場所へと向かった。

歩きながら、俺は周囲を観察する。

木々は折れ、岩は転がり、確かに大地は荒れていた。

だが、それは想定の範囲内だ。問題は、狩場がどうなっているかだった。


やがて、俺達は異変を見つけた。

地にできた、深い裂け目だ。

大地が割れ、そこに暗い口を開けている。

人が入れそうな幅だった。

仲間の一人が、石を投げ込んでみた。

石は、長い間音を立てずに落ち続け、やがて遠くで何かにぶつかる音がした。

深い。とても深い。


「……風の音が聞こえるな?」

「確かに。何処かに繋がっているのか?」


仲間の言葉に、俺は耳を澄ました。

確かに、微かに風音が聞こえる。

裂け目の奥から、風が吹いてきているのだ。

それは、ただの穴ではないということを意味していた。

どこかに、繋がっているのだ。

だが、何処に繋がっているというのか?


「地下には水が流れているという。もしやその流れか?」

「入ってみるか?」


仲間の一人が、そう言った。

もし水の流れを見つけたなら、狩りの際に使えるかもしれない。

だが、他の者は首を振った。

無理もない。

こんな裂け目、危険すぎる。当たり前だ。

だが、俺は……俺は、好奇心に抗えなかった。

狩人として、未知を恐れていては生きていけない。

俺は、松明を手に取った。

先に裂け目の中に入れてみる。

火が消える様子はない。風の音があるからか、空気は澄んでいるようだ。


「俺が、入ってみる」

「ほ、本気か?」

「確かめなければ、ならんだろう」


仲間たちは反対したが、俺は聞かなかった。

慎重に、裂け目に足を踏み入れる。

岩肌は荒く、足場は不安定だが、進めないほどではない。

松明の明かりを頼りに、俺は奥へと進んだ。

裂け目は直ぐに、思いのほか深い洞窟へと続いていた。

湿った空気が、肌に纏わりつく。

足元には、水が流れていた。

やはり、地下水だろうか。


「確かめたかいがあった」


入ってすぐに水があるのなら、水場に出来そうだ。

だが、この水は何処から来て、何処へ流れているのか。


「……こっちから、風を感じるな」


俺は、風音に導かれるように進んだ。

風がある、ということは、空気の流れがあるということだ。

どこかに、出口があるのだ。

あるいは、広い空間が……。


洞窟は、次第に広くなっていく。

そして、俺は気づいた。

前方が、明るい。松明の光ではない。

別の光だ。

太陽の光のような、明るさがある。


(何だ……?)


だが、それはおかしい。俺は、ひたすらに下っていた。

方角も凡そ判る。

こんな方向に、谷も崖も無かったはずだ。


(この光は一体……?)


訝しみながら、俺は進む。

そして、洞窟の終わりの先で、俺は見た。

そこには、見たことのない世界が広がっていた。

森だ。森がある。

だが、俺が知る森とは違う。

木々の種類が、全く異なる。

葉の形も、幹の太さも、見たことがない。

そして、湖がある。広大な湖が、森の中に静かに佇んでいる。

さらに、空がある。だが、それは本当の空ではないような気がした。

何か、違和感がある。高さが、おかしい。

まるで、大きな洞窟の天井のような……。


(ここは、一体……?)


俺は、恐怖と興奮が入り混じった気持ちで、先にある森を眺めた。

うっすらとした予感から、洞窟から出ずに、獲物を観察するように、息を潜めて。

動物の気配があった。

だが、その鳴き声も、足音も、俺が知るものとは違う。

やがて、俺は見てしまった。

巨大な牛のような生き物が、森から現れるのを。

だが、その大きさは尋常ではない。

更に恐ろしいのは、天を突くような巨木を、突進で倒している事だ。

そして、倒れた木の葉を、むしゃむしゃと食べている。

角は、俺の背よりも長く、太い。

その巨体が、一歩踏み出すたびに、地面が揺れている。


(何だ、あれは……!?)


俺は、息を殺した。

あんなものに見つかったら、どうなる事か。

だが、まだ終わりではなかった。


ギョエーーーーー!!!


異様な鳴き声に驚き、咄嗟に空を見上げると、巨大な烏が飛んでいた。

いや、ただの烏ではない。

烏に似た何かだ。

その翼の幅は、人の背丈の何倍もある。

人さえ掴んで飛べそうな、恐ろしい大きさだ。

その烏が、森の中を旋回している。

獲物を探しているのだろうか?


(も、もしや、せ、精霊の住まう地か!?)


俺は、恐ろしくなった。

ここは、人が来るべき場所ではない。

禁忌の地だ。

俺は、踵を返した。

何者にも気取られぬように、だが必死に急いで。

洞窟を抜け、裂け目を這い上がり、仲間たちの元へとようやく戻った時、俺は湧き上がる震えでどうにもならなくなっていた。


「な、何があった!?」

「どうしたんだ、お前!?」


俺の様子に驚いた仲間が尋ねてくる。

俺は、息を切らしながら、辛うじて答えた。


「……あそこは、入ってはいけない。恐ろしいものがいる」


俺は、見たものを語った。

仲間たちは、信じられないという顔をした。

だが、俺の顔を見て、嘘ではないと悟ったようだ。

俺達は、村に戻り、長老たちに報告した。

長老たちは、深刻な顔で頷いた。


「あの裂け目は、封じねばならぬ。そして、あの場所のことは、語り継がねばならぬ。禁忌の地として」


以降、トゥクデカ部族の者達は、あの裂け目を禁忌の地として扱うようになった。

近づく者はいなくなり、やがて、その存在さえも忘れられていくのかもしれない。

だが俺は、あの奇妙な世界のことを、忘れられなかった。

思い返すたびに想うのだ。

あの世界は恐ろしいもので溢れていたが、同時に美しかったのだと。



【チベット とある修行僧】


チベットの高地。

そこでは、修行僧たちが日々、精神を研ぎ澄ませていた。

そんなある日、地震が起きた。

それは、この地では珍しいことではない。

だが、その地震は、一つの変化をもたらした。


僧の一人が、瞑想の場へと向かう途中、新たな裂け目を発見したのだ。

岩壁が割れ、そこに暗い穴が開いている。

僧は、好奇心に駆られた。

いや、好奇心というよりは、修行の一環として、未知を探求する義務を感じたのかもしれない。


裂け目に入った僧は、そこが深い洞窟へと続いていることを知った。

だが、不思議なことに、進むにつれて明るくなっていく。

その不思議さに戸惑いを覚えるも、僧は進み、やがて、洞窟を抜ける。

するとそこには、広大な空間が広がっていた。

厚い雪に覆われた大地。

だが、それは地上の雪景色とは違う。

そもそも、歩いた距離を考えれば、ここは山の中の筈。

さらに、空の色が違う。

高地のこの地の空は、深い。

だというのに、低地の空の色を映すこの空は、僧に言い知れない不安をもたらした。


そして、僧は見たのだ。

人型の影を。

しかしそれは、明らかに人では無かった。

全身を白く長い毛に覆われた、何か。

だが、その大きさは尋常ではない。

人の何倍もある。

その人型の影が、雪の中を歩いている。

僧は、恐れを感じた。

これは、尋常な生き物ではない。

修行僧といえども、命を危険に晒す必要はない。

僧は、静かに洞窟へと戻り、仲間たちに報告した。


やがて、その話は広まった。

地底に、別の世界がある。

古から伝えられた、アガルタ、あるいはシャンバラと呼ばれる理想郷が、実在するのではないか。

そのような噂が、囁かれるようになった。

アガルタとは、地底世界の伝説であり、そこには、高度な文明が存在すると言われている。

シャンバラは、仏教における理想郷であり、悟りを開いた者だけが到達できる場所とされている。

だが、それが実在するとは、誰も思っていなかった。

しかし、今、その証拠が現れたのだ。


他の地域でも、同様の報告が相次いだ。

アンデス山脈の近くでは、地震によって開いた穴の中で、巨大な昆虫のような生き物が目撃された。

アフリカの火山地帯では、地割れの底に、緑の森が広がっているのが見えたという。

世界各地で、地底世界の存在が囁かれるようになっていたのだ。



【魔力の流れの中 イザナギ】


我は、静かに海底の魔穴核岩網を見渡していた。

魔力の流れは安定している。

モンスターたちの配置も、問題ない。

全てが、順調に回っていた。

傍らには、ナミがいた。

我の妻であり、共にこの管理の任を担う者だ。

彼女の穏やかな表情を見ると、いつも心が落ち着く。

生前の過ちを思えば、今こうして二人で共に働くこの時間は、我にとって大切なものだった。

我は、静かに呼びかけた。


「ナミ」

「はい、貴方様」


ナミが、優しく応える。

その声には、いつもの温かさがあった。


「海底の魔穴核岩網は、問題ない。内陸部の火山も、順調だ」


我は、確認した結果を報告した。

アキト様が現世に行かれている間、この留守を預かるのが、我らの役目だった。

海底の魔穴核岩網の管理。

そして、内陸部の火山の地下に、壷中天の術で生み出した空間の管理。

それらは、魔力を消費させ、この世の均衡を保つために不可欠なものだった。


「それは良かったですわ」


ナミが、安堵したように微笑む。

だが、我らは常時監視しているわけではなかった。

いや、監視する必要があるとは、考えていなかったのだ。

地下空間は、完全に隔絶されている。

そう、思い込んでいたのだ。


まさか、地震などによって地上に繋がることがあるなどとは、想定もしていなかったのだ。


地下空間は、壷中天の術によって生み出された別天地であり、現実の空間に重なるように存在しているが、通常は決して交わることはない。

だが、自然の力は、時に我らの予想を超える。

壷中天の術の空間が設置されたのは、何れも火山の付近。

そこは地震も多く、それらの地震によって地割れが生じ、そこから偶然にも地下空間への入口が開いてしまったのだ。


そして、侵入者の発見が遅れた。

殆どの場合、地割れから空洞を覗き込んだだけで終わったようだ。

無理もない。地中の天地など、不気味であろう。

それらの事態を、我とナミが知ったのだ。遂に踏み込んだ者の存在によって。

機能の警告によって我らが事態を掴んだのは、それが初めてであった。


「貴方様、これは……」


ナミが、報告を見て顔色を変えた。

その声には、僅かな動揺が滲んでいる。

我も、その報告に目を通す。

詳しく調べれば、世界各地で、地下への抜け道が開いていた。

慌ててそれらの入口を塞ぐも、恐らく今後も同様の事態は起きるであろう。


これは、放置できる問題ではない。

人々が地下世界に興味を持ち、さらに深く侵入しようとするかもしれない。

あるいは、地下の魔物が地上に現れる可能性もある。


何より、それらの抜け道から、魔力が僅かに漏れ出していたのが問題であった。

アキト様は、海外での魔力の拡散は、人の世を乱しかねないと危惧している。

それを防ぐための、魔力を消費する場としての壷中天の術であるというのに。


「急ぎ、アキト様に連絡を取らねばならぬ」

「はい。直ぐにも写し身を用意しましょう」


現世のアキト様の元へは、怪しまれぬような写し身を用意する必要がある。


地下世界の発見。

それが、どのような影響をもたらすのか……我には、完全には予測できぬ。

だが、アキト様なら……魔力の神であるような方であれば、何か考えが浮かぶやも知れぬ。


現世を過ごすアキト様を呼び出すのは心苦しくもあるが……我は焦る心を抑えながら、写し身に意識を宿し、飛び立つのだった。

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