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よくわかる日本の歴史 ~ただし、原始時代から日本にのみダンジョンがあったものとする~【第三部完】  作者: Mr.ティン
間章3 ~時代の間のこぼれ話~

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とある学校の体育授業風景

大遅刻ですが、なんとか今日中に投下出来ました。

【芦原木乃実】


「はーい、じゃあ今日の体育始めるよー」


体育担当の佐々木先生が、校庭に集まった生徒たちに声をかけた。

派手めのギャル風の見た目で、三十代前半とは思えないくらい若々しい。

でも既婚で子持ちらしいのよね。

スマホの待ち受けには、家族の写真が設定してあるってクラスメイトが話してた。


「今日はね、近接武術メインでやってくわ。腕に覚えがある子は、二人一組で試合形式。一本取ったら交代ね。試合場は柔道場くらいの広さで、校庭に十個設置してあるから」


佐々木先生が、校庭を指差した。

確かに、白線で区切られた試合場がいくつも並んでいる。


「武器は試合用だから、安全よ。まあ、当たれば痛いけどね。で、近接苦手な子は――」


先生の視線が、私たちに向く。


「脚力鍛えましょ。近接に持ち込まれないように、逃げ足速くしとかなきゃ。ランニングメインね」


ああ、やっぱり。

私は式神使いだから、近接戦闘なんて無理。

式神に守ってもらうか、距離を取るしかない。

だから、ランニングは妥当だと思う。


(実際、私も走って逃げたし……)


不意に思いだした前の学校の記憶。


「じゃ、試合組は準備して。ランニング組は、校庭三周から始めてー」


それを振り払おうとしている内に、佐々木先生の号令で、授業が始まった。


「一緒に走ろ、このみん!」

「うん、稲ちゃんよろしくね」


私は、最近仲良くなった稲ちゃん──稲沢さんと一緒に、ゆっくりとランニングを始める。

稲沢さんの兎耳が、ぴょこぴょこ揺れているのが可愛い。


「芦原さん、ほら見て。定原くんが試合するみたいだよ」

「あ、本当だ」


稲沢さんが、試合場の方を見ながら言った。

私も視線を向けると、定原くんが、槍を手に試合場に立っている。

真面目で、背が高めの彼。

あの日、私を助けてくれた、彼。

いつも一生懸命で、見ていて応援したくなる。


「第一試合ー、定原と坂上、お願いしまーす」


佐々木先生の声が響いた。


「坂上くんかあ。実習だと派手目の術を使うのよね……あれで接近戦も出来るんだから」

「本当、あの短刀はずるいよね……」


稲沢さんが呟く。

私も頷いた。

坂上くんは小柄だけど、五行術式を使う術者で、短刀使い。

今も試合用の短刀を体の周りで5本位浮かばせてる。


(定原君、大丈夫かな……)


私は、準備体操なのか軽く槍を振り回す定原君を見守った。



【定原哲斗】


「よろしくっす、定ちー」

「ああ、よろしく」


坂上が、軽く礼をする。

俺も一礼し、槍を構えた。


「じゃ、始めー」


佐々木先生の合図と同時に、坂上が動く。


速い!


低い姿勢で一気に間合いを離そうとする。

しかし、俺はその動きを許さない。


「させるか」

「おっと、これが厄介っすよねー」


飛び退こうとした坂上がたたらを踏む。

俺のスキル『固着』が、坂上の足を止め、それ以上の動きを禁じたのだ。

だが、コイツはそれだけでは止まらない。


「甘いっすよ!」


坂上は体勢を崩しながらも、周囲に浮かせた短刀を飛ばしてきたのだ。


「っと!」


俺は、槍で短刀を弾く。

しかし、次の瞬間、別の短刀が、角度を変えて飛んで来る。


「ちっ、厄介な!」


俺の固着は、接触したものを固定するスキルだ。

手に持っているモノを投げつけるなら、モノと手を離れなくすれば対処できるが、初めから浮いているモノには対応できない。

可能なのは、向かってくる短刀を地面に叩き落し、そこで固定する位だ。

だが、その数にも限りがある。


初めは2カ所だった固定箇所が、今では5カ所ほどまで増えているが、坂上の操る短刀は10本近い。

到底封じきれるものじゃなかった。


坂上が笑いながら、術式を発動させる。

短刀が、まるで意思を持ったように、俺に向かって飛んでくる。


「くっ!」


俺は、槍を回転させて短刀を弾く。

だが、一つ弾いても、次が来る。

辛うじて幸いなのが、攻撃として飛ばしてくる短刀は一度に1本だけと言う事だろうか?

もし複数飛ばされていたら、既に1本取られていただろう。


「定ちー、このまま勝たせてもらうっすよ?」

「そう簡単には!」


俺は、飛んでくる短刀を捌きつつ、少しづつ間合いを詰める。

坂上の足を早めに止めたので、間合いはそこまで開ききっていない。

このまま槍の間合いにさえ入れば、一撃届かせることも可能な筈。


「おっと、このままだとヤバイっすね……なら、攻めに出るっす!」


俺の思惑は向こうも承知しているだろう。

だが、坂上は動じない。

むしろ、先にカードを切って来た。

坂上の周囲を守るように浮遊していた短刀が、俺の方を向いたのだ。

そのまま、俺に向かって複数の短刀が飛んで来る。


「くっ! 複数相手は、厄介だ!」

「そうじゃないと困るっすよ! 守り削って攻撃に回してるんすから!」


今まで1本づつ飛んできた短刀が、今度は3本。

それも、微妙にタイミングや角度を変えて飛ばしてくるため、対処に苦労する。

だが、何とか有効打を避け、弾き、間合いを詰めるのは止めない。

もう少しで、俺の間合いなのだ。

しかし、先に動いたのは、やはり坂上だった。


「それ以上近づけさせないっす!」


坂上は、全ての短刀を攻撃に回したのだ。

残る浮かせた短刀全てが俺に殺到してくる。


「っ!」


俺は、槍で防ごうとしたが、数が多すぎる。

数本は弾き避けたが、俺は体勢を大きく崩した。

更に坂上は手にしていた短刀すら投げつける。


……間に合わない!


「なら!」


俺は最後の一足掻きをするが、崩れた体勢を立て直せず、坂上の短刀は胸に当たっていた。


「一本!」

「くっ……」


佐々木先生の声に、俺は負けを悟る。


「あー、相打ちっすね」


だが、坂上の方も苦笑が混じっていた。

同時に、俺が咄嗟に投げた槍が、短刀の守りを抜けて、坂上の胸に刺さっていた。


「ああ、そうだな」


俺も、苦笑した。


「いやー、固着スキル厄介っすわ。足止められると動けないっす」

「厄介と言いたいのはこっちだ。複数の小型相手には、相性が悪いんだよな、俺のスキル」


俺が言うと、坂上が頷く。


「でも、投げられた槍はマジでヤバかったっす。短刀じゃ元から防ぎきれなかったっすもん。タイミング次第じゃ、俺が負けてたっすよ」

「そうか……?」

「殆どの短刀を防御に回して何とかって所っすね。だから初めは1本だけ飛ばしていたっすよ」

「そうなのか……参考になった。ありがとう」


俺は、次の課題を頭に刻む。

複数の小型相手への対処が、今の俺に足りないものだ。

そうしてしばらく反省していると、再び俺の番が回って来た。


「次、定原と久留間、お願いしまーす」

「……久留間か」


佐々木先生の声が響き、俺は、試合場の反対側を見る。

久留間が、手斧を二本持って立っていた。

大柄で、熊のような耳。

動物の耳など、日本では珍しくもない。

久留間の場合、先祖に人に変じた熊がいたようだ。


「よろしく頼む、定原」

「ああ、よろしく」


久留間の低い声が響き、俺は槍を構え直した。


「じゃ、始めー」


佐々木先生の気の抜けた声と同時に、試合開始。

俺は、まず間合いを測るために前に出た。


「せいっ!」


槍を突き出す。

だが、久留間は手斧で槍を弾いた。


重い!


手斧の重量が、槍を通じて俺の手に伝わってくる。


「その程度か?」


久留間が、笑う。


「まだまだ!」


俺は、槍を連続で繰り出した。

突き、薙ぎ、また突き。

だが、久留間は全てを防ぐ。

二本の手斧を素早く操り、まるで盾のように俺の攻撃を受け止める。


「要塞みたいだな……」

「褒め言葉として受け取っておく」


呟く俺に、久留間が、ニヤリと笑う。

確か、久留間は複数人で組む時、前衛として敵の攻撃を引き付けるタンク役をこなすらしいと聞いている。

実際、この男が前に立ってくれたら、頼りになることは間違いない。


(だが、今はひたすらに強敵だ!)


久留間の反撃。

手斧が、俺に向かって振り下ろされる。

片手で扱っているのに、まるで大鉞の様な威圧感だ。


「っと!」


俺は、後退して避ける。

だが、久留間の攻撃は止まらない。

堅い防御を成していた手斧二刀流が、今度は嵐なような連撃として俺に襲い掛かる。


「くっ……固着!」


俺は、久留間の足元に「固着」を発動させた。

久留間の足が、地面に固定される。


「おっと」


久留間の動きが止まる。


今だ!


俺は、久留間の背後に回り込んだ。

正面は堅くても、背後なら!


「もらった!」


俺は槍を突き出す。

だが……。


「甘いな」


久留間は、上体を大きく捻り、手斧で槍を受け止めた。


「なっ!?」


あの巨体で、あれだけ柔軟に動けるのか!?


「俺を舐めるなよ」


久留間が、笑う。

そして、もう片方の手斧を振るう。

俺は、咄嗟に後退した。


「なら、間合いを離すしかない」


俺は、距離を取った。

槍の間合いなら、手斧は届かない。


「せいっ!」


俺は、槍で一方的に攻撃しようとする。


「させるか!」


しかし久留間は、読んでいたかのように手斧を投げようとする。

両手の手斧が、俺に向かって振りかぶられた。


「固ちゃ……何!?」


俺は、手斧を空中で固定しようとしたが、驚きに目を見開く。

いつの間にか久留間は、複数の手斧を指に挟みこみ、複数の手斧を一度に投げつけようとしていたのだ。


(振りかぶって、背中に手を回したときに握ったのか!?)


指に挟まれた手斧が、まるで熊の爪のように見える。

数が多い。

全部は到底止められない。


(くそっ、みんな俺のスキルの弱点を理解してるな!)


俺は覚悟を決め、全力で防ごうと槍を構えた。


「ぐっ!?」

「っ!!」


だが、その瞬間、久留間の体勢が、わずかに崩れたのだ。


「今だ!」


俺は、槍を投げた。

一瞬体勢が崩れた久留間は結局手斧を投げられず、槍が久留間の胸に当たる。


「一本!」


佐々木先生の声。


「……やるな、定原」


久留間が、笑った。


「ああ。でも、これでも決定打にはならなかっただろうな」


俺は、正直に言った。

久留間の体格とタフさなら、これくらいでは倒れない。

しかし……。


「久留間、なんで最後に体勢を崩したんだ?」


俺は最後の攻防の疑問を口にする。

すると久留間はバツが悪そうに視線を逸らす。


「……身体を捻り過ぎたせいか、攣った」

「そ、そうか……なんか、すまん」

「いや、俺が、まだまだなだけだ」


そう言いつつ、久留間は身体を捻ったまま去って行く。


(もしかして、攣ったまま戻らないのか……?)


何というか、微妙ないたたまれなさを感じつつ、俺は自分の足りなさも痛感していた。



【芦原木乃実】


「クルマン、すごいね!」


稲沢さんが、目をキラキラさせながら言った。


「うん、本当に」


私も頷く。

あんなに大きな体なのに、あれだけ柔軟に動けるなんて。

まるで、要塞が動いているみたい。

ま、まあ最後だけちょっと様子はおかしかったけど。


「でも、定ちーも頑張ってたよ!」


稲沢さんが、嬉しそうに言う。


「……そうだね」


私は、定原くんの姿を目で追った。

彼は、試合後も真剣な表情で、何かを考えている。

きっと、次の課題を考えているんだろうな。

真面目で、一生懸命で……。


「このみんは、定ちーのこと、好きなの?」


稲沢さんが、突然訊いてきた。


「え……っ!」


私は、顔が熱くなるのを感じた。

心臓がドキドキする。


「ち、違うよ。ただ、真面目だなって思っただけ」

「ふーん? でも、ずっと見てたよね? あんなに見てたらバレバレっていうか……ねえ?」


稲沢さんが、意味深に笑うけど、私は視線を逸らす事しか出来ない。


でも、確かに定原くんの真摯な姿は、素敵だと思う。

何より、私の中には、あの日私を助けた姿がずっと残っている。

かっこいいって、思っちゃう。

周りの女子たちも、試合を見ながら、誰がかっこいいか、誰が頼りになるか、話し合っている。


「坂上くん、素早くてかっこいいよね」

「でもなんか決まり切らないのよねー」

「久留間くんの方が、頼りがいあるって」

「う~ん、ちょっと大きすぎて怖いかなって」

「わかる~」


そんな声が、聞こえてくる。

私は、再び定原くんを見た。

彼は、今も真剣に、次の試合を見ている。

その横顔を、私はずっと追い続けた。


きっと、これからも。

次回人物紹介の後に、平安時代編開始。

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