表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄と海の帝国  作者: 007
第0章 巨艦の胎動

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/35

新しき国の柱

ここまでお読み頂いて、気付かれていると思われますが今作は明治維新までは、海外への進出と言うべきか拡大は行いません。

まぁ数話後に、某国が某戦争で資金難となり某地域を日ノ本は購入しますが、それだけです。

数多い他の架空戦記では、早期開国を行うと海外進出を行い日本の勢力圏を拡大していますが、今作は明治維新までは大人しくしています。


現状は構想の段階ですが明治維新以後の全ての戦争で、大日本帝国は大規模な拡大を遂げるようにしています。

その為に本編開始の第二次世界大戦開戦時には、大日本帝国は直轄地つまりは植民地や連邦でもない、『併合した純粋な大日本帝国領』として広大な帝国になるように構想しています。

毎日投稿ですが、たぶん来月の頭までは第0章の前史になりますがご了承下さい。


1805年、江戸城の御座之間。冬の陽光が障子越しに淡く畳を照らし、静かな緊張が部屋を満たしていた。11代将軍・徳川家斉は上座に座し、若々しい顔に鋭い目を光らせていた。その前に、老中首座・松平定信が平伏する。田沼意次の死から4年、1801年の盛大な葬儀は日ノ本に衝撃を与えた。田沼の開国改革は、経済力を増大させた。幕府は常備軍を築き、長崎と江戸を繁栄の中心に押し上げた。だが地方の不満と尊皇の声は高まり、列強の目は日ノ本に注がれていた。定信は田沼の遺志を継ぎつつ、新たな改革を胸に秘めていた。

「上様、日ノ本は今、さらなる飛躍の時にございます」。定信の声は落ち着きながらも、熱を帯びていた。「田沼殿の開国は我々に富と力をもたらしました。しかしながら列強に並ぶ国となるには、幕府の体制を根本から改めねばなりません。西洋の政府に学び、日ノ本独自の柱を築く時です。」

家斉は静かに頷き、定信を見据えた。「定信、そなたの言う改革とは何か。田沼の遺産をどう超えるつもりだ?」

定信は深呼吸し、畳に手を突いて言葉を紡いだ。「上様、西洋列強の政府は、国王や大臣が国を統べる仕組みでございます。イギリスの内閣、フランスの執政、アメリカの議会――これらは国を強くし、富を動かす柱。我々も幕府を改め、西洋の『省庁』に匹敵する体制を築き、日ノ本を列強に並べましょう。ですが徳川家の世襲は不変の礎。これを守りつつ、新しき国を定義します。」

老中の一人がざわめき、声を上げた。「定信殿、幕府の祖法を覆す気か! 田沼殿の開国で既に混乱が広がり、地方の不満は低減したとはいえ皆無では無い。さらなる変革は危険だ!」

定信は冷静に答えた。「混乱を恐れていては、日ノ本は列強の後塵を拝するのみです。田沼殿の経済改革は金と鉄を生み、軍を強くした。今、我々が体制を固めねば、薩摩や長州の尊皇の声が幕府を揺さぶる。西洋の力を借り、徳川の世を永遠にせねばならぬ!」

家斉は目を細め、問うた。「定信、具体的に何をなす? 幕府をどう変えるつもりだ?」

定信は胸を張り、改革の全貌を語った。「まず、上様の地位を再定義します。西洋の『内閣総理大臣』に倣い、日ノ本の顔として頂点に立つ。されども徳川家の世襲は不変とし、将軍の権威を高めます。わたくし老中首座は『官房長官』として、上様を補佐し、政府の要と定義します。その他の老中や奉行は、西洋の『省庁』に匹敵する権限を与え、『大臣』として再編します」

部屋に静寂が落ちた。側用人が呟いた。「奉行を大臣だと? 祖法を乱す無謀な策だ!」

定信は動じず、続けた。「勘定奉行は『大蔵省・大蔵大臣』とし、財政と税を統べる。普請奉行は『建設省・建設大臣』として、街道と鉄道を維持整備。京都所司代は『宮内省・宮内大臣』として、朝廷との絆を固める。新たに『軍務奉行』を設け、幕府陸軍と海軍を統括し、『国防省・国防大臣』とします。外交は『外交奉行』が担い、『外務省・外務大臣』として列強と渡り合う。これで日ノ本は、議会なき政府を持つ国となる!」

老中たちがざわめいたが、家斉は手を上げて制した。「定信、そなたの志は大胆だ。だが、地方の不満と尊皇の動きはどう抑える? 列強との外交はどう進める?」

定信は目を輝かせ、答えた。「上様、経済力が増大した幕府は、地方にも富を広げます。勘定奉行が低率租税を維持し、普請奉行が街道と鉄道を地方に延ばします。軍務奉行は陸軍と海軍を強化し、薩長の不満を抑える。外務奉行はオランダ、イギリス、フランス、アメリカ、プロイセン、ロシアと交渉し、動向を監視します。御庭番は大使館で列強の技術と情報を吸収吸収。議会はなくとも、日ノ本独自の政府が国を一つにします!」

家斉はしばし黙考し、やがて頷いた。「よし、松平定信に命ずる。幕府を新しき政府に改め、日ノ本を列強に並ぶ国とせよ。だが、徳川の世を乱さぬよう、慎重に進めるのだ。」

こうして1805年、幕府は生まれ変わった。将軍は「日ノ本の顔」として再定義され、家斉は新たな権威をまとった。定信は官房長官として幕府を統括し、老中や奉行は大臣格として権限を握った。勘定奉行は税収を管理し、普請奉行は江戸から長崎、さらには薩摩への鉄道を計画した。京都所司代は朝廷との関係を強化し、尊皇の火種を抑えた。軍務奉行は、マスケット銃部隊と蒸気船を拡大し、軍の規模を拡大させた。外交奉行は、列強との交渉を進め、御庭番がフランス革命の余波やアメリカの軍事技術を報告した。

だが、繁栄の裏には影が忍び寄る。薩摩と長州の志士たちは、幕府の西洋化を「売国奴」と糾弾した。尊皇攘夷の声は、地方の経済格差と共に高まりつつあった。家斉は江戸城から江戸の街を見下ろし、呟いた。「定信、田沼の遺志を継ぎ、日ノ本を強くした。だが、この国はまだ試練の道を歩む」

長崎の港では、蒸気船が汽笛を鳴らし、江戸の鉄道は煙を上げた。新しき政府の下、日ノ本は議会なき独自の体制を築いた。だが、その先に待つのは、明治維新の嵐と、鉄の巨艦――八八艦隊の胎動だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ