カナダ自治領降伏2
そして情報を纏めた皇軍戦略情報局長官の川島芳子陸軍大将は、皇軍統合作戦司令本部総長風間麗子海軍元帥に報告に向かった。そして諜報員による情報を詳細に分析し纏めた報告書を風間皇軍統合作戦司令本部総長に提示し、カナダが当初の想定よりも遥かに早く降伏する可能性が極めて高いと断言したのである。その情報を聞いた風間総長は、驚いた。当初の想定では数カ月は侵攻を阻止出来る筈だったからである。大日本帝国はその前提でカナダへの軍事援助と、カナダ国境線の防衛線構築を行っていた。
だがそれは川島皇軍戦略情報局長官が、早期降伏を断言したのである。風間総長は川島長官に、大体の日数は想定出来ているのか尋ねた。すると川島長官は、1週間前後の可能性が極めて高いと語ったのである。それを聞いた風間総長は事態が切迫しているとして、国防大臣の石原莞爾陸軍元帥に報告に一緒に向かうと言い、風間総長は川島長官を連れて大臣室に向かった。
報告を聞いた石原莞爾国防大臣も驚きを隠せずにいた。何せ開戦劈頭の緊急対策会議で、カナダは上手く立ち回れば半年は時間が稼げると言ったのだ。それが後1週間前後でカナダが降伏する可能性が極めて高いとの情報である。確かに松岡洋右外務大臣からもカナダ自治領政府が戦況に苦慮している、と石原国防大臣は報告を受けていた。だがそれを上回る凶報ともいえる情報を、皇軍戦略情報局が掴んでいたのである。石原国防大臣は情報が情報だけに、黒崎総理に報告するべきだと語り3人は首相官邸へと向かった。
報告を聞いた黒崎妖華総理は、やはりと言うべきか躊躇無く即時のカナダ自治領に対する軍事援助を中止するように命じた。太平洋を航行中の輸送船団はアラスカ県に寄港地を変更する事も命じたのである。そしてアラスカ県のカナダ国境線の防衛線構築を加速するように命令した。そして中華民国による侵攻以後東シナ海に展開していたダッチハーバー鎮守府所属であり48センチ3連装砲4基12門を誇る、超弩級戦艦越前級8隻を主力にした第5艦隊を早急にダッチハーバー鎮守府に戻す事も命令した。
何としてもまずはアラスカ県防衛を優先させるべきであった。だが川島長官は別の観点から、意見を述べたのである。それは既に送り込んでカナダが受け取った軍事援助による兵器が、最悪の場合はアメリカ合衆国に無傷で鹵獲されてしまうと語った。戦争勃発により技術開発が促進されるとはいえ、だからといって既存技術を容易くアメリカ合衆国に鹵獲されるのは避けるべきだ、と川島長官は危機感を顕にした。
それは黒崎総理や石原国防大臣、風間総長にとっては想定外の意見だった。だが川島長官の意見は当然のものであり、黒崎総理はどのように対処するべきか尋ねた。川島長官は皇軍戦略情報局の特殊工作員と陸軍の非公式機密特殊部隊八咫烏を派遣し、物理的に破壊するべきだと力説した。その為の猶予は少なく、事態は急を要するべきだとも付け加えた。黒崎総理は川島長官の意見に賛同し、即座に派遣するように命令した。
こうして大日本帝国はカナダ自治領が降伏するまでの間に、皇軍戦略情報局の特殊工作員と陸軍の非公式機密特殊部隊を派遣し軍事援助で提供した兵器を、物理的に破壊していったのである。皇軍戦略情報局の特殊工作員と陸軍の非公式機密特殊部隊八咫烏は空軍の九七式輸送機で、アラスカ県まで一気に空輸されそこから陸路でカナダ自治領に潜入した。
江戸幕府御庭番の流れを汲み世界最古の情報機関である皇軍戦略情報局と、第一次世界大戦以後に創設された世界最古の特殊部隊である非公式機密特殊部隊八咫烏にとってはカナダ自治領への潜入や、兵器の破壊は容易い任務であった。しかもこの事は軍事援助打ち切りと併せて、カナダ自治領には知らせておらず破壊はカナダ軍にとっては悲劇的な行為になった。だが黒崎総理の命令により徹底的に破壊する事が優先され、それは文字通り完璧に実行された。
これによりカナダ自治領がアメリカ合衆国に無条件降伏した時には、カナダ自治領内に大日本帝国が軍事援助として送り込んだ兵器は全て破壊されていたのである。




