緊急対策会議
黒崎妖華総理が首相官邸で開催した緊急対策会議には閣僚全員と、皇軍統合作戦司令本部総長を筆頭に大日本帝国軍の幹部陣と、皇軍戦略情報局長官と幹部陣も出席していた。
黒崎総理は国防大臣に、現在の世界枢軸同盟の侵攻状況について説明を求めた。それを受けて国防大臣の石原莞爾陸軍元帥は立ち上がり、説明を始めた。石原国防大臣はヨーロッパでは第二神聖ローマ帝国が、オランダ王国とベルギー王国・デンマーク王国に侵攻した、と語った。その目的はオランダ王国とベルギー王国への侵攻はフランス共和国が国境沿いに構築したマジノラインを迂回する為であり、デンマーク王国への侵攻は国境の安定の為である、と推測されると説明した。第二神聖ローマ帝国とオランダ王国・ベルギー王国・デンマーク王国の兵力差から、数日で3カ国は第二神聖ローマ帝国に占領されると語った。
そしてイタリア王国が第二神聖ローマ帝国に呼号する形で、陸海空軍によるフランス共和国侵攻を開始。フランス共和国としては全力を挙げて阻止したかったが、第二神聖ローマ帝国が侵攻してくるのは確定しているようなものであり、安易に軍を移動出来ない為に、そこにオランダ王国・ベルギー王国・デンマーク王国を占領した第二神聖ローマ帝国が侵攻してくればフランス共和国を短期間で占領可能である、と説明した。
そして太平洋ではアメリカ合衆国が太平洋艦隊を投入し陸海軍合同作戦で、大日本帝国南洋府ミッドウェー島とオーストラリア領ニューギニアに侵攻を開始し、ミッドウェー島の奪還と、大日本帝国とオーストラリア・ニュージーランド間の海上輸送路を撹乱する為の侵攻だと、石原国防大臣は語った。
ミッドウェー島は環礁が大部分を占めており、戦闘には不向きである為に即座に降伏するように命令したと、石原国防大臣は説明した。ニューギニアも駐留するオーストラリア軍の能力を考えると、早々に占領されると語った。
そしてアメリカ合衆国は大英帝国のカナダ自治領にも、陸軍と陸軍航空軍による侵攻を開始していると説明し、こちらは戦力的にはアメリカ合衆国が絶対的に優勢だが領土的に、上手く立ち回れば半年以上は時間を稼げると語った。説明を終えると石原国防大臣は席に着いた。
現状では世界枢軸同盟の一斉侵攻に、連合国が早急に対処しないといけない事態だった。何せヨーロッパ戦線はベルギー王国・オランダ王国・デンマーク王国は風前の灯であり、フランス共和国も戦力的には劣勢なのは否めなかった。石原国防大臣の説明を聞いた黒崎総理は、暫く目を瞑っていたが決断を下したように、目を見開いた。
黒崎総理は、冷酷にヨーロッパ戦線は見捨てると断言した。地中海統合軍にはオスマン帝国と共同で防衛体制を早急に構築するように命令したのである。
見捨てるとの発言に全員が驚いたが、冷静に考えて物理的な距離が問題だった。どう頑張っても支援に駆け付けるより、第二神聖ローマ帝国がヨーロッパ大陸を制圧する方が早いのだ。黒崎総理は更に軍事援助を連合国各国に行う事を決定し、ロシア帝国とオスマン帝国に大規模な援助を行うと語った。
それに松岡洋右外務大臣は、日英同盟を結び最大の同盟国である大英帝国はどうされるのですか、と尋ねた。黒崎総理はその質問にも冷酷に、距離的にも周辺地域全てが敵国である以上は見捨てるしかありません、と断言した。
その断固とした言葉に、皇軍統合作戦司令本部総長風間麗子海軍元帥以下軍人達は、率直な意見として安堵した。軍事作戦的に遠隔地の大英帝国への救援は、不可能であり海軍元帥でもある黒崎総理の判断を支持した。だが文民たる松岡洋右外務大臣や石渡荘太郎大蔵大臣・木戸幸一内務大臣等は、感情論として大英帝国を支援するべきだと発言したのである。
しかしそれに陸軍参謀総長杉山元大将・陸軍総軍司令長官東條英機大将、海軍軍令部総長永野修身大将・連合艦隊司令長官高橋知里大将、空軍統合総長菅原道大大将・空軍航空総隊大西瀧治郎大将が反対した。そして風間皇軍統合作戦司令本部総長が代表して、説明を始めたのである。
そもそもが第二次世界大戦の勃発であり、世界枢軸同盟による同時多発侵攻を受けている最中であり、アメリカ合衆国により直接的に南洋府ミッドウェー島が侵略されたのである。その状況で同盟国とはいえ大英帝国を支援しにいくのは、本丸たる帝国本土を蔑ろにする行為であり、それは大逆罪に匹敵する売国行為、だと風間皇軍統合作戦司令本部総長は怒りを顕にしながら断言した。
そう言われると文民大臣達も現実を受け入れ、自分達がいかに浮足立った事を言っていたのかに気付いた。黒崎総理は大逆罪は言い過ぎだと思ったが、開戦劈頭に文民の思考を正すショック療法だとして、黙認した。
こうして雰囲気がやや固くなったが、黒崎総理は何としても初動で事態を立て直す必要がある、と語った。だがそこで皇軍戦略情報局長官の川島芳子陸軍大将が、重大な情報があると語ったのである。それは気になるとして、黒崎総理は先を促した。
川島皇軍戦略情報局長官は、中華民国が世界枢軸同盟に参加する動きがあると語ったのである。その予想外の情報に、全員が驚愕の表情を浮かべた。




