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鉄と海の帝国  作者: 007
第0章 巨艦の胎動

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鉄の嵐

1865年6月1日、薩摩藩の鹿児島湾。朝霧が桜島の山影を覆う中、幕府海軍の汽笛が轟いた。5月15日、薩摩と長州が朝敵と指定され、江戸幕府は薩長連合軍8万を討伐すべく動き出した。田沼意次の開国以来、経済力拡大を成し遂げた幕府は、国産鋼鉄船大龍級と鳳翔級、補助艦70隻(外輪船・戦列艦)を擁していた。薩長の木造船と旧式マスケットは、幕府の鉄の軍勢に抗し得なかった。

鹿児島港の沖合、幕府海軍総指揮官・勝海舟、42歳、は旗艦大龍に座乗していた。第1艦隊(大龍級5隻、鳳翔級10隻、補助艦30隻)は勝海舟直属、第2艦隊(大龍級5隻、鳳翔級10隻、補助艦40隻)は榎本武揚が率いる。勝海舟の座乗する旗艦の艦橋には、オランダ、英国、フランス、米国、ロシアの駐日大使館武官が観戦武官として同乗していた。日ノ本の国産鋼鉄船の砲声を、列強の目が注視していた。

戦いの火蓋は、6月1日未明に切られた。勝海舟が号令を発すると、大龍級10隻の20センチ砲合計40門が一斉に砲弾を放ち、薩摩の要塞を炎に包んだ。鳳翔級20隻の12センチ砲合計320門が薩長の木造船を木っ端微塵に砕いた。補助艦70隻の外輪船と戦列艦も、片舷60門の大砲合計4200門を近接で放ち、薩摩の沿岸砲台を粉砕した。英国武官が呟いた。「この砲撃はトラファルガー海戦を凌ぐ。日ノ本の海軍は列強を超えた」

薩長連合軍の指導者――西郷隆盛、大久保利通、黒田清隆、久坂玄瑞、桂小五郎、高杉晋作、伊藤博文、山縣有朋――は鹿児島城下で動揺していた。西郷は叫んだ。「幕府の鋼鉄船は我々の船を一瞬で沈めた! 陸戦に賭けるしかない!」高杉は砦を指さした。「山岳に立て籠もり、8万の兵で迎え撃つしかない!」だが、幕府海軍の対地支援砲撃は想像を絶した。12ポンド砲100門を擁する薩長連合軍の砲台は、大龍級の装甲に歯が立たず、鳳翔級の機動に翻弄された。

勝海舟の号令で、補助艦70隻が海岸線に接近した。外輪船と戦列艦の片舷60門が一斉砲撃し、薩長の防衛線を崩壊させた。フランス武官が驚嘆した。「対地砲撃の威力は大きい。列強もこれを学ばねばならぬ」この戦いで、幕府海軍は世界に先駆けて艦砲射撃の戦術を確立した。列強は後にこの戦法を採用し、海軍史に日ノ本の名を刻んだ。

砲煙の中、幕府陸軍の指揮官である女流剣士・中沢琴が命じ、幕府陸軍が上陸を開始した。10万名、5個師団が、補助艦の援護で鹿児島の岸に降り立った。第1師団は琴直属、第2師団は近藤勇、第3師団は土方歳三、第4師団は沖田総司、第5師団は斎藤一が先頭に立った。琴の長刀が陽光に輝き、薩長の志士を震え上がらせた。


江戸城では、将軍・徳川家茂が、老中首座の井伊直弼に語った。「直政、琴と勝海舟は我々の誇りだ。薩長を滅ぼし、船中八策の新国家を築く」井伊は頷き、答えた。「上様、モールス信号による通信によると、薩長8万が鹿児島で抵抗しています。しかしながら国産の鋼鉄船とガトリングガンは圧倒的であります。内戦は我々の勝利になりましょう。」

坂本龍馬も呟いた。「薩長を滅ぼし、日ノ本を一つにするのです。船中八策は、この鉄の嵐の先に。」1865年6月1日、幕府海軍の砲撃が薩摩の空を焦がし、中沢琴の陸軍が上陸を果たした。薩長連合軍8万との決戦は、始まったばかりだった。

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