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鉄と海の帝国  作者: 007
第3章 混迷

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スモレンスク攻防戦3

1939年9月5日。スモレンスクは数千門の火砲が吐き出す噴煙によって覆われていた。本来であれば第二神聖ローマ帝国の電撃戦がスモレンスクの息の根を止めるはずであった。ハインツ・グデーリアン上級大将率いる第2装甲集団と、ヘルマン・ホト上級大将の第3装甲集団は、ドニエプル川の要衝スモレンスクを鉄の爪で引き裂こうと、総攻撃を敢行した。

だがその鋼鉄の濁流の前に立ちはだかったのは泥に塗れたロシア帝国兵ではなく、極東から飛来した『沈黙の巨神』であった。ロシア派遣軍司令官、山下奉文大将が静かに右手を振り下ろしたその瞬間、大地は物理的な意味で沸騰した。

大日本帝国陸軍が誇る12500門の火砲群、機械化歩兵師団や機甲師団に配備された榴弾砲・自走榴弾砲、そして自走噴進砲が一斉に咆哮を上げたのである。ドニエプル川の西岸全域に降り注いだのは、もはや砲撃という概念を超えた、鉄と炎の防壁であった。進撃中の中央軍集団所属の戦車の群れは、狙い澄まされた精密な弾幕によって次々と鉄屑に変えられていった。グデーリアン上級大将の指揮所に届く報告は、もはや戦況報告ではなく、各師団が文字通り『蒸発』しつつあるという絶望的な悲鳴へと変わっていた。ロシア帝国に大日本帝国陸軍が援軍として派遣された証拠であった。

山下大将はこの『鉄の嵐』の最中、温存していた15個機甲師団を解き放った。1個師団に250輌、計3750輌の戦車部隊が、泥濘を蹴立てて神聖ローマ帝国の装甲列柱の隙間に楔を打ち込んでいく。さらに、42個もの機械化歩兵師団に配備された『独立戦車大隊』が、歩兵と密接に連携しながら敵の側背を執拗に叩いた。保有数6690輌という、当時の欧州では想像もつかない圧倒的物量は、数において勝っていたはずの神聖ローマ帝国軍を逆に包囲し、粉砕する勢いを見せた。

特に、ドニエプル川沿いの平原で展開された戦車戦は凄惨を極めた。ホト上級大将は、自らの第3装甲集団が日本軍の『質と量』の両面に圧倒されるのを目の当たりにした。大日本帝国陸軍の戦車は、ロシアの湿地帯でも高い機動性を維持し、師団重砲の支援を受けながら、神聖ローマ帝国の装甲部隊を個別に隔離し、確実に撃破していったのである。

この壊滅的な打撃を受け第二神聖ローマ帝国陸軍は一時的な混乱に陥った。もはや作戦目標であるスモレンスクの完全制圧は不可能であることは誰の目にも明らかだった。しかし、誇り高きグデーリアンとホトは、撤退という選択肢を選ばなかった。彼らは作戦の失敗を認めつつも、その場で踏み止まり、戦線を再構築するという過酷な決断を下したのである。時間をかければ彼らにもアメリカ合衆国からの援軍が駆けつける筈だったのである。

グデーリアンの厳命により、第二神聖ローマ帝国陸軍の中央軍集団は、攻勢から一転して死守の態勢へと移行した。破壊された戦車を即席のトーチカとし、散らばった兵士たちは泥の中に塹壕を掘り、大日本帝国陸軍の圧倒的な物量に対して決死の抗戦を開始した。攻める日本軍と、踏み止まる第二神聖ローマ帝国陸軍。スモレンスクは勝利と敗北の境界線が火花を散らす、史上最大の消耗戦の舞台へと変貌を遂げたのである。

ドニエプル川の川面は、両軍の兵士の血と重油で黒く汚れ、その岸辺には、いまだ消えぬ砲火の余光が不気味に揺らめいていた。山下奉文大将は、戦塵の向こう側に踏み止まる敵軍を凝視し、次なる一手、3個空挺師団による背後攪乱の準備を静かに進めていた。

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