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鉄と海の帝国  作者: 007
第0章 巨艦の胎動

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嵐の前夜

お気付きの方もいると思いますが、史実の薩長藩優遇の藩閥政治へのある種アンチテーゼ的な意味もあります。

その為に薩長同盟による倒幕の明治維新では無く、江戸幕府が薩長同盟を討伐しての江戸幕府主導による自己改革での明治維新となります。

1865年5月18日、薩摩藩の鹿児島城下。春の陽光が桜島を照らす中、薩長連合軍の陣営は重い緊張に包まれていた。薩摩藩の武士と長州藩の軍勢が合同訓練に励んでいたが、5月15日、江戸幕府が朝廷を通じ、薩摩と長州を朝敵と指定した報が届いた。田沼意次の開国以来、幕府は経済力拡大を誇り、国産の鋼鉄船大龍級と鳳翔級、陸軍10万名を擁していた。薩長の尊皇攘夷は、経済格差への不満を背景に倒幕を企てていたが、幕府の鉄の軍勢がその野望を断ち切るべく動き出した。

薩摩の屋敷に、薩長連合軍の指導者が集結した。久坂玄瑞、桂小五郎、高杉晋作、大久保利通、西郷隆盛、伊藤博文、山縣有朋、黒田清隆は、幕府軍の進撃にどう対抗するか議論していた。久坂玄瑞は地図を叩き、声を上げた。「幕府の海軍は強大だ。大龍級と鳳翔級は我々の木造船を一掃する。海戦は即座に棄てねばならぬ!」

西郷隆盛は頷いた。「陸戦ならまだ勝機はある。薩長の兵は8万、旧式マスケット銃と12ポンド砲だが、数では負けぬ。鹿児島の山岳と要塞で迎え撃つ!」大久保利通は冷静に補足した。「幕府陸軍は10万、最新の兵器を備える。だが、地の利を活かせば持ちこたえられる。長州の下関で援軍を準備してもらおう。」

高杉晋作は目を細めた。「幕府の経済力は我々を凌ぐ。だが、尊皇の志は民の心を掴む。ゲリラ戦で時間を稼ぎ、列強の介入を待つべきだ」桂小五郎は反論した。「馬鹿な!列強は幕府と国交済みだぞ!しかもアラスカ購入で幕府は太平洋の楔を握った。迎撃以外に道はない!」伊藤博文、山縣有朋、黒田清隆も頷き、薩長は薩摩での迎撃を決めた。



一方、江戸城では、14代将軍・徳川家茂が幕臣を前に決意を固めていた。老中首座の井伊直政は家茂の傍らで進言した。「上様、薩長の倒幕計画は御庭番が掴んでおります。坂本龍馬の船中八策は新国家の道を示す要です。しかしながら薩長を朝敵として殲滅せねば、幕府の名誉は保てませぬ。」

家茂は頷き、軍務奉行に命じた。「陸軍指揮官中沢琴、海軍指揮官勝海舟、両名は薩長を討伐せよ。陸軍10万、海軍100隻で乱の火種を断つ!」坂本龍馬は平伏し、呟いた。「薩長を滅ぼし、日ノ本を一つにするのです。船中八策は、その先の未来です。」

幕府陸軍は、女流剣士・中沢琴が指揮を執る。10万名、5個師団が幕府海軍に乗り込み薩摩へ進軍する。琴の太刀と男装は、薩長の志士を震え上がらせた。

幕府海軍は、勝海舟が指揮を執る。国産の大龍級10隻と鳳翔級20隻、補助艦70隻が鹿児島港へ向かった。第1艦隊と第2艦隊の総力を挙げての幕府陸軍輸送を行い、薩長連合軍を砲撃で粉砕する計画だった。長崎造船所で建造された国産鋼鉄船は、薩長の木造船を圧倒する代物だった。


薩摩の城下では、薩長連合軍8万が防衛線を築いていた。西郷隆盛は叫んだ。「幕府の鉄の船と陸軍は強い。だが、尊皇の志は折れぬ! 薩摩を守り抜く!」久坂玄瑞と高杉晋作は、砦を固め、旧式マスケット5000挺と12ポンド砲100門を配備した。だが、幕府軍の進撃は止まらなかった。琴の陸軍は、ガトリングガン200挺の掃射とリボルバー1万挺の近接戦で薩長を圧倒する準備を整えた。勝海舟の大龍級は、鹿児島港に砲門の照準を合わせた。

1865年5月25日、薩長と幕府軍の決戦が迫っていた。日ノ本の未来は、鉄と血の嵐の中に懸かっていた。

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