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インビジブル  作者: あおいろもなか
9/12

魔力変換装置(ポイント君)

奈白達はマルキスの街に戻り着いた。

街に入るなり奈白は担いでいた布袋を地面に置き、ほぐすように肩を回す。


「ふぅー、重たっ…。ずっと持ってるとやっぱこのくらいの重さでも疲れてくるな」

「なっさけないわねぇ。コナちゃんでも頑張って持ってるってのに」

「うっ…そう言われると言い返せねぇ。なぁ、今日倒したやつよりでかいやつ倒した時はどうやって持ち帰んだ?」

「あー、大体は魔法ね。一時的に重量を軽くしたり小さくしたり、でかいギルドなら自前の保管庫や冷蔵室に転送魔法を使って送る人もいるわね。マジックバッグっていうある程度の容量なら何でも入れられるバッグもあるけどクソ高いのよねー」

「なるほどなぁ。で、俺達は魔法の節約ってことか」

「まぁそうね。いくらマジックセルが安いって言っても大量に買う程の余裕はあたし達には無いし」

「そっか。…よっ、と」


後ろでリグナス達がじゃんけんをしているのを眺めながら、奈白は置いていた布袋を再度担ぎ直す。


「くっそー、またっすかぁー?」

「…リグっち弱い」


リグナスはコナの分の布袋も担いでいるようだ。


「もしかして魔法で心を読んだりとかしてないっすよね?」

「………し、しらない」


コナはゆっくりと目を逸らしながら答える。


「怪しいっす!マリ姉からも何か言ってやってくださいよ」

「コナちゃんはそんな事はしません」

「もー、甘やかしすぎっすよ。この白々い顔、絶対怪しいっす」


「ほーら、あんた達も遊んでないでさっさと行くわよー」


アリシアがみんなを急かしてまた歩き出す。


「…ん?あれ?コナちゃん持ってなくない?」

奈白の小さな疑問は誰の耳にも届かず、静かに心の中にしまった。



しばらく歩いてギルド会館近くまで到着すると、アリシアがそのすぐ横に併設されたそこそこ大きい小屋のようなところを指差す。

看板には"ジャックジャック"の文字と、近付くにつれて少しの生臭さ。

入り口の自動ドアが開くとチリンチリンという鈴の音のような音が響いた。


中は大きめの簡単なカウンターがあるだけで外観の大きさに反してこじんまりとしている。

カウンターの後ろに一回り大きい両開きのドアがあるから、その先が広いのだろう。


入店音に気付いてか両開きのドアからガタイの良い筋肉質のオジサンが出てきた。

アリシアは軽く手を振って挨拶するとゴツイ筋肉質のオジサンに頼んで1匹分の肉だけ残してもらい、残りは全部買い取ってもらうよう注文した。


10分ほど待つと5~6kgくらいの肉の塊がビニール袋に入れられて、代金と一緒に持ってこられた。


持ってきた代金に納得がいかないのか、アリシアは筋肉質のオジサンと値段交渉を粘っているようだ。


やれやれといった顔のマリネに奈白が尋ねる。


「ここって買い取りや解体とかしてくれるとこで、オケ?」

「まぁ、そうですね。そんな感じです。元々は加工場だったらしいですが、ギルドと合併する際に拡充工事ついでにギルド直営の何でも屋みたいになったようです」

「へぇー」


不満そうなアリシアがドスドスと歩いて戻ってくる。

どうやら交渉は失敗したようだ。

というか、交渉というより一方的なワガママに近かったのかもしれない。

綺麗な毛が残ってるものは割りと良い値段になったようだが、燃えたものはやはりそれなりの値段だった。


売却が終わると隣のギルド会館に移動し、アリシアは一番近くの受付の女性に依頼内容に関する情報が入ったエニーフォンを提示した。

受付の女性は慣れた手付きでエニーフォンを備え付けの機械にかざすとパソコンのような物にタタタンと何かを打ち込みアリシアに返却した。


「確認完了しました!対象はもう売却されたのですね、お疲れ様です」

「あ、ごめん。全部コインでもらってもいい?」

「はい!かしこまりました。ではこちらが討伐報酬となります」

「どうもー」


幾らかの貨幣が支払われ、アリシアが受け取ると同時に「ありがとうございましたー」という受付の女性の優しい声色が静かに響いた。


「報酬の2000リルと合わせて全部で2700リルか、分けづらいわね」


リルがこの国でのお金の単位のようだ。

お金を眺めながらアリシアが渋い顔を見せる。


「まぁいいわ。奈白は1リルも持ってないみたいだし 、700渡そうと思うけどいいわよね?」


アリシアがマリネ達に確認を取る。


「えぇ、構いませんよ」

「イイっすよ」

「…うん」


みんなの快い返事にアリシアはニッと笑い、700リルと500リルずつで分配した。


「おし。みんな、お疲れ様っ!」


恐らくだが、仲間が承諾することを見越しての質問だったのだろう。

多少の頑固さを孕んだ優しさが彼女にはある。


「本当に良いの?多めに貰っても?俺気絶してただけなんだけど」

「みんなイイって言ってんだから、何か自分に合う武器でも買ってみたらいいんじゃない?でも次からはなるだけ等分だからね」

「お、おう!」


とりあえず今日の仕事は終了し、ギルド会館前で一応の解散。

各々行きたいところへと向かうことになった。


マリネは手に入れたお肉を一度トワイライトガーデンの冷蔵庫へ入れに。

リグナスは目的もなくぶらぶらと。

コナは最近出来たというアクセサリーショップへと向かった。


アリシアはまだ街に慣れていない奈白に色々教えてくれるという。

奈白もその言葉に甘えさせてもらい、一緒に色々と見て回ることにした。


「とりあえず、先に覚えておいた方が良いのはアレかな?」


アリシアはスーパーマーケットのような店の入り口付近にあるゴミ箱程の大きさの機械を指差した。


「ん?何なんだアレ。…そういや街中いたるところで見掛けた気もするな」

「あれがポイント君。ほんとはちゃんとした名前があるみたいだけどみんなポイント君って呼んでるわ」

「変な名前」

「まっ、実際使ってみたら分かるわよ」


そう言いながら機械の方に近付いていく。

円柱形の機械で、上の面は何らかの表示が出ており画面のようで、見やすいように少しこちらに向けて角度が付いていて斜めになっている。


「なんでも良いからこうやって自分のカードを画面に読み取らせたら、あとは手をかざすだけ」


アリシアは自分のギルドカードを機械の画面にかざして認証させると、リュックにしまってから右手のひらを同じように画面にかざした。


すると画面と手のひらが共鳴するように淡く光り、機械の胴体部分に光が流れていくようなエフェクトの演出が流れる。


「これで終わり。どう?簡単でしょ?」

「…あ?あぁ。これは何が起きてるんだ?」

「自分の残ってる魔力をこの機械を通して提供してるの。これがどっか秘密の施設に送られてマジックセルを作ってるんだって。国のみんなが魔力提供してるお陰でマジックセルが大量に作れるから安く買えるって訳。それに提示したカードにお礼として買い物とか他にも色々なのに使えるポイントがもれなく貰えるからWin-Winなの。まぁ1人につき1日1回しかポイントは貰えないんだけど」

「へぇー、確かにやった方がお得か」


「ちゃんとあんたもやりなさいよ?大量に作られはするけど出来たマジックセルは結界の維持や街中の電力としても大量に使われるんだから」

「よく知ってんな」

「生活に関わる大事なことだからみんな学校で習うのよ」

「なるほどな。で余った分が売りに出されるって感じか」

「まぁ大体そんな感じね。特殊な倉庫にも大量にストックされてるらしいから、あたし達国民が心配することは特に無いんじゃない?ポイントをありがたく貰うだけよ。さ、やってみて」


奈白は見よう見真似でギルドカードを機械にかざした後、右手のひらをかざした。


特に力を込める必要もなく、機械が勝手に吸い取ってくれる。


淡い光が一瞬輝いてすぐ消えた。


「あんたほんとに魔力少ないわね。まぁ貰えるポイントはみんな変わんないしいいじゃない」

「うぐっ…。そういやギルドカードって買い物に使えるの?」

「もちろん使えるわ。1ポイント1リルで」


ポイント君と呼ばれる機械の表示画面に <御協力ありがとうございます。10ポイント!> と表示されている。


「700リルって何が買えるの?」

「安い武器ならちょうど1つくらい。アンタがさっき使った使い捨ての魔道具なら2~3個買えるくらいかしら」

「普通の武器は時間で消えたりしないんだよな?」

「消えないけど、折れたり壊れたりはあるから結局どっちも持ってる人が多いけどね。あ、古い魔道具ならリグナスがくれるかもよ?近接武器なら何でも使えるからって色々買ってきては結局お気に入りの武器ばっか使って、魔道具は箱に放り込んでるし」

「んじゃあ、魔道具はちょっとリグナスに相談させてもらうか。どんな武器種が自分に合ってるのかもまだ分かんないし」

「じゃ、せっかくだしスーパー寄ってく?」

「行く行く。歯ブラシとか無いし、日用品がどのくらいの値段なのかも見ときたいし」


早速自動ドアから店内に入ると涼しい風が身体を包む。

クーラーが効いていて心地良い。


「はぁ涼しぃー」

「生き返る~」


二人とも自然と表情が緩む。


「ちょっと。生き返るとかやめてくんない?恥ずかしいんだけど」

「そっちも結構大きな声だったぞ?」

「声の大きさじゃなくて、セリフがジジくさくて恥ずかしいのよ」

「なんでだよ」


軽く言い合いながら店内を進んでいく。

店内はスーパーマーケットらしく食品、日用品、雑貨、簡単な衣類等、日常生活に必要なものはここだけでだいたい揃うような品揃えだ。


魔法関係の物もあるがそこまで多くはない。

魔力を込めると冷めないコップや、マジックセルをはめて使うアウトドア用品、魔力を遮断する布等、棚の一角にちょっとしたコーナーとしてまとめてあるだけだ。

もっと多様な物はちゃんとした店で買えということだろう。


「スーパーには魔道具ってあんまり売って無いんだな」

「あー、そうね。魔力を込めて使う系のは売ってるけど、魔力が宿ってるようなやつは専門店じゃないとね。管理が必要だし、とーぜん武器なんかは売ってないわよ」

「へぇー」


軽く流し見しながら色々と見回る。


飲み物はだいたい60リル、惣菜・弁当類はだいたい200~300リル、日用品・雑貨等は100~500リルの物が多いようだ。


「おぉ、あったあった。歯ブラシは安いやつで89リルか…。そこそこすんなぁ。あっ、歯みがき粉ってアリシアの借り…」

「嫌よ!ぜっっったい嫌ッ!!そんなのリグナスに頼みなさいよ」


食い気味に奈白の言葉は遮られた。


「リグナス今ここに居ないしさ、もし断られたらまたここまで買いに来ないといけないじゃない?別に歯ブラシ貸してってんじゃなく、チューブをちょーっと塗るだけだよ?」

「いーやッ!!そんな高くないんだから買いなさいよ」

「…世知辛いなぁ」


物凄い拒絶に奈白は少々傷付いてしまったが、気を取り直して買い物を続けることに。


途中それぞれ別れて買いたいものを見て回った。



「合わせて247リルになります」


奈白は歯ブラシと歯みがき粉(オレンジ風味)の他に、途中見掛けて物珍しさで気になっていたへシックソーダという謎のペットボトルジュースも結局買ってしまった。


スーパーの入り口横で買ったばかりのジュースを飲みながらアリシアが出てくるのを待つ。


ペットボトルのラベルには"夏季限定、爽快。体感マイナス30℃!!暑い夏を乗り切ろう。*大量に摂取すると人によってお腹を下すことがあります。少しずつ飲んでね。"と書いてある。


「これちょっと味はグレープフルーツっぽいかな?炭酸の爽快な刺激が……ん、なんか口の中がめちゃめちゃスースーする。ふぅー、身体の中から涼しくなって夏にはちょうど良いのかもな」


数分後、アリシアが出てきた。


「…アンタ何やってんの?」


見ると両手で鼻と口を押さえて直立不動で固まっている奈白がいた。


「息…すると……寒い」


なるべく空気が出入りしないように息を止めて、押さえながら途切れ途切れ話している。

奈白の足元を見ると残りがわずかになったへシックソーダが置かれていた。


「うーわ、アンタもしかしてへシックがぶ飲みしたの?…ねぇ、ちょっと口見せてよ」


奈白がゆっくりと手をどけると、上唇辺りがペットボトルの飲み口と同じくらいの大きさに丸く青く色付いていて、まるで青い口紅を塗るのに失敗したかのような感じになっていた。


「…ぷっ、アハハハハッ!もぅバッカじゃないの!?ハハハハッ」


身体内部の寒さに苦しむ丸い青口紅の奈白を見てアリシアはお腹を抱えて笑っている。


「アハハ。ふぅー…冷たさは数分したら元に戻るから、うし…後ろ向いててよ。ぷっ、恥ずかしいから」


ーーー数分後、トイレから奈白が戻ってきた。


「なによー、顔洗っちゃったわけー?…どぉ?もう落ち着いた?」

「あぁ。…いやぁ、呼吸するたんびに口も内臓も冷凍庫にぶちこまれたように凍えて死ぬかと思ったよ…。青くなるおまけも付いてたし」

「まぁ、実際に体温が下がるわけじゃないんだけどね。でもいい勉強になったんじゃない?ここのメーカー、緑色の苦いトマトケチャップや酸っぱいお歯黒チョコレートとか変わった商品ばっかり出すんだから。絶対に小学生が考えたやつ笑いながら採用してるわよ」

「ジョーク商品かよ…」

「あーあ。写真撮っとけば良かった。へシックにがっつり引っ掛かってる人久々に見たし。ま、味はけっこう美味しいのよね。少しずつ飲んだら涼しいし」


「…少し残ってるけど、飲む?」

「いらないわよ!しかもそれあんたの飲みかけじゃない」

「俺トラウマでしばらく飲めそうにないんだが」

「ギルドの冷蔵庫にでも入れといたら?あ、名前書いとかないとリグナスが飲んじゃうかもよ?」

「…じゃあこれには名前書かない方がいいな」

「うーわ、あんた悪いわねぇ。そーゆーの何て言うか知ってる?」

「…誘い罠的な?」

「しらなーい」

「…なんだよ」


夕日の朱が、建物の間から優しく射し込む。

帰り道の分からない奈白は、アリシアの少し後ろを付いて歩いていた。


「何か他に知っておいた方がいいとこってある?」

「うーん、そうねぇ。まだまだいっぱいあるけど、今日のところはあと巫女様かなぁ?あんたもお世話になることがあるかもしれないし。帰り道の近くにあるから寄ってく?あんまり世話にならない方がホントはいいんだけど」

「なにそれ、ちょっと怖いんだけど」

「あたしもちょっと苦手なのよね。あー、そこそこ」


アリシアが顔を向けた先には普通の家々が建ち並ぶ中、その場所近辺を避けたように不自然に建物が途切れており、周辺とは孤立したような、はたまたはその場所が広大な敷地を有しているが為なのかは不明だが、都会の中にちょっとした林があって、その中に神社と教会が合わさったようなお屋敷が建っていた。


玄関前には広場があり、広場は30メートル四方ほどの広さで装束を着た巫女っぽい女の子が数人と、冒険者なのか参拝客なのか色んな服装の人が十数人集まっていた。


広場にはちゃんとした屋根も大きく備えられており、その下に様々な装飾品が規律正しく並べられている。


よく見るとその集団の中に2名ほど倒れている人がいて、それを囲むように巫女がゆっくりと歩くように踊りながら鈴のようなものを鳴らしていた。


「おい、人が倒れ…」

「しっ。黙って見てて」


アリシアに制された奈白は黙って一緒に広場の入り口から遠巻きに眺めることに。


間もなくして、巫女の1人が並べられた装飾品の中にある液体を片手でサッと触ると、その手で印を切りながら手に付いた液体を倒れている人達に振りかけた。

右手で印を切るたび、左手に持った鈴も凛と鳴く。

それを数回繰り返すと、ほのかに倒れている人の身体が光り、数センチほど浮き上がった。


そして浮き上がった身体がまた地面に着き、身体の光が消えると、倒れていた2人は目を覚まして起き上がった。


それを見て周りの人達は口々に巫女に礼を言い、倒れていた人達と笑顔で抱き合ったり、涙を流して喜んでいる人もいた。


「これって…?」

「生き返ったのよ。ちゃんと(・・・・)ね」


この世界では死んだ人間は生き返ることが出来るのだ。

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