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インビジブル  作者: あおいろもなか
12/12

電車

さっそくアリシアはエニーフォンをかざして改札を通っていく。

続けてマリネとコナも同じように改札を通る。


「旦那も切符派っすか?おれもあんまし機械苦手で、現物が手元に無いとなんか落ち着かないんっすよねぇ」


ヘヘヘっと笑いながらリグナスは券売機の操作を始める。

それを見てすぐに奈白は近くに寄って買い方を眺めた。


「オレも機械には弱くてさ。ちょっと買い方も教えてくんない?…ねっ」


いまいち把握しきれず、両手をパンッと合わせてリグナスに頼み込む。


「あ、イイッすよ!じゃあこれが師匠からの最初の教えっすね!」


リグナスがちょっと嬉しそうにしながら切符の買い方を説明していく。

ちゃんと聞いてしまえば何て事はなく、レイアウトや表示に多少の違いはあるものの奈白の世界の物とそう違いはなかった。


「おぉ、買えた買えた!ありがとう!」

「まっ、師匠なんすからこれぐらい当然っす!」


誇らしげに鼻を(こす)るリグナスの後ろから、おそーい!とアリシアの急かすような声が聞こえ、2人は駆け足で改札を抜けた。


ホームにある時刻表によると北門を通る電車は大体30分間隔くらいで通っているようだ。

数分と待たずに目的の電車がやって来た。

なんだかんだで現時間は6時30分くらい。

すでに乗客もそれなりに乗っていた。


みんなで乗り込み、空いていた横並びの座席に座る。


ドアが閉まり、走り出すと同時にコナは座席に膝立ちして車窓の外を眺め出した。


「コナっち、座るとこあんまし汚さないよう気を付けるっすよ」

「…ぁーぃ」


「着くまであたし少し寝ててもいい?」

「まぁ早かったですし、しょうがないですね。奈白さんもどうぞ、着いたら私が起こしますので」

「あぁいや、俺も起きとくよ。景色も気になるしさ」

「そうですか」


マリネはそう言って優しく微笑むと自前の小説か何かを開いて読み始めた。

奈白の隣で小さく「おやすみぃー」と聞こえたかと思うとアリシアはもう寝息をたてて寝ている。

マリネの肩に頭を預けて器用なものだ。


奈白は対面の車窓に映る景色をぼんやりと眺める。

流れる街並み。

心地の良い揺れ。


見慣れない建物が見えるとなんだろうかと目を凝らしてみるが、近くの建物はすぐに流れていく。

少し遠くに見えるデカイ建物は商業施設のようだ。

また少し進むとだだっ広い公園のようなものも見える。


奈白は目が疲れたのか眉間をつまむようにして目を閉じ、ちょっと眼球をやすませていると気付いたら案の定眠ってしまっていた。


「…しろさん。奈白さん、もうすぐ着きますよ」


マリネがアリシア越しに手を伸ばして奈白の体をトントンと優しく叩いて伝える。


「…あ?」


上を向いてだらしなく開いていた口の端からよだれが垂れている。


「きたなッ」


奈白がゴシゴシと腕でよだれを拭うと、先に起きていたアリシアは跳ねるようにとっさにマリネの方に身を寄せた。


「…あれ?いつの間にか寝ちまってたのか」

「駅着いたら手と顔、ちゃんと洗っときなさいよ?緊張感が足りないのよ、緊張感が」

「わりぃわりぃ…ん?つーか、おめーも寝てただろうが」

「あたしはあんたみたいにヨダレ垂れ流してないから」

「ほんのちょっとだろ?汗みてぇなもんだろ。ね、マリネさん?」


「私に振られましても…」


急に話を振られてマリネが少し困惑した表情を見せる。


「リグナス…いや、師匠もそう思いますよね?」

「し、師匠っ!?そ、そうっすね!オレも寝てたらけっこうヨダレ出ちゃうほうっす」


リグナスは師匠と呼ばれて嬉しいようなちょっと恥ずかしいような表情で腕組みしながら答える。


「ほらヨダレ派だ。しかも師匠はヨダレでも硬くなれんだよ」


決して奈白は意図してない発言であった。


「なんの話なのよ?ったく、恥ずかしいからやめてよ。知り合いと思われるじゃない」


周りの目を気にしてアリシアが顔を伏せ、完全に奈白をシャットアウトする。

隣に座っているが確実に見えない精神的な壁が一時的に作られているようだ。

奈白が話し掛けようものなら不自然に口笛でも吹いて無視を決め込むような雰囲気がある。


謎に膠着した状態が続き、アナウンスが鳴る。


"次は北部自然公園前駅ぃ。降り口は~…"


「あ、みなさん次で降りますよ」

「もう着いたのね」

「あいよー」

「…あーい」

「オケっす」


マリネが声を掛けると、返事をしながら忘れ物が無いか各々チェックし降りる準備を始める。


次第に減速していき、駅に着くと開いたドアから外に出た。

電光掲示板に付いている時計を見るとほぼ1時間近く乗っていたようだ。

奈白がぐぅーっと背伸びをする。


言われてた通り駅構内のトイレで奈白は顔と腕を洗うと、外で待ってたみんなと合流した。


「おまたせー」

「じゃっ、行こっか」


駅から北の門までは歩いて15分ほど。


そこから北の森まではさらに歩いて2時間ほど掛かる。


「10時くらいには着きそうですね」

「そうね。なんだかんだ良い感じじゃない?」

「ふふっ。そうかもしれませんね」


「この前はあんまし深くまで入んなかったっすけど、やっぱ何かいるっすかねぇ?最近変な噂あるっしょ?」

「あー、魔物のことでしょ?」


「あぁ、前にアリシアと奈白さんが巻き込まれたっていうやつですね」

「そーいえばなんか衛兵の隊長っぽい人が魔族の動きが活発になってきたとかなんとか言ってたわね。あんなのが何匹も出てこられちゃこっちも困るんだけど…。ま、そんなニュースもあれからは無いし…一応気を付けとくってことで」

「まったく、そんな適当な感じでいいんですか?」

「あたしたち生きてるし。ね?」


「ん?…ね、って言われても俺は死にかけたんだが」

「…マモノ、出る?」

「んー。出ると思えば出るし、出ないと思えば出ないよ。…知らんけど」

「…ぉお。きもちが大事!…知らんけど?」


コナが不思議そうに首を傾げる。


「いやいや、オバケじゃないんだから。勝てそうなら勝って、無理そうなら全力で逃げるわよ」

「…ぉお。なんとかなる?知らんけど!」

「いや、まぁ…って、奈白の言葉は真似しなくていいから」


話ながら、とりあえず北の森へと向かって歩き続ける。



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