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始まりの大陸へ

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「マジで扱いやすいな無型、火力がそこまで出るわけじゃないからメイン火力としては採用できないけど、左手に装備してサポート役で使うのはありだな」


 そんな呑気なことを考えながらもすぎなの視線は獣型へと注がれていた、ただでさえ難しい傀儡師という職業、しかし、説明文に難しいという単語は使われていない、使われていたのは獣型の説明の時だけである。

 前二つが予想以上に早くマスターできた反面、傀儡師という職業が高難易度たる所以は獣型からきているのではないか。


「何はともあれやってみるしかないか」


 この時すぎなは明らかに調子に乗っていた、自分では気付いていないが想定以上に早く人型と無型をマスターすることが出来たためいくら難しいといえどそこまで時間はかからないだろう高を括っていた、慢心というのはいつでも心の中にいる。


 オオカミを模したような獣型傀儡を装備し練習を開始する。

 対応している部位は人型と変わらないが動物への理解がない人間にとって動物がどういう原理で動いているのかを想像することすらできなかった。


「歩くことすらできない」


 獣型の練習をし始めて一時間歩くことすらできない状況が続いていた、なぜうまくいかないのか気づいてはいるものの克服するためには相当時間がかかることが分かっているためどうにかズルできないか悪あがきをしている。


「大人しく調べるか狼の体の構造」


 まず初めに体の構造を頭に叩き込む、重心操作を求められるためどう体重を支えるのかを理解しなければならない。

 次に狼が走っている動画見まくる、踏み込むタイミング切り返すときの足の位置重心の取り方。

 どう攻撃するのか受け身はどうするのか、座学を開始してから二時間が経過したところでやっと操作練習に取り掛かる。


「うわぁぁぁああ!!!すげー全然違うじゃねーか!!!」


 知識を入れる前が嘘だったかのように次どうすべきかが想像できる、一時間なんの成果も得られなかった座学前に比べもはや違う生き物のような動きをする獣型傀儡に感動さえ覚える。


「使えるようになって初めてわかるけど狼って初心者向きだな」


 機動性重視のスリムなボディー、腰より低い位の大きさのためプレイヤーにもできない動きができる反面攻撃手段が口で噛みつくことぐらいしかできないというデメリットもある。


「チュートリアルの終わりが見えてきたぞ」


 初手の感覚では三日は固いと思っていたが、深夜三時前サービス開始から七時間弱想定よりも早く終わる兆しが見えてきた。

 どうやら俺は自分のことを過小評価しすぎているらしい、幼少期からの経験からか自分に対しても無意識化で遠慮してしまってる、俺みたいなのがそんな優秀な訳がない才能のない凡人であると、しかし、そうではなのかもしれない才能のある人間が遠慮して凡人の可能性を奪ってしまうことが何よりも残酷であると兄や姉を見て理解している。


「もう凡人としては生きるのはやめよう」そう心の中で決めた。


 すぎなにとって途轍もなく大きな一歩、今まで自分を卑下しながら生きていた人間が自分を正しく評価することの難しさ、自分すら信用できないことの悲しさ、今までと違う自分になることへの怖さ、傍から見て何か変化したと気づける人はごく少数だろう、ただ、それが成長という物なのだろう。


 成長したすぎなにとって傀儡子のチュートリアルなんて朝飯前である。


『ミッション1達成』

『ミッション2達成』

『ミッション3達成』

『ミッション4達成』

『ミッション5達成』

『傀儡師のすべてのチュートリアルを達成しました、10秒後始まりの大陸エーゲルに転移します』


「いよいよ俺のRoLが始まるのか」


『転移します』


 目の前が白い光で覆われる、目を開ければ中世ヨーロッパのような街並みが視界一杯に広がっている。


「ここがエーゲルか」


 転移先は広場のようになっており初日ということもあってか六時間たった今でも人でごった返していた。

 最初にどこへ行こうかキョロキョロしていると周りがざわつき始める、なにか珍しい人でも来たのかと思い見渡しても誰もいない、ざわついている人の視線をたどるとなぜか俺を向いている、不思議に思っていると一人の男の子が話しかけてくる。


「その装備は傀儡子ですか!!」


 その一言でこの状況のすべてが理解できた、RoLは職業によって初期装備が違うため転移した瞬間装備を切り替えていないタイミングでは服装で職業を判断することが出来る、ということは俺が傀儡子であることがばれているということである。


 さてどうするべきか、ここでしらを切ってもどうしようもないことぐらいは容易に想像できる、かくなる上は。


「あの~すいません、チュートリアル終わったんですけど傀儡師ってばれて囲まれそうなんで助けてください」



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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