祝福の天使は喇叭を吹く
祝福の天使は喇叭を吹く。
それが彼の使命。
神の愛し子・人間達に、影のように寄り添いながら。
ささやかな思いやり。
自覚すらあやふやな優しさ。
微笑みかけ、声をかけ、沈んだ心へ元気を届ける、数多の無名の人の許へと。
祝福の天使は喇叭を吹く。
発した本人でさえ気付かない、ささやかすぎる善の光を寿ぐ為に。
思いやりに。優しさに。微笑みに。声かけに。
祝福の天使は喇叭を吹く。
思いやりが心へ届くよう。
優しさが胸にしみるよう。
微笑みが乾いた瞳を潤すよう。
声かけがすんなり耳の中へ入ってゆくよう。
願いながら天使は、ささやかな善を寿ぎ、喇叭を吹く。
そのささやかな音色がたとえ、喧騒に紛れてしまっても。
あるいは、怒りを抱えた人々が刺々しく交し合う声に、かき消されそうになったとしても。
祝福の天使は喇叭を吹く。
朝に、昼に、夜に。
決してあきらめることなく。
それが彼の使命……否。
彼の、心が選んだ、望みだから。