小公爵、子爵令嬢を救う 2
ー小公爵Siteー
「なら、話しは早いです。エリーゼ嬢との養子縁組を進めてもらいたいです。」
「はい。そちらはお任せを。では、私からも小公爵にお願いが。」
「願いとは?」
「エリーゼの養子の手続きが完了しましたらシールズ公爵家の分家でガレント商会と取引のあった家へ他の商会へ変更するよう通達をしてもらいたいのです。」
「何故です?」
「オリバーには商才の欠片もありません。
それに、彼は根っからの怠け者。恐らく、彼女の叔父が後見人を装っていると思われますが、あの男も負けず劣らずの怠け者。商会がなくなるのも時間の問題ですから。」
「なるほど。ただ、それでは気がかりなことが…」
「はい?何か?」
「エリーゼ嬢が商会が潰れてしまうことをどう思うか…。
彼女は自らも店頭へ立ったり、商品の管理等、子爵夫妻と共に頑張ってきたのです…
あの地に根ざしたガレント商会。彼女が両親と築き上げてきた場所…それがなくなってしまったら…」
「それはそうですね…。」
そのとき、同席していたトマスが発言した。
「坊っちゃん、ノーブル伯爵に買収の依頼をしてみては?」
「ノーブル家か…
トマス、確かに良い案かもしれない。
侯爵、コリンズ侯爵の分家だが商会を持っているノーブル伯爵家を知っていますか?」
「ええ。存じております。若奥方の生家ですね?」
彼は頷き、話しを進める。
「そのノーブル家にガレント商会を買収できるように、動いてもらうのはどうでしょうか?」
「なるほど。確かにそうすれば、ガレント商会の名前は消えてしまうけれど、あの場所にエリーゼの思い出の商会は残ることになる…。ということですな。それでしたら、現当主ではなく次期当主のフェリク殿を経由して頼むのがいいかと。」
「わかった。早急にフェリクへ手紙を書こう。
侯爵、時間をとってもらってありがとうございます。」
「いえいえ。小公爵、エリーゼはこれから侯爵令嬢として生きていくことになります。貴方様の気持ちを知っておきながら、婚約者を充てがうようなことはいたしませんが何分、エリーゼは容姿がいいので…。そんな子が侯爵令嬢になれば、
いろんな家からお声がかかるやもしれません。当面はまだ社交に慣れていないので流しますがあまり悠長にされてますと…」
侯爵はニタニタしている。それをみたハルトは苦笑する。
「侯爵、止めてくださいよ…ウォルト家とは仲良くやっていきたいんですから…。」
と力なく返事をするのだった。
程なくして、エリーゼは母親の遠縁にあたるウォルト侯爵家の養子となり、ガレント商会は彼女の兄のオリバーが継ぐことになった。
が…ウォルト侯爵が言っていたように商才が全くなく、怠け者だったオリバーは簡単にノーブル家の策に嵌り、商会を手放すことになった。
しかし、ガレント子爵夫妻の事故がオリバーと親戚の計画だったことが判明し、実行犯は死罪となり、計画を立てたオリバーと親戚は国で最もキツい炭鉱で一生の強制労働に従事することになった。
その報告がハルトの元へ届いたのはエリーゼとの再会?初対面が叶う数日前だった。