告白 2
「エリーゼ、着いたよ。」
トールの店から長いとも短いとも取れる沈黙の中、歩き続けて来たのは綺麗な花畑だった。
「とても綺麗ですね…」
「うん。ここは、俺の母上が好きだった場所で
小さい頃は仕事を抜け出した母上がよく連れてきてくれていたんだ。」
「あ…」
ハルトの母親は彼が小さい頃に亡くなっているのだ。
公爵という立場上、公爵夫人が不在なのは貴族社会では困ることもあるからと周りは再婚を後押しするが、公爵は全ての意見を跳ね除け、生涯をハルトの母親だけに捧げているという話しは
貴族社会では有名だ。
「母上が亡くなって、もう10年以上経つけど、ここはいつ来ても昔と変わらないんだ。誰が整備しているんだろうけどね。」
「昔からこんなに素敵にお花が咲いていたのですね…。一枚の絵画のようですわ…。」
「そうだね。エリーゼ、ちょっと座って話そうか?」
「あっ、はい…。」
ハルトはハンカチを地面に広げてエリーゼを座らせ、自身も横に座った。
「ふふ。お花の絨毯みたいですね。」
「そうだね。母上も同じこと言ってた。君と考え方が似ているのかな?
よしっ!出来た。エリーゼ、手を出して?」
エリーゼは言われるままに右手をハルトに差し出した。彼は優しく手を取ると、器用に編んだ花の指輪を薬指に通し、エリーゼの手の甲に触れない程度のキスをした。
「エリーゼ、君を急かしてはいけないと何度も思い留まったけど、君に対する気持ちが日増しに強くなってしまうんだ。
だから、もう一度、言わせてほしい。」
「ハルト…様…。」
「エリーゼ=ウォルト嬢。俺は君のことを愛している。どうか、この俺ハルト=シールズと結婚してほしい。相手は君以外には考えられない。」
ストレートにエリーゼの目を見つめてハルトは想いを告げる。熱を帯びた視線をハルトに向けられたエリーゼは微笑みながら、返事をする。
「ハルト様、ありがとうございます。私も…貴方様を愛しております…。」
エリーゼの頬を涙が伝う。涙で声が上擦ったがそれでもエリーゼは言葉を続けた。
「ハルト様に…ずっと…お返事が…出来なかったのですが…きっと…私は初めてお会いしたときから…」
言葉の続けきをエリーゼは言うことが出来なかった。
彼女はハルトに抱きしめられ、彼の胸に閉じ込められてしまったからだ。
「エリーゼ、嬉しいよ…。ねえ、顔上げて…。」
エリーゼは顔を上げてハルトを見つめる。
「泣かせてしまったね…。泣き顔も愛おしいけど、いつまでも泣いていると困るな…例え、嬉し泣きでも…」
ハルトはエリーゼの頬に手を添えて、指で涙を拭う。
「可愛すぎるでしょ…」
エリーゼの顔は泣いたのと高揚で真っ赤になっている。
「ハルト様は…意地悪ですわ…」
「ごめんね。君の前では周りが勝手に作り上げた貴公子とかいう仮面は被っていないから。素の俺は君にだけ意地悪だよ?
エリーゼ、愛しているよ。」
「…私も愛しています…。」
ハルトの顔が近づき、エリーゼは目を閉じた…。