告白
「ハルト様、あのお店を見ても?」
エリーゼが指したのは小物が売っているこじんまりした店だった。
「昔、よく行っていたお店なのですが、私の本当の両親が亡くなった直後に、あの店の店主も亡くなって今は息子さんが継いでいるはず…」
「リゼ!!」
ハルトにお店の説明をしていると、店からひとりの男性が出てきた。
「トール!元気だった?」
トールと呼ばれた男はエリーゼとハルトを交互に見てから、返事をした。
「オレは元気にやってるよ!リゼは?いいとこの家に引き取られたって聞いたぞ?」
「うん。お母さんの遠縁の侯爵様に引き取ってもらったの。おばさんは?元気?」
「ああ。お袋も元気にやってるよ!で、リゼ。隣の貴族は…?」
「えっ、あ、こちらはハルト=シールズ様。お姉様の友人で、今日はノーブル商会へ連れてきてくれたの。」
「ふーん。付き合ってんの?」
「えっ!?」
「エリーゼ、それは俺も気になるな。」
ハルトがトールの意見に同意する。返事を迫られるエリーゼだったが
「こら!トール!エリーゼちゃんが困ってるでしょ!」
トールの母親が出てきてトールを叱ってくれたお陰で話は有耶無耶になった。
「エリーゼちゃん、見違えたよ。もともとキレイな子だったけど、もっとキレイになったよ。」
「おばさん、ありがとう…。」
「貴族様もうちの愚息がすみません…」
「いえ。彼女の意外な一面というか昔の雰囲気が知れて嬉しかったですから。」
「そうかい?あっ、ちょっと待ってて!」
トールの母親は店から何かを持ってくる。
「これ。平民が造った物で悪いけど…」
エリーゼとハルトに渡されたのはブレスレットだった。
「わあ!キレイ!おばさん、いいの?」
「こいつが迷惑かけたお詫びよ。」
「トールくんのお母さん、素敵な物をありがとうございます。大切にしますね。」
「あら?本当に貴公子ね。」
「おばさん、ありがとう。また来るね!トールもまたね!」
「ああ、またおいで。」
「今度はひとりで…」
「この阿呆!」
トールはまた母親に叱られるのであった。
「ねえ、俺もふたりきりのときはリゼって愛称で呼んでもいい?」
トールと別れた直後に、ハルトはエリーゼを見つめる。
「えっと…」
「トールくんには呼ばせていたよね?」
「あ、あの…トールは幼馴染なので…」
「エリーゼは酷いね…」
「えっ…?」
「俺の気持ち知ってて、トールくんと親しげに話すなんて…それに、俺には敬語なのに、彼には普通に話してるし…」
「ハルト様…」
「…ごめん。今のは醜い嫉妬だ…忘れて…。行こうか?行きたい所があるんだ。」
ハルトはエリーゼの手をとってゆっくりと歩きはじめる。
「「…………」」
ふたりは沈黙する。
(いつもハルト様といるときはこの静かさが嫌ではないのに、どうして今は嫌なの…な、何か喋らないと…)
エリーゼは思考するも、ハルトにどう声をかけていいのか悩んでいた。
(はあ…嫉妬するとか大人げないだろ…リゼに嫌われたら生きていけない…はあ…俺、最悪だ…)
ハルトはトールに嫉妬したことを反省していて、エリーゼにどう声をかけていいのか悩んでいた。