おでかけ 2
「さて、第一の目的は達したよ。」
馬車に戻るとハルトはそう告げる。
「第一ということは第二があるのですね?」
エリーゼはハルトに確認をする。
「ああ。流石にあれだけではデートにならないからね。」
「やっぱりデートなんですね。これ…。」
「そうだよ。初めて、ふたりきりで。」
「あ、あ、えっと…」
今まで、マリアとサイクスが一緒だったのであまり意識していなかったエリーゼだがハルトにふたりきりを強調された途端に恥ずかしくなってきてしまった。
「照れてる君も本当に可愛い。」
「は、恥ずかしいです…み、見ないでください…」
「君の願いは聞いてあげたいけど、それは出来ないかな?こんなにも可愛いんだから。
あっ、到着したみたいだ。」
馬車の扉がノックされ扉が開かれる。降りた先は露店がいくつもある大通り。
「懐かしい…」
エリーゼは子爵令嬢のときに何度も通った大通りを久しぶりに見れて感動に浸っている。
「俺も、小さい頃はサイクスとフェリクと遊びにきていたんだ。」
「そうだったのですね。そういえば、お披露目会でフェリク様と奥方のコレット様とお話させてもらったのですが、コレット様はノーブル家のご令嬢だったのですよね?」
「そうだよ。だから、フェリク経由でコレット夫人から伯爵に話しをしてもらったんだ。」
「そういう、裏もあったのですね。
ハルト様は隠し事が多いですわ。そのうち、私がウォルト家に養子になったのも、ハルト様の働きかけなのではと思ってしまいますよ?」
「鋭いね…。」
「えっ!?そ、そうなのですか!?」
「俺が働きかけなくても、ウォルト侯爵は君を引き取ろうとしていたけどね。」
「お父様が…」
「夫人は君の母親と仲が良かったから、そうするつもりだったみたいだ。」
「そうだったのですね。」
「さて、立ち話もなんだから、見て周ろうか?」
「はい。」
「おや?ガレント商会の嬢ちゃん?」
歩き始めて数刻で彼女の元には馴染みだったお客が集まってきた。
「皆さん!お元気でしたか?」
「ああ。元気だよ。商会の名前が変わって驚いていたけど、しかし、前以上に綺麗になって。横の貴公子は婚約者かい?」
「お姉ちゃん!キレイなのー!」
「隣の兄ちゃんはかっこいいな!」
「皆さん、こちらの方は…」
「皆さん、はじめまして。私はエリーゼさんを口説いている最中のハルトと言います。」
ハルトが恥ずかしげもなく言い放つ。
「嬢ちゃんを?」
「お姉ちゃんのこと好きなの?」
「うん。私はね、エリーゼさんのことが大好きなんだ。」
「ふふ。お兄ちゃんは私と一緒だね!
私もエリーゼお姉ちゃんが大好きだもの!」
「オレも!」
「エリーゼは皆に愛されているんだね。」
「ありがとうね。私も皆のことが大好きよ。」
彼女は子どもたちの頭を撫でる。
「で、嬢ちゃん。兄ちゃんへの返事は…?」
「えっ!?あ、あの…えっと…その…」
「ちょっと、あんた!こんなムードのないところで返事させる気かい?」
嬢ちゃんと呼んだ男の奥様らしき人が男の頭を殴りツッコミを入れる。
「皆さん、エリーゼさんからいい返事がもらえたら、報告にきますね。行くよ。エリーゼ。」
ハルトはエリーゼの手を取り小走りで去っていった。