おでかけ
エリーゼが兄の真実を知った日、彼女は帰り際にデートに誘われた。
「それが、今日の用事だったんだ。」
そう爽やかな笑顔で言ってくるハルトに顔を真っ赤にしながら了承の返事をしたエリーゼ。
周りにいた使用人たちはニヤニヤしながら見つめるのだった。
「おはよう。エリーゼ。」
「おはようございます。ハルト様。本日は宜しくお願いします。」
デート当日、いつもより簡素な服を着たハルトがウォルト家へ迎えにきた。
「エリーゼ、とても可愛いよ。さっそく、行こうか?」
手が差し出される。さらりと褒めるあたり流石は貴公子だとエリーゼは思った。
彼女はその手を取り、エスコートしてもらいながら馬車に乗り込む。
「本日はどちらへ?簡素な服装がいいとのことでしたが?」
「うん。街に行こうと思って。この前の話しの続きがあるから、実際に見てもらおうと思っているんだ。」
「分かりました。」
「これは、小公爵にウォルト嬢。いらっしゃいませ。」
ガレント商会、改めてノーブル商会に到着し、応接間に案内されると会頭自らが対応した。
「伯爵、急な訪問にもかかわらずありがとう。」
「いえいえ。ウォルト嬢はお披露目会で少しだけお話しただけでしたね。
改めて…。私はここの商会の新しい会頭ノーブルと申します。」
「エリーゼ=ウォルトです。」
「さて、ウォルト嬢に会っていただきたい者がおります。通しても?」
エリーゼとハルトは頷く。
「エリーゼさん!!」
部屋に入ってきたのは商会の中でも一番の働き者だった従業員だった。
「ご無事で、何よりです…私、辞めなくてよかった…」
「全員とまではいきませんでしたが、ガレント商会のほとんどの従業員がノーブル商会になってからも働いております。」
「そうなのですか!?」
「はい。皆ガレント子爵夫妻と貴女に恩があるので。と継続して働いております。」
従業員が言葉を続ける。
「先代様が亡くなって、最初のうちはエリーゼさんが残してくれたもので何とかなっていたのですが…段々と立ち行かなくなってきて…本当にこのままではという直前にノーブル会頭がお越しになって。」
「ここの商会を伯爵様は助けてくださったのですね。ありがとうございます。近隣の民や従業員が困らなかったのは伯爵様のお陰です。本当にありがとうございます。」
彼女は丁寧に頭を下げる。
「いえ。お礼なら小公爵へ。
私はガレント商会が近々危なくなると情報を頂いただけですよ。」
「シールズ様が!?」
「ガレント商会にはシールズ公爵家の分家のいくつかも取引があったからね。」
「何から何までありがとうございます。」
「エリーゼさん、本当はもっと会いたいって言っていた人もいるのですが、会っていただけませんか?」
「嬉しい…。シールズ様、ノーブル伯爵様、席を外しても宜しいですか?」
「どうぞ。皆、貴女が来るのを待っておりましたから。」
「エリーゼ嬢、行っておいで。僕は伯爵と少し話しているから。」
エリーゼは従業員の控室で皆との再会を喜んた。そして、再度応接間でノーブルから兄のオリバーとのやり取りを聞かせてもらったのだった。