ガレント商会の最期… 2
ーエリーゼの兄オリバーSiteー
ノーブルがオリバーの元を訪ねてから数日が経過した。
「会頭…あの…」
商会の従業員が彼に声をかけた。
「なんだ?」
「あの、エリーゼさんは…?」
「ああ?何でエリーゼの名前が出てくる?あいつは、もううちとは全く関係がなくなっている。他の家の養子になったんだ。」
「そ、そんな!では書類の処理は誰が…?」
「そんなもん知らねえよ!お前が何とかしろよ!どうせ、親父だって会頭とは名ばかりで
他の人間が雑務とかやって…」
「そんなわけありません!先代は、1から10まで殆どをご自分で、時には奥様が、さらにはエリーゼさんも皆でやっておりました!」
「な、なんだって!?」
彼は優秀な人材を雇って働かせてガレント商会が大きくなったと思っていたが、現実は商才があった彼以外の家族の功績だったことを今知ったのだ。
「ちっ!めんどくせぇな!」
「あの…」
「さっさと、仕事へ戻れ!話しはそれから聞いてやる!」
「は、はい!!すみませんでした!」
従業員は去っていった。
(商会の経営ってやっぱ面倒なんだな…
あのノーブルとかいう男が早く来てくれれば、こんな商会とは…)
「オリバー=ガレント。書類を持ってきたぞ。」
そんなときにノーブルが執事を連れてやってきたのだ。
「ノーブル…さん。待ってました。」
彼は拙いながらも丁寧に話しかける。
「商会の経営権は?」
「ああ。ここに。これでいいか?」
「確認しよう…
問題ない。では、オリバー=ガレント。
この書類にサインをしてくれれば面倒な手続きとかは、こちらでやろう。」
「助かる…いや、助かります。」
彼は書類を読むことなく、サインをする。
「これで書類は大丈夫だ。で、だ。オリバー=ガレントよ。これからどうするんだね?」
「俺は、住むところを探すのに金が必要なんだ。だから前金を…」
「そうか。住むところがないならば、紹介しようか?少し山に入るから街からは離れるけど、寝床と飯付きだ。」
「そんな所があるのか!?」
「ああ。行ってみるかい?」
「ああ!行ってみたい!」
「だそうだ…」
ノーブルの合図とともに、騎士が部屋に入ってきた。
「お、お前たちは何だ!?」
「オリバー=ガレント。ガレント子爵夫妻殺害の計画を企てた容疑で拘束する!大人しく同行しろ!」
騎士はオリバーの腕を乱暴に掴む。
「や、やめろ!親父たちの殺害だと!?何を根拠にっ!?」
「お前とその叔父が子爵夫妻の殺害を企てたことは明るみになっている!来なければ、この場で…」
「わ、わかった!」
彼は従う他なかった…
連れていかれた先には叔父がいた。
「叔父さん!どういうことだ!?」
「ちっ!あの愚弟め、強力な後ろ盾を持っていたぞ!この国の筆頭公爵のシールズ公爵だ!そこに調査されたらもう終わりだ!しかも、ウォルト侯爵家も関わっている。この国でそのニ家に睨まれたら生きていけん!」
「ウォルト…まさか!叔父さん、その侯爵家はエリーゼの養子先だ!」
「ちっ!最初から躍らされていたのか…」
ふたりは死罪は免れたが強制労働を課せられた。
ノーブルが言ったように、寝床と飯がついた場所で彼らは一生を過すことになった。
その事実はエリーゼの耳には入らず、兄は経営ができずに夜逃げ。ノーブル伯爵がガレント商会を
救ったという筋書きにした。