侯爵令嬢に…
彼女の名前はエリーゼ=ウォルト。
最近、侯爵家に養子としてやってきた元子爵令嬢だ。
両親が亡くなり、夫人が遠縁であった侯爵家に引き取れたのだ。
侯爵も侯爵夫人もそして義姉となったマリアもエリーゼをとても可愛がってくれている。
「マリアお姉様!」
「リゼ、どうしたの?」
「お姉様がこの前一緒にいた殿方はどなたですの!?」
「リゼはまだ知らなかったわね。あの方は私の婚約者のサイクス様よ。コリンズ侯爵家の次男で、ウォルト侯爵家に婿入りするのよ。」
「サイクスお義兄様?」
「ええ、そうよ。」
「素敵な方だったわ!今度、紹介してくださいね!」
「ええ。分かったわ、リゼ。もう少し貴族の礼儀作法を覚えたら、サイクス様と食事しましょう。」
「やった!約束ですわよ?」
エリーゼは下位貴族の礼儀作法しか知らない。
侯爵邸へ来てからは、勉強の他に礼儀作法の家庭教師からみっちり指導を受けている。
エリーゼは、自分のことを心から愛していてくれているウォルト家に感謝の気持ちでいっぱいだ。
ー2ヶ月後ー
「リゼちゃん、なんだか嬉しそうね?」
お茶をしていると、彼女の嬉しそうな
表情をみて、侯爵夫人が声をかける。
「ふふ。先日、家庭教師の先生に作法を褒められた話をお姉様にしたら、近い内に、お姉様の婚約者様を紹介していただけることになりました。」
「あら?そうだったのね。」
「以前、屋敷でお見かけしたときに素敵な方だと思ったのです。更には、お姉様と並んでいたら
とても神々しくて!」
「そうね。マリアとサイクスは同年代から見目麗しいと有名なのよ。」
「やはり、そうでしたのね。素敵…。そんな素敵な方たちが家族だなんて。」
「ふふ。リゼはマリアのことが大好きなのね。」
「はい。大好きです!
あっ、お父様もお母様も大好きですわ!」
「ありがとう。私もリゼや皆が大好きよ。」
夫人は彼女の頭を撫でた。
「お母様、エリーゼ、ここにいたのね。」
二人で過ごしていると、マリアが婚約者のサイクスを連れてやってきた。
「侯爵夫人、ご機嫌麗しく。」
「あら?サイクス殿、ご機嫌よう。」
「そして、君がマリアの妹だね?」
「はい。サイクス=コリンズ様。
マリアお姉様の妹になりましたエリーゼです。以後お見知りおきください。」
「気軽にサイクスお義兄様と呼んでくれ。
私もエリーゼと呼んで構わないかな?」
「はい。もちろんですわ。サイクスお義兄様。」
「はは。男兄弟ばかりだから、女の子にお兄様と呼ばれるのはとても新鮮だよ。」
「サイクス様ったら…。
今日は晩餐をご一緒するためにお呼びしましたの。お母様、事前に報せず申し訳ありません。」
「大丈夫よ。さっきリゼから貴女がサイクス殿を紹介するときいていたところだったのよ。」
「あら?リゼはそんなにサイクス様に会うのを楽しみにしていたの?」
ふふと微笑むマリア。
「もちろんです!おふたりが並んだ姿がとても素敵なのでずっと見ていたいくらいですわ!」
興奮気味にエリーゼが言うとサイクスも微笑む。
「マリアが言っていた通り、君の妹は見ていて飽きなさそうだ。」
「ふふ。可愛らしくてついつい甘やかしてしまうんですの。」
「だろうね。エリーゼ、今度マリアと我が家へ招待するよ。兄弟も紹介したいしね。」
「わあ!ありがとうございます!」