やっぱり幼馴染とは付き合えない
「トシ、私、彼氏ができたんだ」
幼馴染の茉依子がいきなりそんなことを言ってきた。――正直困る。だって俺は茉依子のことを諦めたのだから
「そうか、良かったな」
「反応薄くない? 彼氏だよ? 彼氏!」
「知るか」
茉依子に彼氏ができたのはこれで五度目だ。最初に彼氏ができた時は枕を濡らしたものたが、今は何とも思わなくなってしまった。
「つーか、それを聞いた俺にどうして欲しいんだよ?」
「うーん、何かして欲しい訳じゃなくて……気にならないの? 私に彼氏ができたの」
「気にはなるけど……」
全く興味がないかと言うと、そうじゃない。だからと言って、何かできるかと言われても、何もできないだろう。
「あ、気になるんだ? もしさ、彼氏が嘘カレだったらどうする?」
「嘘カレ?」
「付き合ってるフリしてるだけで、本当の彼氏じゃないってこと」
「いや別に、どうもしないけど……」
茉依子は何が言いたいんだ? まるで俺の気を引くために彼氏を作ったみたいに感じられるんだけど?
「もぉ! なんでそうなるの! トシは私のことどう思ってるわけ?」
「いや……それはその……」
気持ちを伝えたところで意味がない。茉依子は俺のことが好きなわけではない。でなければ、彼氏なんて作ったりしない。
「私はトシのことが好き! 今までの彼氏は全部嘘カレ!」
こいつ今、俺のこと好きって言ったか?
「茉依子、お前……もしかして……」
「そう、トシの気を引くために嘘カレを作ったの」
そうだったのか……。今告白すれば、俺は茉依子と……。
「俺も茉依子が好きだ」
「やっと言ってくれたね。ずっと待ってたんだから。ねえ、私たち付き合ってみない?」
「ああ、よろしく頼むよ」
「やった!」
諦めた夢はあっさり実現した。こんなことなら始めから気持ちを伝えておけばよかったと思う。
ただ、俺には一つ気になることがあった。
「なあ、嘘カレってことは、そいつらと何もなかったんだよな?」
「なに言ってんの? 付き合ってるフリをするわけだから、本当の彼女と同じことするに決まってるじゃない」
「え?」
「ファーストキスは一人目の嘘カレの早瀬くんとしたよ。初体験は二人目の宮田くん。ああ、それとエッチは四人目の笹川くんが一番上手だったかなあ」
マジ……かよ……。
「ごめん、付き合うのやっぱ無理」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
続編を投稿いたしましたので、よろしければ読んでいただけると幸いです。
『好きって言ったじゃない』
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