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その眼はSである

「えぇっと……俺等はC組だから」

 僕と朝山君は、C組になった。階段からも、トイレからも離れすぎず、近すぎずの良い感じの位置だ。そんなことを呑気に考えていたら、どうやらクラスに着いていたみたいだ。

「おい、淀橋。着いたぜ。そっちはD組だぞ」

「あれ、ああ、そっか」

 僕が朝山君に続き教室に入った瞬間、あの蝶の飾りが視界に飛び込んできた。

「あっ」

「……?」

 思わず小さく叫んで指を指してしまうが、彼女は気付いていないようで、怪訝そうな眼差しを向けられた。

 こうして改めてみてみると、先程の儚げ印象とは別に、内側に燃え上がるような強さを感じる。そう、まるで別人だ。

「どうしたんだよ淀橋〜。いきなり大きい声出してさ」

「いや、何でも、ない」

 向こうが気付いてないならワザワサ知らせることもない。その方が、きっと僕と彼女の今後の関係のために良いだろうし。

「うーん、変な淀橋」

「あはは」

 僕は誤魔化すように笑うと、朝山君がじっとこちらを見てきた。

「どうしたの、朝山君」

「や、淀橋はさ」

 朝山君は少しだけ考えて話し出した。きっと言葉を選んでいるのだろう。

「その、中身は社交的で良い奴だけど、見た目が……ネクラっぽいだろ」

「あぁ……うん」

 そういう部類のことを言われるのには慣れていたから、傷つきはしなかった、けど、朝山君がそんな事を言ったのは初めてだったから少し驚いてしまった。

「だから、さ」

 朝山君の手が僕の方へ伸びて来る。ん? 何だろ。良くわからないから、黙ってされるがままになる。

「あっちょっ!」

 次の瞬間、僕の顔からメガネが外されていた。

「やりぃ」

「朝山君……! か、返せよう」

 そして次の瞬間、教室中に笑い声が響き渡った。

「あははははは! メガネ取った淀橋君の顔、ドSな顔付きの癖に、メガネ取られてフツーに挙動不審になってるんだもん! ギャップ有りすぎだよ!」

 あ……れ? 誰一人、怖がってない?

「超ウケるよ! 俺木田。よろしく!」

「あ……うん」

「あー! 木田だけズリィよ! 俺中川」

 こんな感じで、次第に皆が集まってきて、僕はこれから、メガネが外れないように苦労することもない生活が送れそうで、朝山君に何と感謝したらいいのかわからなかった。


 でも、その時僕はすっかり忘れていたんだ。僕を見て教室で固まっていた彼女の存在を。




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