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流されてまいりました。―参

身体が動かない。あれだけ殴られてしまったから、きっともう死ぬのかな。

でもなんだろう。暖かくて心地いい。これなら別に怖くない。

ふと、頭を誰かが撫でる。こんなこと初めてだ。


『ごめんね、ごめんなさいね』


とても遠い記憶で覚えてる、優しい女の人の声がする。


『自分勝手に守ったつもりで、結局あなたに酷い仕打ちを受けさせてしまった。』


悔やむような悲しい声に、何でかよく分からないけど、そんなことない、悲しまないでと思ってしまう。


『けれど、―――ええ。ここなら。この人ならきっと大丈夫。()()()()()使()()()を教えてくれる。』


‥‥力?何言ってるのか‥‥、だんだん、意識が‥‥。


『貴女に(まこと)の力を返します。優しい子、どうか幸せになって。』


だんだんと消えていく、声と私の意識。


『‥‥母は、いつまでも愛しておりますよ。』


私の意識は一度、そこで暗闇に落ちた。




○●○●○●○●




「‥‥か、‥い!大丈‥‥か!!」


さっきと違う、聞いたことの無い大きな声がする。少し、耳が痛いなぁ。

不意に、声の主(と思われる人)に抱き寄せられた。


「しかし、あたし‥‥」

「薬も‥‥無い!」


声の調子で、焦っているのが何となく伝わる。この人は何故焦ってるんだろう?

それに、意識がはっきりしてきたからか。痛みを思い出して来てしまった。


「仙境の‥‥桃。仙、桃。」


その人が、はたと、何かに気づいたみたいだ。

と、次の瞬間。自分の口に、甘い液体が流れて来る。


「とにかく、絞るから飲め!」


そう言われて、とりあえず甘い液体を飲んだ。傷だらけの口じゃあ染みるかな、とためらったが、不思議と痛みが引いていく。まだ、目を開けられないし、意識ももやもやするけど。

だんだんと、自分の中の本能が、それを求めはじめた。


殴られて腫れ上がり開かなかった口が、開くようになった。

それに気づいたその人は、今度は柔らかい果物のようなものを口へねじ込む。不思議に私の中の何かが、待っていたとばかりにそれを喰らう。無我夢中だった。


けれど、何個目かで急に、心臓が苦しくなった。今まで、いろんな暴力を受けてきたけど、こんな苦しみは初めてだった。まるで、自分の中の何かが暴れ回るような、そんな感じの苦しみ。思わず、


「うっ‥‥、うぁ‥‥!」


声に出てしまう。どうしよう、また、意識‥‥が。


「やっちまったあぁぁぁああーーーーーー!!!!!!」


その叫び声を最後に、私は、再び意識が落ちていった。


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